Vinyl Record Reviews
Patrick Cowley(パトリック・カウリー、1950年10月19日 - 1982年11月12日)は、サンフランシスコを拠点に活動したミュージシャン/レコード・プロデューサーだ。電子音楽、特にHi-NRGや実験的なディスコの分野で初期の先駆者として知られている。
ニューヨーク州北部で育ち、地元のロックバンドで演奏していた。その後、バッファロー大学で英文学を学び、ベイエリアに移ってからはサンフランシスコ・シティ・カレッジでシンセサイザーの研究に打ち込んだ。
録音活動が本格化したきっかけは、シンセサイザーでの独自の音作りに注目したSylvesterにスタジオへ誘われたことだ。ここで制作に関わったアルバム『Step II』は、Sylvesterの知名度を大きく押し上げた作品として扱われている。その後はSylvesterのワールドツアーでバック・ミュージシャンも務めた。
1981年の夏には、プロデューサーのMarty BlecmanとともにMegatone Recordsを立ち上げた。ここでの活動を通じて、ダンス志向の12インチ・シングルを制作し、それがアルバム『Megatron Man』へつながっていく。
同じ時期には、Paul Parkerの「Right on Target」も手がけている。この曲はBillboardのDiscoチャートで1位を記録した。また、Sylvesterとの再会によって生まれた「Do You Wanna Funk」もMegatoneから発表され、クラブ・シーンで広く流通した。
Patrick Cowleyの名前を音楽史に残した仕事のひとつが、Donna Summer「I Feel Love」の非公式リミックスだ。1978年に制作されたこのバージョンは、Giorgio Moroderのオリジナル・マルチトラックを使えなかったため、市販のシングル盤レコードを素材に組み立てられたという。
その制約の中で作られた15分超のヴァージョンは、原曲のミュンヘン・サウンドにシンセサイザーを重ねた構成になっている。Casablancaから12インチで出るとクラブヒットになり、編集版の7インチはCowleyの死後まもなく全英シングルチャート21位を記録した。
紹介されることの多いスタイルはAmbient、Synth-pop、Discoだが、実際にはディスコのダンス性とシンセサイザーの音響処理が強く結びついた作品が目立つ。ベースライン、反復するリズム、上に重なるシンセのフレーズを軸にした曲作りが特徴として挙げられることが多い。
特にHi-NRGの形成に関わった存在として扱われていて、サンフランシスコのクラブ・シーンで育ったサウンドは「サンフランシスコ・サウンド」と呼ばれることもある。
1981年には、Sylvesterを通じて評判を知ったロサンゼルスのFox Studioのオーナー、John Colettiから依頼を受け、アダルト映画『Muscle Up』『School Daze』のためのサウンドトラックも制作していた。この音源は長く未発表のままだったが、2017年にDark EntriesのJosh CheonとHoney Soundsystemによって発掘・復元され、『School Daze』としてまとめられた。
この発掘によって、Cowleyがダンス・フロア向けの作品だけでなく、映像作品のための音楽でも独自のシンセサイザー運用をしていたことが確認できる。
Patrick Cowleyは、電子ダンス・ミュージックの初期に重要な役割を担った人物として扱われている。ディスコの文脈から出発しつつ、シンセサイザーを前面に出した制作で、後のクラブ・ミュージックに接続する流れを作った一人だ。
1982年にAIDSの合併症で亡くなったあとも、リミックス、プロデュース、未発表音源の再発見を通じて、その仕事は繰り返し参照されている。