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Upsettersは、ジャマイカのプロデューサー、リー・“スクラッチ”・ペリーが1968年に自分のレーベル「Upsetter」用に組織したスタジオ・バンドだ。固定メンバーで動くグループではなく、時期ごとに編成が入れ替わる形で活動したのが大きな特徴になっている。
初期のUpsettersは、グラディ・アンダーソンとウィンストン・ライトのキーボード、ジャッキー・ジャクソンのベース、ヒュー・マルコムとロイド“ティンレッグ”アダムスのドラムという編成で、グラディーズ・オールスターズとも呼ばれていた。この編成では「Man from MI5」「Return of Django」「Live Injection」などをペリーと録音している。
1969年には、ペリーがヨーロッパ・ツアーに出ることになり、グラディーズ・オールスターズは同行できなかったため、ペリーはヒッピー・ボーイズを起用した。ここではグレン・アダムス、アルヴァ“レジー”ルイス、アストン“ファミリーマン”・バレット、カールトン・バレットが中心になっている。
その後、Upsettersはザ・ウェイラーズと密接に活動し、1971年の関係解消まで制作を続けた。バレット兄弟はその後ボブ・マーリーのバンドに加わっている。1972年以降は固定メンバーを持たない「フローティング・バンド」として、その時々で最良のミュージシャンを起用する形に移っていった。
1973年、ペリーはキングストンの自宅裏庭にスタジオ「ブラック・アーク」を設立した。ここでUpsettersは、レゲエの制作現場として重要な役割を担う。粗い機材を使いながら、テープの過飽和、極端なEQ処理、スプリング・リヴァーブ、独特なマイク配置、即興的な効果音を組み合わせ、スタジオそのものを演奏装置のように扱った。
この時期の中核には、ボリス・ガーディナー(ベース)、マイキー・リチャーズとベンボウ・クリアリー(ドラム)、アール“チャイナ”・スミスとロバート・ジョンソン(ギター)、ウィンストン・ライトとキース・スターリング(キーボード)らがいる。
Upsettersの名前で出ている音源は、レゲエ、ダブ、ルーツ・レゲエを中心にしている。もともとスタジオ・バンドなので、演奏の軸はその時代のセッション・ミュージシャンに支えられている。ベース、ドラム、キーボード、ホーン、ギターの人選が時期によって変わり、同じ名義でも作品ごとに音の輪郭が少しずつ変わる。
参加メンバーには、ヴィン・ゴードン、グレン・アダムス、ジョフリー・チョン、ウィンストン・ライト、アール“チャイナ”・スミス、カールトン・バレット、アストン“ファミリーマン”・バレット、ロイド・アダムス、リチャード“ダーティ・ハリー”・ホール、ボビー・エリスなどが並ぶ。ホーンやリズム隊、キーボードの人材が豊富で、当時のジャマイカ音楽の実演力がそのまま反映されている。
ブラック・アークでは、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ、ジュニア・マーヴィン「Police and Thieves」、マックス・ロメオ「War Ina Babylon」、ザ・コンゴス『Heart of the Congos』などが制作された。Upsettersはその制作現場の演奏を支え、ダブの成立に深く関わったと見られている。
ダブの手法は、断片化した音を再構成するやり方として広がり、後のヒップホップ、テクノ、エレクトロニカ、パンク、インディー・ロックにも影響を与えたとされる。Upsettersという名義は、単なる伴奏バンドではなく、ペリーの制作手法を実際の音に落とし込むための現場として機能していた。
Upsettersは、リー・“スクラッチ”・ペリーの制作思想をそのまま反映した存在だ。作品を追うと、ジャマイカのレゲエがどのようにダブへ広がっていったかが見えてくる。