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Vangelisは、ギリシャ出身の作曲家、編曲家、演奏家だ。名前はEvangelos Odysseas Papathanassiouで、1943年3月29日にギリシャ・テッサリア地方の海辺の町アグリアに生まれ、アテネで育った。2022年5月17日にパリで79歳で亡くなった。電子音楽、プログレッシヴ・ロック、アンビエント、現代音楽、映画音楽まで幅広く手がけた人物だ。音楽活動と並行して画家としても活動していた。
Vangelisは4歳ごろから作曲を始め、6歳で最初の公開演奏を行ったとされる。家のピアノの中に釘や台所の鍋を入れて音を試していたというエピソードが残っている。父オデュッセウスは不動産業を営むアマチュアの短距離走者で、Vangelisは「大の音楽好き」だったと語っている。母Foteini Kyriakopoulouはソプラノ歌手の訓練を受けていた。6歳でレッスンは受けたが、独学を好み、楽譜の読み書きは生涯身につけなかった。授業で曲を弾くよう言われると「楽譜を読んでいるふりをして、記憶で弾いていた」という。12歳でジャズとロックに興味を持ち、15歳でバンドを組み、18歳のころにはハモンド・オルガンを購入している。
1963年には学校の友人たちとロック・バンドThe Forminxを結成した。バンド名は古代ギリシャの弦楽器フォルミンクスに由来し、Vangelisは「Vagos」という芸名を使っていた。英語詞はラジオDJ・プロデューサーのNico Mastorakisが書いた。9枚のシングルとクリスマスEPを出してヨーロッパ各地で成功を収め、1966年に解散している。
その後、1967年にDemis Roussos、Loukas Sideras、Anargyros “Silver” KoulourisとともにAphrodite's Childを結成した。最初はPapathanassiou Setという名前だった。フィリップスのギリシャ部門の勧めでイギリスを目指したが、Koulourisが兵役に召集され、残る3人も労働許可の問題で入国を拒まれた。3人はパリにとどまってフィリップスと契約し、Aphrodite's Childと名乗った。代表曲「Rain and Tears」はヨーロッパでヒットし、アルバム『End of the World』『It's Five O'Clock』も発表された。1972年の2枚組コンセプト・アルバム『666』は、ヨハネの黙示録を題材にした作品で、プログレッシヴ・ロック/サイケデリック・ロックの名盤とされる。この作品はVangelisの発案だったが、制作中の緊張の中でバンドは1971年に分裂した。Vangelisは後に「もう商業的なやり方にはついていけなかった。とても退屈だった」と語っている。
1968年のパリの学生運動に心を動かされたVangelisは、約6年間パリに住み続け、映画やドキュメンタリーの音楽も手がけるようになる。フレデリック・ロシフ監督の1970年の動物ドキュメンタリーの音楽は、のちに『L'Apocalypse des animaux』として1973年に発売された。ソロ・アルバムとしては『Fais que ton rêve soit plus long que la nuit』(1972年)、『Earth』(1973年)がある。
1974年には、Rick Wakemanの後任としてJon Andersonに招かれ、Yesのオーディションを受けた。しかし労働ビザの問題、英国音楽家組合の拒否、ツアーへの消極的な姿勢から加入を断り、YesはPatrick Morazを選んだ。
1974年末、音楽的に「フランスを卒業した」としてロンドンへ移り、マーブル・アーチに16トラックのNemo Studiosを開設した。1975年8月にRCAと4枚のアルバム契約を結び、『Heaven and Hell』(1975年)、『Albedo 0.39』(1976年)、『Spiral』(1977年)、『Beaubourg』(1978年)を発表している。『Heaven and Hell』ではJon Andersonが「So Long Ago, So Clear」で歌い、English Chamber Choirが参加した。全英31位を記録し、1976年にロイヤル・アルバート・ホールで演奏された。『Albedo 0.39』は全英トップ20入りした。『Beaubourg』は、ポンピドゥー・センターを訪れた体験から即興的に作られた作品だ。
