Alfa Mist - Antiphon (2017)
Alfa Mist 2017

Alfa Mist - Antiphon (2017)

Hip Hop Jazz Funk / Soul Contemporary Jazz

Alfa Mist『Antiphon』について

Alfa Mistの『Antiphon』は、2017年にUKでリリースされた作品。ロンドン出身のミュージシャン/プロデューサー/コンポーザーであるAlfa Mistが、自身の音楽性を広く示した初期の重要作として扱われることが多い一枚だ。Hip Hop、Jazz、Funk / Soulの要素をまたぎながら、Contemporary Jazzの現在形として聴かれている作品でもある。ピアノを軸にしたアンサンブルの中で、ビート感と即興性が無理なく同居している点が、このアルバムの核になっている。

発表元はEast LondonのPink Bird Recording Co.。録音とミックスの現場に近い空気を持つレーベルから出たこともあり、音の輪郭は比較的くっきりしている印象が残る。テクスチャード・スリーブ仕様で、白い内袋が付き、Pink Birdのステッカーとアートワークを使ったターンテーブルマットが同梱された初回盤は、作品の物としての存在感も強い。

作品の位置づけ

Alfa MistはNewham, London生まれのアーティストで、Are We Liveの一員としても知られる。『Antiphon』は、そうした活動の延長線上で、ジャズを基盤にしながらヒップホップ以降の感覚を自然に持ち込む姿勢を示した作品として見ておきたい。2010年代後半のUKジャズ・シーンには、ロバート・グラスパー以降のクロスオーバー感覚や、ロンドン周辺の若いプレイヤーたちによるバンド志向の流れがあったが、その中でもAlfa Mistは、作曲家としての設計とラップ/ビート感覚の接点を、かなり個人的な形でまとめている。

この作品は、のちの活動につながる出発点としても重要だろう。ピアノ曲としての密度、バンドで鳴らしたときの推進力、そして一曲ごとの展開の作り方に、後年の作品へ通じる輪郭が見える。派手な技巧を前面に出すというより、フレーズの置き方と空間の使い方で聴かせるタイプのアルバムという印象。

聴きどころ

『Antiphon』全体を通してまず目立つのは、ピアノの扱い方だ。単にメロディを弾くのではなく、短いモチーフを反復しながら、ドラムとベースの上で少しずつ意味を変えていく。リズムはジャズのスウィングに寄り切らず、ヒップホップ的な区切りの感覚が前に出る場面もある。そのため、流れとしては滑らかでも、各パートの役割はかなり明確に聴こえる。

また、ファンク/ソウル由来のグルーヴが下支えしているので、抽象的になりすぎないのもポイントだ。コード進行や展開の組み方は現代ジャズらしいが、耳に残るのは拍の置き方、低音の押し出し、そして全体の温度感。アルバムという形式の中で、曲ごとの性格をきちんと分けながら、統一感も保っている。

注目曲「Keep On」

このアルバムで代表曲として挙げられやすいのが「Keep On」だろう。Alfa Mistのピアノの持つ反復性と、バンド全体の前進する感じが、比較的わかりやすくまとまっている。ビートの芯がはっきりしていて、ジャズ寄りの演奏でありながら、聴感としてはかなり推進力がある。メロディも過度に飾らず、フレーズの積み重ねで曲を引っ張る構成。

この曲では、ソロの見せ場よりも、アンサンブルのまとまりが印象に残る。ピアノが前に出る瞬間と、リズム隊に預ける瞬間の切り替えが自然で、アルバム全体の方向性を示す役割も果たしている。『Antiphon』を初めて聴くなら、まずこの曲で作品の輪郭がつかみやすいはずだ。

注目曲「7th October」

「7th October」は、同作の中でも少し内省的な空気を持つ曲として聴こえる。派手な展開で押すのではなく、和音の置き方と間の取り方で、静かな緊張感を保っている。Alfa Mistの作品に共通する、感情を大きく誇張しない書き方がよく出ている曲でもある。

この曲を聴くと、彼がジャズの文法を借りながら、曲そのものの流れをかなり丁寧に組み立てていることが伝わる。演奏の密度は高いのに、音数で埋め尽くす感じはない。余白が残ることで、アルバムの中での位置もはっきりしている。

注目曲「Breathe」

「Breathe」は、タイトルどおり呼吸のような間合いが印象に残る一曲。リズムの動きはあるが、前のめりになりすぎず、音の重なりをじっくり聴かせる方向に振れている。ジャズ、ソウル、ヒップホップの要素が、ここでは特に自然に混ざっているように感じられる。

この曲のよさは、アルバムの中でアクセントになっていること。テンポ感や構成に少し変化をつけることで、全体の流れに単調さを持ち込まない。『Antiphon』が一枚のまとまりとして機能している理由のひとつが、この手の曲にある。

盤としての情報

2017年のオリジナル盤は、Pink Bird Recording Co.からのUK盤。初回プレスは250枚に限定され、その後も複数回にわたって再プレスされている。盤の仕様としては、初回盤にテクスチャード・スリーブ、白い内袋、ステッカー、ターンテーブルマットが付属する点が特徴的だ。作品そのものだけでなく、レーベルがパッケージにも気を配っていたことがわかる内容。

再プレスが重ねられていることからも、『Antiphon』がAlfa Mistの初期作の中で長く参照されてきたことがうかがえる。2017年の時点で、すでに彼の作曲と演奏の方向性が明確に出ていた一枚として、今あらためて見ても位置づけがはっきりした作品だと言えそうだ。

トラックリスト

  1. A1 Keep On 10:46
  2. A2 Potential 5:08
  3. B1 Errors 10:00
  4. B2 Breathe 7:26
  5. C1 7th October 4:08
  6. C2 Kyoki 6:05
  7. D1 Nucleus 6:41
  8. D2 Brian 2:34

動画

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