Vinyl Record Reviews
Wapassouは、1972年にフランス・ストラスブールで結成されたプログレッシブ・ロック・バンドだ。中心になっていたのは、キーボードのFreddy Brua、ギター/ベースのKarin Nickerl、ヴァイオリンのJacques Lichtiという編成で、当時のロック・バンドとしてはかなり珍しい組み合わせだった。
70年代フランスのアンダーグラウンド・シーンの中で活動し、1974年に自主制作的なデビュー作を発表している。この初期作は、後年の作品よりもサイケデリック色が強く、Catharsisに通じるタイプの音作りが見られる。
1976年にフランスのレーベルCryptoと契約すると、Wapassouは3作にわたるコンセプト作品の制作に入る。Freddy Bruaが「生・死・永遠」をテーマに構想したトリロジーで、次の3枚から成る。
この時期の作品では、ギター、ヴァイオリン、鍵盤楽器、女性ヴォーカルを軸にした長い組曲が中心になる。打楽器はほとんど使われず、ロック・バンドというより、室内楽に近い編成で構成されているのが特徴だ。
題材も明確で、『Salammbô』はフローベールの小説『サラムボー』、『Ludwig, un roi pour l'éternité』はバイエルン王ルートヴィヒ2世を扱っている。こうした文学や歴史人物を題材にした構成は、当時のプログレらしい作り方でもある。
Wapassouの音楽は、初期のサイケデリックな要素から始まり、その後はクラシック寄りの構成とプログレッシブ・ロックを結びつけた形に移っていく。特にトリロジー期は、長大で複雑な組曲、ヴァイオリンの存在感、女性ヴォーカルの使い方が目立つ。
打楽器をほとんど使わない点も重要だ。多くのロック・バンドがリズム隊を前提に組み立てるのに対して、Wapassouは旋律楽器同士のやり取りで曲を進めていく。ギター、ヴァイオリン、キーボードが並ぶことで、ロックというよりも神秘主義的なクラシカル・ロックの方向に寄っている。
批評面では、Popol Vuh、Univers Zéro、Opus Avantraと並べて語られることがある。どれも一般的なハードロックやギターロックとは少し違う場所にあるバンドで、Wapassouもその系譜に置かれている。
1979年以降のWapassouは、ドラマーとヴォーカリストを加えながら作風を変えていく。ここではポップスやネオプログレ的な要素も入り、70年代中盤の組曲中心のスタイルとは少し違う方向へ進んだ。
14年の活動期間で300回を超えるコンサートを行い、1986年に解散している。活動の長さだけでなく、かなりの数のライブを重ねていたことがわかる。
Wapassouの作品は、後にMusea Recordsによって順次CD化されている。70年代フランスのプログレや、ヴァイオリン入りの編成に興味がある人には、まずトリロジー期の3作から追うと流れが見えやすい。
初期のサイケデリックな1枚目と、コンセプト色の強い中期3作、そして80年代のポップ/ネオプログレ寄りの変化まで見ていくと、Wapassouが単なる「珍しい編成のバンド」ではなく、時期ごとに明確に方向を変えながら活動していたことがわかる。