この時期の作品では、シンセサイザーを中心にした構成が目立つ。特にヤマハCS-80はVangelisの代表的な機材として知られ、初めて使ったのは『Spiral』とされる。アルバムごとに、二元性、宇宙、道教思想、即興性など、テーマを持たせているのも特徴だ。
1979年の『China』からはポリドールに移った。同年にはJon AndersonとデュオJon and Vangelisを結成し、『Short Stories』(1980年)は全英4位を記録した。
1981年のヒュー・ハドソン監督『炎のランナー』で、Vangelisは映画音楽の分野でも大きく知られるようになった。引き受けた理由について、本人は「一緒に仕事をする人たちが気に入った。とても慎ましい低予算の映画だった」と語っている。テーマ曲は5か月かけてチャートを上り、米ビルボードHot 100で1週1位に。サウンドトラックはビルボード200で4週1位となり、米国で100万枚を売った。1982年3月にはアカデミー作曲賞を受賞したが、飛行機嫌いもあって授賞式には出なかった。
同じく1982年の『ブレードランナー』では、ヤマハCS-80のリボン・コントローラーを使ったメイン・タイトルがよく知られている。シンセサイザーの操作で音程を細かく動かす手法は、この作品の印象を決める要素のひとつだ。スコアはBAFTAとゴールデングローブにノミネートされたが、争いのため本人の録音は長く発売されず、代わりにスタジオが雇ったNew American Orchestraによる編曲版が出た。本人の盤が出たのは1994年で、2007年には25周年記念ボックスも出ている。
同じ1982年には、カンヌのパルム・ドールを受賞したコスタ=ガヴラス監督『ミッシング』の音楽でもBAFTAにノミネートされた。日本映画『南極物語』(1983年)の音楽は『Antarctica』として発売され、1984年には『バウンティ』も担当した。一方で『2010年』(1984年)の音楽は断っている。リドリー・スコット監督『1492 コロンブス』(1992年)ではゴールデングローブにノミネートされ、サウンドトラックとテーマ曲はヨーロッパ各国のチャートで1位になった。
Vangelisの作品には、宇宙や科学をテーマにしたものが多い。『Albedo 0.39』は天文学や宇宙論を題材にしており、『Heaven and Hell』や『Albedo 0.39』の一部は、カール・セーガンのテレビシリーズ『コスモス』でも使われた。Vangelisは、セーガンから送られてきた人工衛星が記録した音が、子どもの頃に聞いていた音と一致していたと語っている。
1993年に書かれた合唱交響曲『Mythodea』は、2001年に発売され、NASAの火星探査機2001マーズ・オデッセイのミッションテーマ曲として使われた。2004年にはオリバー・ストーン監督『アレキサンダー』の音楽も担当した。2014年11月12日の欧州宇宙機関(ESA)の探査機フィラエの彗星着陸に合わせて「Arrival」「Rosetta's Waltz」「Philae's Journey」を作曲し、「神話、科学、宇宙探査は、幼い頃から私を魅了してきた題材だ」と語った。2016年9月にはアルバム『Rosetta』を発表している。
2018年6月15日、ウェストミンスター寺院でのスティーヴン・ホーキング博士の埋葬に合わせ、ホーキングの声を乗せたVangelisの約6分半の曲が、ESAのスペイン・セブレロスのアンテナから、最も近いブラックホール1A 0620-00に向けて送信された。2021年9月24日には、NASAの探査機ジュノーに触発され、ソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギューが参加した『Juno to Jupiter』を発表し、これが最後のスタジオ・アルバムとなった。2022年5月17日、新型コロナウイルスの治療を受けていたパリの病院で、心不全のため亡くなった。
Vangelisは画家としても活動していた。2003年にはスペイン・バレンシアのAlmudinで70点の絵画展を開き、その後南米を巡回している。1995年には小惑星6354に「Vangelis」の名が付けられ、フランスのレジオン・ドヌール勲章や芸術文化勲章、NASA公共奉仕メダルなども受けた。2013年にはギリシャの切手にもなっている。