Vinyl Record Reviews
Vulfpeckは、2011年にアメリカ・ミシガン州アナーバーで結成されたファンク・グループだ。中心メンバーは、ミシガン大学音楽学部で知り合ったJack Stratton、Theo Katzman、Woody Goss、Joe Dartの4人で、現在はCory Wongも重要なメンバーとして知られている。編成は固定というより、ライブではさまざまなゲスト・ミュージシャンを迎える形で活動している。
バンド名のVulfpeckは、Jack Strattonの発想から生まれた。Strattonは、ドイツ人プロデューサーReinhold Mackのインタビューに触れたことをきっかけに、「1960〜70年代のFunk BrothersやWrecking Crewのようなアメリカのスタジオ・ミュージシャン集団を、架空のドイツ人リズム隊が演じたらどうなるか」というイメージでこのプロジェクトを組み立てたという。
実際の始動のきっかけになったのは、「Beastly」の公開だ。もともとは友人の卒業制作のために演奏した楽曲で、2011年4月にYouTubeへ投稿された。これがVulfpeckの最初期のタイトルとして知られている。
Vulfpeckの軸は、FunkとSoulだ。そこにContemporary R&Bの要素も重なっている。Joe Dartのベース、Theo Katzmanのギターやドラム、Woody GossとJack Strattonのキーボードを中心に、リズムの細かい組み立てがはっきりしている。曲の進行は複雑すぎず、演奏の切れ味やグルーヴの持続に耳が向きやすい。
メンバーは全員、ミシガン大学の音楽学部に関係していて、演奏技術の高さがそのままバンドの土台になっている。スタジオ作品でもライブでも、楽器の役割分担が明確で、ファンクの基本形を現代的な形で整理している印象がある。
Vulfpeckの活動で特に知られているのが、2014年3月の『Sleepify』だ。これは全10曲、どれも30秒強の無音だけで構成されたアルバムで、ファンに「寝ている間に再生してほしい」と呼びかけた。Spotifyでは30秒以上の再生が1回のストリーミングとして扱われる仕組みを利用したもので、約550万回の再生を集め、約2万ドルの印税を得たとされている。
その資金をもとに、同年9月には入場無料の「Sleepify Tour」を全米6都市で実施した。Spotify側は当初この試みを評価するようなコメントを出したが、後に規約違反としてアルバムを削除している。
Vulfpeckを聴くときは、まずリズム隊の動きに注目しやすい。ベースとドラムの間合い、キーボードの入り方、ギターのカッティングが細かく噛み合っていて、曲の推進力を作っている。ライブではゲスト・ミュージシャンが加わることもあり、作品ごとに少しずつ見え方が変わるのも面白いところだ。
ファンクやソウルをベースにしながら、演奏の精度と企画のユーモアが同居している。そうした点が、Vulfpeckの活動を追う楽しさにつながっている。