Frank Sinatra - In The Wee Small Hours (1955)
Frank Sinatra 1955

Frank Sinatra - In The Wee Small Hours (1955)

Pop Jazz Vocal Ballad Swing

Frank Sinatra『In The Wee Small Hours』(1955)について

フランク・シナトラの『In The Wee Small Hours』は、1955年にCapitol Recordsから発表されたアルバムで、シナトラのCapitol期を代表する1枚として知られている。ジャズとポップスのあいだを行き来しながら、スウィングやバラード、ヴォーカルの要素を前面に出した作品であり、単なるヒット曲集ではなく、曲順全体でひとつの流れを作る構成が大きな特徴になっている。夜更け、孤独、喪失感といった感情が、アルバム全体を通して一貫している点が印象に残る。

Capitol移籍後の重要作

シナトラはColumbiaでの成功を経て、1953年にCapitolと契約し、以後いくつかの重要なアルバムを制作した。その中でも『In The Wee Small Hours』は、Capitol期の初期を代表する作品として位置づけられる。録音は1954年3月1日、1955年2月8日、16日、17日、3月4日に行われている。参加した編曲面ではネルソン・リドルの仕事が大きく、声を押し出すのではなく、余白を活かして言葉のニュアンスを際立たせる方向にまとまっている。

この作品は、のちに「初期のコンセプト・アルバム」として語られることが多い。曲ごとの独立性よりも、夜の時間帯に寄り添うようなムードの連続が重視されていて、1950年代のポピュラー音楽の中でもかなり早い段階で、アルバムという形式の意味を強く意識した作品といえる。シナトラにとっても、歌手としての見せ方が大きく変わった節目の1枚だろう。

収録曲の流れと聴きどころ

本作は、失恋や孤独を扱うスタンダードを中心に構成されている。特定の1曲が単独で大きく売れるタイプのアルバムというより、曲順を含めて聴いたときに全体像が立ち上がる作りだ。代表曲としては「In the Wee Small Hours of the Morning」がまず挙がる。タイトル曲にあたるこの曲は、静かな時間帯の感情をそのまま切り取ったような内容で、アルバムの輪郭を最も端的に示している。

ほかにも「I Get Along Without You Very Well」「Glad to Be Unhappy」「What Is This Thing Called Love?」など、既存のスタンダードをシナトラ流に再解釈した曲が並ぶ。メロディの派手さよりも、語尾の処理や息の置き方、フレーズの間の取り方に耳が向く作品で、同じ曲でも歌い方ひとつで印象が変わることがよくわかる。実際に聴くと、音数を抑えた伴奏の中で、声の細部が前に出てくる感覚が強い。

オリジナル盤の仕様

このUS盤は、Capitol Recordsのカタログ番号W-581で、モノラル盤としてリリースされている。盤面はグレーの「Long Playing」バンド付きラベルで、銀色印字の初回仕様。ジャケット表記はW 581、ラベル表記はW-581となっている。ルックスの面でも、1950年代半ばのCapitolらしい時代感がはっきり出ている。

また、このアルバムは当初、10インチ2枚組や7インチ2枚組でも出され、その後まもなく12インチLPとしてまとまった。12インチLPは当時、主にクラシックで使われていた形式だったので、ポップスの作品としてはかなり意味のある展開だったといえる。のちに1962年には短縮版も作られており、初期盤と再発・改訂版では収録内容が異なる。

当時の文脈と評価

1950年代半ばのシナトラは、単に人気歌手というだけでなく、アルバム全体で物語性を組み立てる表現者として見られるようになっていた。ビング・クロスビーやナット・キング・コールのような同時代の歌手と比べても、『In The Wee Small Hours』はより内省的で、夜の情景を細かく描く方向に寄っている。ジャズの感覚を持ちながらも、ポップスの聴きやすさを保っている点が、この時代のCapitol作品らしい。

発売当時から評価は高く、Billboardのアルバム・チャートでも上位に入っている。のちにはグラミーの殿堂入りも果たしており、1950年代ポピュラー音楽の重要作として定着した。シナトラ本人にとっても、キャリアの再浮上を印象づける時期の代表作であり、後年の「アルバム単位で聴かれる歌手」というイメージを強めた作品でもある。

まとめ

『In The Wee Small Hours』は、フランク・シナトラの歌唱力を誇示するアルバムというより、声の温度や間合い、曲順の流れで感情を組み立てる作品だ。録音年代の早さ、12インチLPへの移行、Capitol期の代表作という位置づけを含めて、1950年代のポップ・ヴォーカル作品の中でも重要な存在になっている。静かな曲が多いが、その静けさの中でシナトラの表現の輪郭がくっきり見える一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 In The Wee Small Hours Of The Morning
  2. A2 Mood Indigo
  3. A3 Glad To Be Unhappy
  4. A4 I Get Along Without You Very Well
  5. A5 Deep In A Dream
  6. A6 I See Your Face Before Me
  7. A7 Can't We Be Friends
  8. A8 When Your Lover Has Gone
  9. B1 What Is This Thing Called Love
  10. B2 Last Night When We Were Young
  11. B3 I'll Be Around
  12. B4 Ill Wind
  13. B5 It Never Entered My Mind
  14. B6 Dancing On The Ceiling
  15. B7 I'll Never Be The Same
  16. B8 This Love Of Mine

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