Jannacci - Quelli Che... (1975)
Enzo Jannacci 1975

Jannacci - Quelli Che... (1975)

Pop Folk, World, & Country Latin Chanson

Jannacci『Quelli Che...』(1975) 作品紹介

エンツォ・ヤンナッチは、イタリアのシンガーソングライターであり、俳優、そして医師でもあった人物で、ミラノを拠点に独自の歌世界を築いたアーティストだ。1975年作の『Quelli Che...』は、そのヤンナッチの作品の中でも特によく知られた一枚で、同名の代表曲を軸に、語りと歌、風刺とユーモアが行き来するアルバムとして位置づけられている。発売はイタリアのインディーズ・レーベル、Ultima Spiaggiaから。1974年に設立され、1975年からRCA Italianaの流通で動き始めた新しいレーベルの初期カタログにあたる。

ミラノの空気をそのまま切り取ったような一枚

本作は1975年1月にミラノのRegsonスタジオで録音され、Tullio De PiscopoやBruno De Filippiが参加したことが確認できる。ヤンナッチの作品らしく、音楽としてはきっちりまとまっている一方で、歌詞や語りには日常の断片、街の会話、社会の癖のようなものがそのまま入ってくる。アルバム全体の印象としては、いわゆる歌謡曲の流れにありながら、カンツォーネの語り口、フォーク的な親密さ、芝居のような間合いが混ざった作りになっている。

レコードの注記にもある通り、A1、A5、B2、B3、B6、B8は短いスケッチとしての話し言葉中心のトラックになっている。つまり、単純にメロディを聴かせる作品というより、断片的な場面や口調そのものを味わう構成だ。曲間の温度差もはっきりしていて、歌の部分と語りの部分が交互に出てくることで、アルバム全体に独特のリズムが生まれている。

表題曲『Quelli che...』の存在感

このアルバムで最も広く知られているのが表題曲『Quelli che...』だ。Beppe Violaとの共作で、何度も手を入れて完成した曲として知られている。社会の中にいる“ああいう人たち”“こういう人たち”を、箇条書きのように次々と挙げていく構成で、軽い口調の裏に観察の鋭さがある。Treccaniでは、この曲を医療現場の無責任さと、そのしわ寄せを受ける庶民の現実を風刺するものとしても位置づけている。

この曲はのちにLina Wertmüllerの映画『Pasqualino Settebellezze』の冒頭でも使われ、アルバム外でも認知を広げた。ヤンナッチの代表曲として名前が挙がることの多い楽曲で、彼の作風を端的に示す一曲でもある。大きなサビで押し切るタイプではなく、話すように進むフレーズの積み重ねで印象を残すあたりが、この人らしいところだ。

同時代の中での位置づけ

1970年代半ばのイタリアでは、ラジオの自由化やメディア環境の変化もあり、ヤンナッチのような語り中心の歌が時代の空気に合っていたという見方がある。商業的な大ヒットを前提にしたポップスとは少し距離があり、むしろミラノの街の観察者、風刺詩人のような受け止められ方をしていたようだ。ジャンル表記としてはLatin、Pop、Folk、World & Country、スタイルとしてChansonが付いているが、実際の内容もその境界をまたぐような作りになっている。

同時代のイタリア音楽を広く見れば、社会性の強いシンガーソングライターや、演劇性を持つカンツォーネの流れと重なる部分がある。ヤンナッチの作品はその中でも、話し言葉の使い方と間の取り方がかなり特徴的で、歌うというより語る、しかし単なる語りでもない、という独自の立ち位置にある。

盤としての特徴

この1975年イタリア盤はUltima SpiaggiaのZLUS 55180。レーベル自体がまだ新しく、独立系らしい動きの中で出た一枚という点も面白い。なお、現物には青いSIAEスタンプの個体と、マゼンタのSIAEスタンプの個体があるとされ、プレス差の細かな違いも確認できる。こうした点は、当時のイタリア盤らしいローカルなディテールとして残っている。

『Quelli Che...』は、ヤンナッチの歌世界を知るうえで外せない作品として扱われてきた。表題曲の知名度だけでなく、短いスケッチを交えたアルバム構成、ミラノ的な視点、社会への目線がまとまっている点が大きい。派手な装飾よりも、言葉の運びと場面の切り取りで聴かせる一枚であり、1970年代イタリアのカンツォーネの中でも、かなり個性の強い記録になっている。

トラックリスト

  1. A1 La Televisiun
  2. A2 Quelli Che...
  3. A3 El Me Indiriss
  4. A4 Il Monumento
  5. A5 Borsa Valori
  6. A6 L'Arcobaleno
  7. B1 Vincenzina E La Fabbrica
  8. B2 Dottore...
  9. B3 Viva La Galera
  10. B4 Il Bonzo (Ora Importa Anche A Me La Mia Libertà)
  11. B5 9 Di Sera (A Televisão)
  12. B6 Il Karate
  13. B7 El Marognero
  14. B8 Il Kenia

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る
toast