Chakachas - New Sound (1971)
Chakachas 1971

Chakachas - New Sound (1971)

Funk / Soul Latin Salsa Bossanova Cubano Cha-Cha

Chakachas『New Sound』(1971)について

Chakachasは、ベルギーを拠点に活動したラテン・ソウル系のグループで、キューバ系の打楽器感覚とヨーロッパのスタジオ・ミュージシャンらしい機動力が同居した存在として知られている。本作『New Sound』は、その名の通り、初期のチャチャチャ・バンド的な色合いから一歩進み、ラテン、ソウル、ファンク、ジャズ、アフロの要素を横断する方向へまとまったアルバム。オリジナルは1971年のベルギー盤で、タイトル通りの新機軸を打ち出した時期の作品である。

Chakachasの歴史をたどると、1958年に結成され、当初はチャチャチャ・バンドとしてスタートしている。初期にはスペイン語曲「Eso Es El Amor」でベルギーのチャート1位を記録し、ラテン系のダンス音楽を軸に人気を得た。その後、時代の流れに合わせてイェイェやツイストの要素も取り込み、編成や作風を変化させていく。本作の時点では、固定バンドというより、セッション色の強いメンバー編成で、当時のヨーロッパのクラブ・ミュージックやブラック・ミュージックに接続する作りになっている。

アルバムの位置づけ

この『New Sound』は、Chakachasにとって転機の一枚として見やすい。グループ最大の代表曲として語られる「Jungle Fever」は、もともとこの時代の流れの中から生まれた楽曲で、後年の国際流通では曲名を前面に出した再発が多くなった。本来のベルギー盤では『New Sound』というタイトルでまとまっているのに対し、海外盤や再発盤では「Jungle Fever」の知名度を使った別タイトルで出回ることが多い。アルバム単位で見ると、ヒット曲だけの単発作ではなく、グループの音楽性がファンク寄りに更新された時期の記録として読むほうが自然だ。

収録曲の核になる「Jungle Fever」は、Bill Ador名義のRoland Klugerが手掛けたことで知られる。ストップ&ゴーのファンク・リフに、女性の吐息や喘ぎ声が重なる構成で、BBCでは放送禁止になった一方、その話題性が先行してUKチャートでも存在感を示した。アメリカではさらに反応が大きく、Billboard Hot 100で8位、R&Bチャートで11位を記録し、ゴールドディスクも獲得している。ヨーロッパ発のラテン・ファンクが、英米市場でここまで広がった例としても興味深い。

音の印象

実際に聴くと、まず耳に入るのは打楽器の細かな動きと、リズム隊の粘り。ラテン系のパーカッションが前に出ながらも、単なる陽気なラテン・ポップではなく、ソウルやファンクの反復感がしっかりある。ホーンやギターの差し込み方も、踊れるビートを保ったまま、ジャズ・ファンク寄りの緊張感を作っている。ボーカル曲では艶っぽさがあり、インストゥルメンタルではリズムの切り替えが目立つ。派手に展開するというより、同じグルーヴを少しずつ変えながら進めるタイプの手つきで、スタジオ・バンドとしてのまとまりが感じられる。

特に「Jungle Fever」で知られる性的なニュアンスは、アルバム全体でも単なる装飾では終わっていない。歌と演奏のあいだにある緊張感が、そのまま当時のファンク文脈に接続している。60年代のラテン・バンド的な明快さより、70年代前半らしい湿度と反復が前に出ている点が、この作品の輪郭を作っている。

同時代の文脈

『New Sound』が出た1971年は、ラテン音楽、ソウル、ファンクが互いに交差しやすくなっていた時期でもある。アメリカではラテン・ロックやファンクの接合が進み、ヨーロッパでもクラブ向けの録音が増えていく。その中でChakachasは、キューバ由来のリズム感を持ちながら、ベルギー制作のスタジオ・サウンドとしてまとめた点に特徴がある。Santanaのようなロック側からのラテン接近とは違い、こちらはダンス・バンドとソウル・プロダクションの中間にいる感触が強い。

また、本作は後年のラテン・ファンク再評価でも参照されやすい。派手な名盤扱いというより、「Jungle Fever」を入口に掘られ、その先にあるアルバム全体の作りが注目されるタイプの一枚である。収録曲の多くは、楽曲単位での完成度より、アルバムとしての連続感に重心がある。そこが、シングルの大ヒットだけでは説明しきれない部分でもある。

1971年ベルギー盤としての意味

このレコードのオリジナル盤は1971年のベルギー・リリースで、後年の再発盤とはタイトルの扱いが異なる。オリジナルでは『New Sound』だが、再発では「Jungle Fever」を冠した流通が多く、そこにはヒット曲を前面に出した販売戦略が見える。盤面表記は「Made in Germany」で、Polydorのヨーロッパ圏流通の一端も感じさせる。Chakachasの音楽が、ベルギー発でありながら国境を越えて消費されたことを示す資料でもある。

『New Sound』は、Chakachasの変化の途中を切り取った作品であり、ラテン・ソウルからファンクへ向かう70年代初頭の空気をよく映している。代表曲「Jungle Fever」の強い印象に引っぱられがちだが、アルバム全体を通すと、打楽器、ホーン、ベース、コーラスの配置にこのグループらしい手堅さがある。ベルギーのスタジオ・バンドが、キューバ系のリズム感と国際市場向けのファンクをつないだ、その接点の記録として見ておきたい一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Chica Chica Bau Bau
  2. A2 Un Rayo Del Sol
  3. A3 Cha Ka Cha
  4. A4 Latin Can Can
  5. A5 Yo Soy Cubano
  6. A6 Eso Es El Amor
  7. B1 Harlem Nocturne
  8. B2 Ay Mulata
  9. B3 El Canyon Rojo
  10. B4 El Rico Son
  11. B5 Jungle Fever

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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