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アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)は、1927年1月25日にブラジル・リオデジャネイロで生まれた作曲家、編曲家、歌手、ピアニスト、ギタリストだ。通称はトム・ジョビンで、20世紀のブラジル音楽を語るときに外せない人物として知られている。
ジャンルはジャズとラテンにまたがり、スタイルとしてはボサノヴァ、ラテン・ジャズ、サンバが挙げられる。ボサノヴァの成立に深く関わった中心人物として扱われることが多い。
ジョビンは、ジョアン・ジルベルトのギターとヴォーカルに強く影響を受けたとされる。そこから、従来のサンバ・カンサォンとは違う、ジャズにも通じる落ち着いた感触の音作りへ向かった。この流れが、ボサノヴァ誕生の大きなきっかけになった。
ボサノヴァは、リズムの置き方や和声の使い方に特徴があり、ジョビンの作品ではそうした要素がはっきり表れている。サンバの土台を持ちながら、ジャズのコード感や演奏の間合いを取り入れている点が、彼の音楽の重要な部分だ。
ジョビンの代表曲としてまず挙がるのが「イパネマの娘(Garota de Ipanema)」だ。これは1962年、詩人ヴィニシウス・ヂ・モライスとの共作として書かれた。リオの海岸近くのバーで見かけた少女に着想を得たというエピソードが知られている。
この曲は1964年に、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのアルバム『Getz/Gilberto』にアストラッド・ジルベルトの歌唱で収録され、世界的なヒットになった。1965年にはグラミー賞レコード・オブ・ザ・イヤーを受賞し、全世界で500万枚以上を売り上げたとされる。この成功を通じて、ボサノヴァはジャズのサブジャンルとして広く知られるようになった。
そのほかにも、「Wave」や「Felicidade」など、多くの楽曲がスタンダードとして扱われている。これらの曲は、歌ものとしてもインストゥルメンタルとしても演奏される機会が多い。
ジョビンは1960年代前半にアメリカへ渡り、活動の場を広げた。ブラジル国内だけでなく、海外の歌手や演奏家にも楽曲が取り上げられ、作品は国境を越えて広がっていった。
1991年にはソングライターズ・ホール・オブ・フェイムに殿堂入りしている。1994年12月8日にはニューヨークで亡くなった。享年67だった。
ジョビンは、ボサノヴァをブラジル国内の流行にとどめず、国際的な音楽の中に位置づけた人物として見られている。彼の曲は、ブラジルの歌手や演奏家だけでなく、世界中のジャズ・ミュージシャンやポップス歌手にも演奏されてきた。
20世紀のポピュラー音楽史を振り返るとき、ジョビンの作品は、ブラジル音楽とジャズの接点を具体的な楽曲として示した例として扱われることが多い。ボサノヴァを知る入口としても、今なお最初に名前が挙がる作曲家の一人だ。