Paco De Lucía = パコ・デ・ルシア - Interpreta A Manuel De Falla = 炎 (1978)
Paco De Lucía『Interpreta A Manuel De Falla = 炎』について
パコ・デ・ルシアが1978年に発表した『Interpreta A Manuel De Falla』は、スペイン近代音楽の作曲家マヌエル・デ・ファリャの作品を、フラメンコ・ギターで読み替えたアルバムである。パコ・デ・ルシアはフラメンコの伝統に根ざしながら、ジャズや室内楽の感覚も取り込みつつ活動を広げたギタリストで、この作品はそうした歩みの中でも、かなり企画性の強い1枚として位置づけられている。日本盤は1979年リリースで、邦題は『炎』。ジャケットや帯付きの国内盤として流通した記録が残っている。
このアルバムの核にあるのは、ファリャの楽曲をそのまま再演するのではなく、フラメンコ・ギターの語法に置き換えていく作業である。収録曲は『三角帽子』、『恋は魔術師』、『七つのスペイン民謡』、『はかなき人生』から選ばれており、いずれもスペイン音楽の中では広く知られた作品群だ。A1、A5、B5が『三角帽子』、A2、A3、B2〜B4が『恋は魔術師』、A4が『七つのスペイン民謡』、B1が『はかなき人生』由来となっている。クラシックの原曲を素材にしながら、演奏の芯はあくまでパコ自身のギターにある構成。
1978年のパコ・デ・ルシアの位置
1978年といえば、パコはすでに『アルモライマ』で新しい局面を見せていた時期でもある。フラメンコの語法を保ちながら、編成や作曲の面で視野を広げていた頃で、このファリャ集はその延長線上にある。しかも本作は、単なる「クラシック名曲のギター編曲集」ではなく、スペインの国民的作曲家の素材をフラメンコの身体感覚に寄せていく点に特徴がある。パコのキャリアの中でも、伝統と現代的な解釈がぶつかり合う作品として見られている。
当時の反応も話題性のあるものだった。1978年の『EL PAÍS』でも重要盤として取り上げられ、パコがギター・フラメンカの表現領域を押し広げた作品として論じられている。一方で、クラシック側からは反発もあり、アンドレス・セゴビアが厳しい見方を示したことも後年の回顧で触れられている。評価が一枚岩ではないあたりに、この作品の立ち位置がはっきり出ている。
演奏の聴こえ方
実際に聴くと、原曲の旋律をなぞるだけではなく、フラメンコ特有のリズムの置き方や、音の切り方、間の取り方が前面に出ている。クラシックの楽曲を素材にしていても、演奏の手触りはかなりギター中心で、音価の長さや装飾の付け方にパコらしさが出る。派手な技巧の見せ場だけで押すのではなく、フレーズを少しずつ組み替えながら曲の輪郭を保っていく作り。原曲を知っていると、どこを残し、どこを変えているかが追いやすい。
特に『三角帽子』や『恋は魔術師』のような、もともとスペイン色の濃い作品との相性は強い。ファリャの旋律や和声が、パコのギターを通ることでより直接的な身体性を持つ。逆に、そうした素材だからこそ、フラメンコの側へ寄せても曲の輪郭が崩れにくい。原曲の知名度と演奏の個性、その両方が前に出るアルバム。
日本盤としての『炎』
今回の日本盤は1979年リリースで、オリジナルの1978年盤から少し遅れて出たものになる。Philipsレーベルの国内盤として流通し、帯付きで紹介された記録がある。日本ではパコ・デ・ルシアの代表作のひとつとして受け止められたはずで、フラメンコを軸にしながらもクラシック寄りの題材を扱うため、入口としても特徴的な存在になっている。タイトルの『炎』は、原題の内容をそのまま訳したものではなく、日本盤ならではの印象を持つ表記。
パコ・デ・ルシアは、後年にアル・ディ・メオラやジョン・マクラフリンとの共演でさらに広い層に知られるが、この時点でもすでに「フラメンコ・ギターの枠を広げる人」としての輪郭はかなり明確だった。本作はその流れの中で、スペイン音楽の古典を自分の楽器で再構成した記録として残る1枚である。
トラックリスト
- A1 Danza De Los Vecinos = 隣人たちの踊り 3:09
- A2 Danza Ritual Del Fuego = 火祭りの踊り 4:22
- A3 Introducción Y Pantomima = 序奏とパントマイム 2:59
- A4 El Paño Moruno = ムーア人の織物 1:27
- A5 Danza Del Molinero = 粉屋の踊り 3:04
- B1 Danza = スペイン舞曲 3:23
- B2 Escena = 情景 1:25
- B3 Canción Del Fuego Fátuo = きつね火の歌 4:04
- B4 Danza Del Terror = 恐怖の踊り 1:48
- B5 Danza De La Molinera = 粉屋の女房の踊り 4:01
動画プレイリスト
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Danza de los Vecinos (El Sombrero de Tres Picos)
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Danza Ritual del Fuego (de "El Amor Brujo")
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Introducción y Pantomima (de 'El Amor Brujo')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) El Paño Moruno (de 'Siete Canciones Populares')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Danza del Molinero (de El Sombrero de Tres Picos)
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Danza (de 'La Vida Breve')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Escena (de 'El Amor Brujo')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Canción del Fuego Fatuo (de 'El Amor Brujo')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla (1978) Danza del Terror (de 'El Amor Brujo')
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Paco de Lucía interpreta a Manuel De Falla(1978) Danza de la Molinera (de El Sombrero de Tres Picos)