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Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)は、1942年6月26日にブラジル・バイーア州サルヴァドールで生まれたシンガー、ギタリスト、ソングライターだ。ラテン、ファンク/ソウルを軸に、MPBやサンバの文脈でも重要な仕事を残している。音楽活動だけでなく、政治への関与でも知られている人物だ。
ジルは1960年代後半のブラジル音楽シーンで、カエターノ・ヴェローゾらとともにトロピカリア運動を牽引した。これは、当時のブラジル音楽にロックやポップ、前衛的な要素を持ち込んだ動きとして知られている。
1968年12月27日、軍事政権下のブラジルで言論統制法が施行された直後、ジルはヴェローゾとともに裁判なしで逮捕され、57日間拘留された。トロピカリア運動が体制への挑発と見なされたためとされている。
獄中で毎日看守が口にしていたテレビ司会者の決まり文句をヒントに作られた曲が「Aquele Abraço」だ。この曲は、そのままブラジルへの別れの歌としても受け取られている。
1969年7月にはロンドンへ亡命し、ヴェローゾとともにチェルシー地区で生活しながら音楽活動を続けた。ブラジル国外でも制作を続けた点は、彼の活動歴の中で大きな転機になっている。
ジルの作品は、ラテン、ファンク/ソウル、MPB、サンバが重なり合うところに特徴がある。ギターを軸にした作曲と歌唱をベースに、ブラジル音楽の流れを保ちながら、同時代のポピュラー音楽の要素も取り込んできた。
トロピカリアの文脈では、伝統的なブラジル音楽だけに寄らず、外部の音楽要素を積極的に混ぜる姿勢が目立つ。そこが、彼の楽曲が今も参照され続ける理由のひとつになっている。
音楽活動と並行して、ジルは政治にも深く関わってきた。2003年から2008年まで、ルーラ政権下でブラジルの文化大臣を務めている。
文化行政の場でも、彼は音楽家としての経験をそのまま持ち込み、著作権やデジタル配信の問題に取り組んだ。音楽家が実務レベルで文化政策に関与した例として、かなり特徴的な経歴だ。
2004年6月4日、ポルト・アレグレで開催された国際フリーソフトウェア・フォーラムで、自作曲「Oslodum」をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で公開した。ブラジル人ソングライターとして初めての事例とされている。
さらに「Refazenda」「Rebento」「Refavela」といった楽曲もCCサンプリング・ライセンスで公開している。ローレンス・レッシグらとも連携しながら、デジタル時代の著作権のあり方をめぐる議論を進めた点も、ジルの活動歴に含めておきたいところだ。
ジルベルト・ジルは、音楽家としての活動と政治的な実践が切り離されていない人物だ。作品を聴くときも、トロピカリア、亡命期、文化行政、CC公開まで含めて追うと、活動の流れがかなりはっきり見えてくる。