Mark Stewart - Dream Kitchen (1996)
Mark Stewart 1996

Mark Stewart - Dream Kitchen (1996)

Electronic Industrial Dub

Mark Stewart『Dream Kitchen』について

Mark Stewartの『Dream Kitchen』は、1996年にUKのMuteからリリースされた作品である。Bristol出身のシンガー/ソングライター/アーティスト/プロデューサーとして知られるMark Stewartは、The Pop Groupの創設メンバーとして出発し、その後もソロや各種プロジェクトを通じて、電子音楽と実験性の強い表現を続けてきた。本作は、その流れの中でも1990年代半ばのMark Stewartを示す一枚として位置づけられる。Electronicを基調に、DubとIndustrialの要素が並ぶクレジットどおり、リズムの重さと音響処理の感触が前面に出る作品として捉えやすい。

Muteというレーベル自体も、この作品を語るうえで重要である。1980年代以降、電子音楽や実験的なポップを多く扱ってきたUKレーベルで、Mark Stewartのようなアーティストとは相性がよい。12 MUTE 130というカタログ番号で出たUK盤は、当時のMuteらしい文脈にきちんと収まっている。1996年という時期は、ポストパンク以後の実験音楽が、ダブやインダストリアルの語彙を保ちながら再編されていたタイミングでもあり、Mark Stewartの活動史の中でも、The Pop Group時代の政治性や攻撃性を別の形で持ち込んだ時期として見やすい。

作品の輪郭

『Dream Kitchen』は、いわゆるメロディ重視のロック作品というより、音の層やビートの圧、声の置き方で引っ張っていくタイプのレコードである。Dub由来の空間処理、Industrial寄りの硬さ、Electronicの反復感が、ひとつの曲の中でぶつかり合う構図が見えやすい。Mark Stewartの持ち味である語りかけるようなボーカルも、音の隙間を埋めるというより、むしろその隙間を際立たせる役割を持っているように感じられる。

聴き進めると、音の密度が高い場面でも、ただ騒がしいだけでは終わらないところがある。低音の伸び方、反復の置き方、ノイズの入り方が整理されていて、粗さの中に設計された印象が残る。ここは、単に激情をぶつけるというより、ダブの時間感覚やスタジオ的な編集感覚を使って曲を組み立てるMark Stewartらしさが出る部分だろう。

Mark Stewartという位置づけ

Mark Stewartは、The Pop Groupでの活動を起点に、ポストパンク、ダブ、ファンク、電子音楽の接点を探ってきた人物である。本作は、その延長線上で、90年代のUKエクスペリメンタル・シーンに接続する一枚として見える。Massive AttackやTrickyのようにブリストル周辺の音楽が広く注目された時代とも重なるが、Mark Stewartの作品はより直接的に、ダブの空間処理とインダストリアルな圧を前に出している印象がある。

また、The Pop Groupの活動を知っていると、『Dream Kitchen』の語り口はさらに見えやすい。以前からあった政治的な緊張感や、既存のロック形式に収まりきらない姿勢が、ここではより音響寄りの方法で表現されている。歌詞やメッセージの細部を追わなくても、声の置き方と音の圧だけで、Mark Stewartの作家性がかなりはっきり伝わる作品である。

注目したいポイント

この作品でまず耳を引くのは、ビートとベースの関係である。Dubの文脈では低音の存在感が重要だが、『Dream Kitchen』でもその感触はしっかりある。ただし、単純に重いだけではなく、音が抜ける瞬間や残響の処理によって、空間が前に出てくる。そこにMark Stewartのボーカルが乗ると、曲全体が「演奏」よりも「場」のように聴こえてくる場面がある。

もうひとつは、Industrial的な硬質さである。金属的な手触りや機械的な反復が、感情を直接煽るというより、緊張を持続させる方向で働いている。90年代中盤の電子音楽には、クラブ寄りの洗練へ向かう流れもあったが、本作はそうした流れとは少し違い、もっと荒さや圧迫感を残している。この距離感が、Mark Stewartの作品を単なる時代の産物ではなく、独自のノイズ感を持つものとして印象づける。

同時代との接点

同時代のUK音楽を見渡すと、ブリストルのダブ感覚、ポストパンクの残響、インダストリアルの攻撃性が、さまざまな形で交差していた。『Dream Kitchen』は、その交差点に立つ作品として理解しやすい。電子音楽のフォーマットを取りながらも、整ったクラブトラックへは寄り切らず、むしろ不穏さや切迫感を残すところに、このアルバムの性格がある。

Mark Stewartのディスコグラフィーの中では、The Pop Group以後の探求を継続しつつ、90年代の音像へ接続した時期の記録として見ることができる。派手なヒット曲で押すタイプではないが、作品全体の流れの中で、声、反復、低音、残響の扱いが一貫している点が印象に残る。音の作り込みを追いながら聴くと、Mark Stewartがこの時期に何を更新しようとしていたのかが、少しずつ見えてくる一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Dream Kitchen
  2. A2 Crawl Space
  3. B Simulacra (Clone1)

動画

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