Patrick Cowley - Afternooners (2017)
Patrick Cowley『Afternooners』について
Patrick Cowleyは、サンフランシスコを拠点に活動した電子音楽家、プロデューサーだ。シルヴェスターとの仕事で広く知られ、ディスコを基盤にしながら、後のHI-NRGやエレクトロニック・ダンス・ミュージックへつながる音作りを早い段階で形にした人物として語られている。『Afternooners』は、そうしたカウリーの活動の中でも、映画音楽という形で残された音源をまとめた作品で、2017年にDark Entriesからリリースされた。作品としては1982年の映画『Afternooners』に使われた楽曲を中心にした編集盤で、カウリーの死後に整理・発掘された資料をもとにした記録でもある。
映画音楽として残った、もうひとつのPatrick Cowley
収録曲の大半は、1982年制作のゲイ・ポルノ映画『Afternooners』のために書かれたものだ。カウリーの代表作というと、やはりシルヴェスターの「You Make Me Feel (Mighty Real)」や「Do You Wanna Funk」、あるいは自身の『Megatron Man』が先に挙がるが、この『Afternooners』では、クラブ向けの強い推進力だけでなく、映像の流れに合わせた短い断片や、空間を広く取ったインタールード的な感触も目立つ。音の密度は高いのに、曲ごとの役割がはっきりしていて、サウンドトラックらしい機能性がある。
一方で、単なる背景音楽に収まっていないのがカウリーらしいところだ。シンセのフレーズには、ベースラインの反復と上モノの細かい動きが同時に走っていて、ディスコの躍動感と、アンビエント寄りの浮遊感が同居している。後年のエレクトロニック・ミュージックでよく語られる「冷たい」質感とは少し違い、ここでは機材の音がそのまま身体の動きに結びついている印象が強い。
2017年盤の意味合い
この2017年盤は、Dark Entriesが進めてきたカウリー復刻の流れの中にある。すでに同レーベルは『School Daze』(2013年)、『Muscle Up』(2015年)を出しており、『Afternooners』はそのシリーズを締めくくる位置づけとして扱われている。リリースノートには、ノイズ処理とリマスタリングが施されたことが記され、バークレーのFantasy StudiosでGeorge Hornが作業を担当している。さらに、折りたたみポスターとインサートが付属する仕様で、資料性の高い再発盤としてまとめられている。
オリジナルの1982年制作当時、これらの音源は映画の中で機能することが前提だったはずだが、2017年の盤では、曲単体の輪郭がかなり見えやすい。特に、カウリーのシンセプログラミングの細かさが耳に残る。派手なメロディだけで引っ張るのではなく、短いモチーフを積み重ねて場面を作る手つきが明確で、後のハウスやシンセポップの文脈で再評価されてきた理由も、こうした細部にある。
ボーナストラックとアーカイブ性
リリースノートによると、「Jungle Orchids」「Take A Little Trip」「Love Come Set Me Free」以外の曲は、映画『Afternooners』にオリジナルで使われた音源だという。加えて、Paul Parkerやカウリーの友人Lily Bartelsのアーカイブから出てきた素材も含まれている。Paul ParkerはカウリーとMegatone Recordsで関わりの深い存在で、カウリーがプロデュースした「Right on Target」でディスコ・チャート1位を記録したことでも知られる。こうした周辺人物の資料が集められている点も、この盤の特徴だ。
クレジットにはJohn Coletti、Lily Bartels、Paul Parker、Joe Tarantino、George Horn、Eloise Leigh、Gwenaël Rattkeへの謝辞があり、単なる商品化というより、残された音源を丁寧に整理したアーカイブ作品としての性格が強い。ジャケットや同梱物まで含めて、カウリーの作家像を補強する作りになっている。
Patrick Cowleyの位置づけ
Patrick Cowleyは、ジョルジオ・モロダーと並べて語られることが多いが、その中身はかなりサンフランシスコのクラブ文化に根ざしている。Sylvesterとの仕事で広く知られるようになり、Megatone Recordsの設立を通じて、当時のダンス・ミュージックを実践的に押し広げた。1982年に32歳で亡くなっているため、作品数は多くないが、その分、後世に残った音源の一つひとつが重要になる。『Afternooners』もその例で、クラブの熱量、映画のための機能、実験的なシンセの扱いが、一本の資料の中で見える作品だ。
同時代のディスコや初期シンセポップと比べても、ここで聴ける音はかなり実務的で、同時に個人の手触りが濃い。ヒット曲のような大きなフックより、音の運び方そのものが印象に残る盤である。
トラックリスト
- A1 Big Shot
- A2 Surfside Sex
- A3 Hot Beach
- B1 The Runner
- B2 Furlough
- B3 One Hot Afternoon
- C1 Leather Bound
- C2 Bore & Stroke
- C3 Cycle Tuff
- D1 Jungle Orchids
- D2 Take A Little Trip
- D3 Love Come Set Me Free