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Captain Beefheartは、本名をドン・ヴァン・ヴリートというアメリカのミュージシャンだ。1941年1月15日にカリフォルニア州グレンデールで生まれ、2010年12月17日にカリフォルニア州アークタで亡くなっている。ボーカル、ハープ、サックス、フルートを担当し、ソングライター、リリシストとしても活動した。音楽名義では「Captain Beefheart And His Magic Band」を率いる形がよく知られている。
若い頃からフランク・ザッパと交流があり、その関係はキャプテン・ビーフハートの活動にもつながっていく。1960年代から70年代にかけて、マジック・バンドを中心に作品を発表し、通算で十数枚のオフィシャル・アルバムを残した。ライブ盤もいくつか出ている。
1982年には音楽活動から退き、妻とともに静かな生活に入り、その後は絵画制作に専念した。以後は画家としても活動し、ニューヨークやイギリス、ヨーロッパのギャラリーで作品を発表している。
キャプテン・ビーフハートの大きな特徴は、楽譜が読めなかったことにある。メンバーには言葉やイメージで演奏内容を伝え、口頭で指示しながら曲を組み立てていた。一般的なバンドの譜面中心の作り方とはかなり違う方法だ。
音楽性はロック、ジャズ、ブルースを土台にしつつ、サイケデリック・ロック、ブルース・ロック、アート・ロック、ジャズロック、アヴァンギャルド、実験音楽の要素が重なっている。曲によってはブルースの型が見えたり、フリー・ジャズのような崩れ方をしたりする。演奏のまとまりよりも、音のぶつかり方や変則的なリズムの組み方が前に出る場面が多い。
1969年にフランク・ザッパのプロデュースで出た2枚組『Trout Mask Replica』は、キャプテン・ビーフハートを語るうえで外せない作品だ。デルタ・ブルース、フリー・ジャズ、実験的ロックが同じ曲の中でぶつかるような構造で、各楽器がそれぞれ別の動きをしながら進んでいく。ベースラインだけが比較的はっきりした軸を保つ曲も多い。
このアルバムのために、バンドはロサンゼルスの小さな家で共同生活を送りながら、1日14時間にも及ぶリハーサルを8か月続けたという話が残っている。発売当時は大きなヒットにはならなかったが、その後はパンクやニューウェーブに近い感覚の先行例として見られることが増えた。ローリングストーン誌の歴代アルバム企画に選ばれ、アメリカ議会図書館のナショナル・レコーディング・レジストリーにも登録されている。
キャプテン・ビーフハートの音楽は、聴きやすさよりも構造の独自性で注目されてきた。ブルースを出発点にしながら、演奏のズレや断片化したフレーズを前面に出した作りは、後のパンク、ニューウェーブ、実験ロックの周辺で参照されている。特に『Trout Mask Replica』は、ロックの枠を広げた作品として扱われることが多い。
音楽と並行して絵画にも取り組み、引退後は画家として活動した。自然保護への関心も強く、野生動物への愛着を生涯持ち続けたとされる。ミュージシャンとしてだけでなく、表現者として幅広く活動した人物だ。
キャプテン・ビーフハートの作品を追うと、ロック、ブルース、ジャズの境目を意識的に崩していく作り方が見えてくる。演奏のまとまりを優先しない音作りや、言葉とイメージでバンドを動かす方法は、かなり個性的だ。音楽史の中でも、はっきりした型に収まらない存在として見られている。