Vinyl Record Reviews
Toolは、1990年にアメリカ・ロサンゼルスで結成されたロックバンドだ。中心メンバーはメイナード・ジェイムズ・キーナン(ボーカル)、アダム・ジョーンズ(ギター)、ダニー・ケアリー(ドラム)で、1995年からはジャスティン・チャンセラーがベースを担当している。初期ベーシストはポール・ダムーアだった。
1993年のデビュー作『Undertow』では、ヘヴィメタル色の強いサウンドで登場した。続く1996年の2作目『Ænima』で、オルタナティブ・メタルの流れの中でも大きな存在感を持つバンドとして注目を集めるようになる。
その後も、2001年の『Lateralus』、2006年の『10,000 Days』、2019年の『Fear Inoculum』とアルバムを発表している。作品数は多くないが、各作で音楽性と表現方法を更新し続けてきた。
Toolの特徴としてまず挙げられるのが、変拍子を多用した楽曲構成だ。たとえば「Schism」では6/8+6.5/8拍子、「The Grudge」では5/4拍子が使われている。リズムの組み立てが複雑で、曲の流れを単純に追わせない作りになっている。
ダニー・ケアリーのポリリズミックなドラミングも重要だ。ドラムが単なるビートの役割にとどまらず、曲全体の構造を支える要素になっている。
『Lateralus』では、表題曲の歌詞の音節数がフィボナッチ数列に対応する構成が採られている。こうした数学的な発想と、哲学的な歌詞の組み合わせがバンドの個性を形作っている。
メイナード・ジェイムズ・キーナンは、内省や自己成長について語ることが多い。歌詞も、混沌とした状況の中で自分を見つめ直す内容が目立つ。感情をそのまま押し出すというより、考え方や姿勢を問うような書き方が印象に残る。
Toolは音だけでなく、アートワークの面でも独自性がある。アレックス・グレイによる神秘主義的・形而上学的なビジュアルがバンドの世界観に深く結びついていて、作品全体の印象を強めている。
音楽、歌詞、アートを別々に扱わず、ひとつのまとまりとして見せている点も特徴だ。
Toolは、70年代プログレッシブ・ロックの知的な構成と、90年代オルタナティブ・ロックの勢いをつなぐ存在として紹介されることが多い。ジャンルとしてはプログレッシブ・メタルの代表格の一つに数えられている。
重さのあるサウンドを土台にしながら、構成の複雑さや視覚表現まで含めて作品を組み立てるバンドとして、長く注目されてきた。寡作ではあるが、アルバムごとに一貫した方向性を保ちながら活動を続けている。