Vinyl Record Reviews
Booker T & The MG'sは、1962年にテネシー州メンフィスで結成されたアメリカのインストゥルメンタル・リズム&ブルース/ソウル・コンボだ。Staxレコードの専属バックバンドとして知られ、レーベルの多くの録音で演奏とプロデュースを担った。
バンド名は、オルガン奏者Booker T. Jonesの名前と、「Memphis Group」の頭文字MGを組み合わせたものとされる。中心メンバーはBooker T. Jones、Steve Cropper、Donald “Duck” Dunn、Al Jackson Jr.で、初期ベーシストにはLewis Steinbergがいた。その後、1963年にDunnが加わっている。
このバンドの特徴としてよく挙げられるのが、黒人と白人が混在する編成だったことだ。キーボードのBooker T. JonesとドラムのAl Jackson Jr.が黒人、ギターのSteve CropperとベースのLewis Steinberg、のちのDonald “Duck” Dunnが白人という構成で、公民権運動期のメンフィスで活動していた。
Staxの共同経営者Al Bellは、街に人種隔離の施設が残る中で、白人の共同経営者と同じ電話を共有し、対等な人間として扱われること自体が当時は珍しかったと証言している。バンドは、そうした環境の中でレーベルの音を支える役割を果たしていた。
Booker T & The MG'sの音は、オルガンを軸にしたリズム&ブルース、ソウル、ファンク寄りの演奏でまとまっている。派手な歌唱を前面に出すタイプではなく、リフ、間、リズムの組み立てで曲を進めるスタイルだ。
Staxのバックバンドとして、Otis Redding、Wilson Pickett、Sam & Daveなどの録音にも参加している。演奏の土台を作るだけでなく、レーベル全体の音像にも深く関わっていた。
代表曲として最もよく知られているのが「Green Onions」だ。1962年夏、Stax創設者Jim Stewartが歌手Billy Lee Rileyのデモ録音を予定していたが、本人が来なかったため、待機していたバンドがジャムのように演奏を始めたことがきっかけで生まれたとされる。
Booker T. Jonesが考えていたオルガンのリフをもとに、15分ほどでほぼ即興の形でまとまり、1962年6月に録音、同年7月にリリースされた。シンプルな構成で、オルガンのフレーズとリズム隊の動きが前に出る曲だ。
「Green Onions」は1999年にグラミー殿堂入りし、2011年には米議会図書館のナショナル・レコーディング・レジストリーにも選ばれている。
バンドは自身の名義でも成功を収め、「Hip Hug-Her」などのヒットを出している。一方で、Staxの中核を支えるセッション・バンドとしての仕事量も多く、表舞台と裏方の両方で存在感を持っていた。
1970年代初頭には、CropperとJonesがレーベルを離れたことで実質的に活動が止まった。1975年に再結成が計画されたが、同年10月にAl Jackson Jr.が自宅で射殺され、再結成は実現しなかった。その後、残るメンバーは1980年代後半以降に何度か再集結しており、Steve Pottsがドラムを務めることもあった。
Booker T & The MG'sの演奏は、後のロックやソウルの現場でも参照され続けた。1978年にはSteve CropperとDonald “Duck” Dunnが映画『ブルース・ブラザーズ』のバックバンドに参加し、映画とデビュー・アルバムの演奏を担当している。
その後も、ボブ・ディランの30周年記念コンサートやニール・ヤングのツアーでハウスバンドを務めるなど、ライブ現場での役割を続けた。バンド自体は1992年にロックの殿堂入りし、2007年にはグラミー生涯功労賞を受けている。
Booker T & The MG'sは、Staxの音を支えたバンドであり、自分たちの名義でもヒットを残したグループだ。メンフィスの現場で生まれた演奏が、そのままソウルやR&Bの重要な土台になっていった、そんな存在として整理できる。