Luke Vibert - '95 - '99 (2000)
Luke Vibert 2000

Luke Vibert - '95 - '99 (2000)

Electronic IDM Breakbeat Acid

Luke Vibert『'95 - '99』レビュー

Luke Vibertは、1973年生まれの英国コーンウォール出身の電子音楽プロデューサー。Wagon Christ名義やPlug名義でも知られ、90年代のブレイクビーツ、IDM、アシッド・テクノのあいだを行き来しながら作品を積み重ねてきた人物だ。この『'95 - '99』は、そのタイトルが示す通り、1995年から1999年までの活動をまとめた2000年作で、Luke Vibertの初期の仕事ぶりを一望できる内容になっている。Planet MuからのZIQ016番で、同レーベルが独立運営へ移行したあとの比較的早い時期のリリースでもある。

この時期のLuke Vibertは、単に「曲を作る人」というより、既存のビートの組み方や音色の扱いを少しずつずらしながら、電子音楽の再編集を続けていた印象が強い。『'95 - '99』は、その流れをコンパイル的に追える一枚で、単発のヒット曲を前面に押し出すというより、断片的な発想の積み重ねで全体像を見せるタイプの作品だ。作品の性格としては、アルバムというよりアーカイブに近いが、並べて聴くとLuke Vibertらしい手つきがかなりはっきり見えてくる。

90年代後半のLuke Vibertをまとめた位置づけ

90年代後半の英国電子音楽は、Warp周辺のIDM、ジャングル以後のブレイクビーツ、アシッド・ハウスの再解釈が同時進行していた時期だった。その中でLuke Vibertは、硬質な理論性だけに寄ることも、ダンスフロア向けの単純な機能性に寄ることもなく、細かいリズムの崩し方や、古い機材を思わせる音色の残し方で独自の存在感を出していた。AutechreやBoards of Canadaのような同時代の名前と並べて語られることはあっても、Luke Vibertの曲はもう少し遊びが多く、ユーモアや引用感が前に出る場面もある。

『'95 - '99』は、その時期のまとまりを確認するための作品として見やすい。後年のディスコグラフィーに入っていくと、Wagon Christ名義のコラージュ感や、Plug名義のドラムンベース寄りの鋭さなど、別の側面も見えてくるが、このコンピレーションでは、90年代後半の制作の核にあるブレイクビーツ処理とアシッドの扱いが中心になる。Luke Vibertの入口として、あるいは初期カタログの整理として、位置づけはかなり明快だ。

ブレイクビーツの組み替えと音の手触り

この作品でまず目立つのは、ビートの組み方だ。いわゆる一直線の4つ打ちではなく、細かいスネアやキックの配置をずらしながら、ループの中に微妙な揺れを作る。リズムが前に出る場面でも、派手に押し切るというより、断片を少しずつ噛み合わせていく感触が強い。聴き進めると、曲ごとのテンポ感やノリは違っても、どこかで「サンプルをどう切って、どこに置くか」という発想が共通しているのがわかる。

音色も、この時期のLuke Vibertらしさが出ている部分だ。アシッド系のうねるシンセ、ややざらついたドラム、デジタルでありながら古い機材感を残す質感が、曲の輪郭を作っている。きれいに磨き上げるより、少し粗さを残したまま進める作りで、そこに90年代の電子音楽らしい実験性がある。聴感上は派手な展開よりも、音の置き方の変化で引っ張るタイプの曲が多い。

アシッドの要素とIDM的な視点

タイトルにもある通り、この作品ではアシッドの要素も重要だ。TB-303系を思わせるうねりや、音程が滑るようなフレーズが、ブレイクビーツの上に重なっていく場面がある。ただし、90年代初頭のレイヴ文脈をそのままなぞる感じではなく、もっと分解された形で入ってくる。アシッドの快楽をそのまま伸ばすのではなく、構造の一部として組み込み、全体の質感を少し不安定にする役割を担っているように聞こえる。

IDM的な視点もここでははっきりしている。メロディを前面に置くより、リズムの断片や音の配置そのものを聴かせる作りで、曲が進むごとに細部の情報量が増えていく。とはいえ、理屈っぽさだけに寄らず、身体で追えるビートが残っているのがLuke Vibertの特徴だ。このバランスがあるからこそ、同時代の実験的な電子音楽の中でも、机上の作業に閉じない手触りが残る。

代表的な聴きどころとしてのまとめ方

収録曲ごとの細かな情報を追うというより、この作品は流れの中でLuke Vibertの初期像を確認するのが自然だ。曲単位で耳に残る瞬間はあっても、アルバム全体としては「この時期に何をやっていたか」を示す編集の力が大きい。ブレイクビーツの切り貼り、アシッドのうねり、IDM的な構成感が、ひとつの時代の中でどのように共存していたかが見えやすい。

2000年時点でこのまとめ方が取られていること自体、Luke Vibertがすでに複数の名義や方向性を持つ作り手として認識されていたことを示しているようにも思える。Planet Muという、当時の英国電子音楽の先端を支えたレーベルから出ている点も含めて、90年代後半のUKエレクトロニックの空気を確認する一枚として整理しやすい。派手な代表曲を一発で押し出すタイプではないが、初期の仕事の流れを追うには筋の通った作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Flyover 6:52
  2. A2 Pricktat 3:21
  3. B1 Funkyacidstuff 5:00
  4. B2 Analord 4:49

動画

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