Paul Winter / The Winter Consort - Icarus (1972)
Paul Winter / The Winter Consort『Icarus』
Paul Winter / The Winter Consortの『Icarus』は、1972年にオリジナルが発表された作品で、Paul Winterのディスコグラフィーの中でもよく知られた一枚だ。ここで聴けるのは、ジャズの編成感を保ちながら、フォークや室内楽の感触、さらに各地の音楽要素を自然に混ぜ込んだ、初期Paul Winter Consortらしい音楽である。のちにPaul Winterが自らのレーベルLiving Musicを立ち上げ、自然や文化をテーマにした活動へつなげていく流れを考えると、この作品はその前段階にある重要な位置づけのアルバムとして見えてくる。
George Martinが手がけた、よく知られた代表作
本作の大きな特徴は、George Martinがプロデュースを担当している点にある。Beatlesのプロデューサーとして有名なMartinだが、ここでは派手な装飾よりも、アンサンブルの細かな重なりや音の抜けを整える方向に働いている印象が強い。Paul Winterの公式紹介でも、この作品は1971年夏に海辺の借家のような落ち着いた環境で録音されたことが強調されており、せわしないスタジオ作品というより、呼吸の合った演奏を丁寧に残した録音として受け止められている。実際、音の余白が広く、各楽器の動きが追いやすい作りで、アンサンブルの会話が前に出てくる。
アルバム・タイトルにもなっている「Icarus」は、Ralph Towner作曲の楽曲で、のちにグループを代表するシグネチャー曲として広く知られるようになった。旋律の流れが明瞭で、演奏の輪郭もはっきりしており、単なる雰囲気音楽ではなく、曲そのものの強さで印象を残すタイプの作品だ。これが本作の認知度を支えている要素のひとつで、アルバム全体の入口としても機能している。
演奏の質感と、当時ならではのクロスオーバー感
『Icarus』は、いわゆる1970年代初頭のクロスオーバー・ジャズの文脈に置くと見えやすい。ジャズの即興性を残しながら、フォーク的な親しみやすさ、クラシック寄りの編曲感、さらにブラジル音楽やワールド・ミュージック的な感覚が自然に接続されている。Paul Winterはそれ以前からボサノヴァや民俗音楽をジャズに取り込んできた人物で、このアルバムでもその姿勢がきちんと続いている。
当時の批評でも評価は高く、1973年のDown Beat誌では好意的に受け止められた。ヨーロッパ、インド、アメリカ先住民、ラテン、ブルースといった多様な要素を、単なる寄せ集めではなく精妙な総合として扱う見方が示されている。一方で、洗練されているぶん距離を感じるという見方も併記されており、聴き手によって受け止め方が分かれた作品でもあるようだ。
1984年盤について
今回の盤は1984年にLiving Music Recordsから再リリースされたUS盤で、オリジナルの1972年盤とは時期が異なる。レーベルはPaul Winter自身のLiving Musicで、プロフィールにある通り「Celebrating the Creatures and Cultures of the Earth」という姿勢を掲げるレーベルだ。1984年盤のリリース文脈では、シュリンクにGeorge Martinのコメントを使ったハイプ・ステッカーが付いていた点も確認できる。「自分が作った中で最良のレコード」とする趣旨の文言で、再発盤でもこのアルバムの評価の高さを前面に出している。
また、リリースノートにはRalph Townerが弾くオルガンが「bush organ」と記されている。こうした表記も、一般的なジャズ盤とは少し違う、手触りのある編成感を示している部分だろう。楽器の名前ひとつ取っても、既成の枠にきれいに収めるより、音色の個性をそのまま活かしている感じがある。
作品の位置づけ
Paul Winterにとって『Icarus』は、後年の自然志向やワールド・ミュージック的展開へ向かう前の、かなり重要な到達点だと思える。Paul Winter Consortの初期代表作として語られるのも納得できる内容で、単なる人気盤というより、彼の音楽の方向性を早い段階で明確に示したアルバムという印象が強い。大きなヒットチャートの記録よりも、作品そのものの評価と、その後の活動へのつながりで存在感を持つ一枚である。
同時代の感覚で言えば、ECM以降の室内楽的ジャズや、ジャズ・ロック周辺の洗練とは少し違う場所に立ちながら、静かな編成で広い世界を扱おうとしているところが面白い。音数を増やして盛り上げるのではなく、響きの配置と旋律の通り方で聴かせるタイプの作品で、そこにPaul WinterとGeorge Martinの組み合わせの妙がある。『Icarus』は、その後も繰り返し参照されるだけの輪郭を最初から持っていたアルバムだと言えそうだ。
トラックリスト
- A1 Icarus 3:02
- A2 Ode To A Fillmore Dressing Room 5:30
- A3 The Silence Of A Candle 3:22
- A4 Sunwheel 4:52
- A5 Juniper Bear 3:10
- B1 Whole Earth Chant 7:42
- B2 All The Mornings Bring 3:48
- B3 Chehalis And Other Voices 5:26
- B4 Minuit 3:06
動画
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Paul Winter Consort ► All The Mornings Bring [HQ Audio] Icarus 1972
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Paul Winter Consort ► Sunwheel [HQ Audio] Icarus 1972
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Paul Winter Consort - Icarus
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Ode to a Fillmore Dressing Room
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The silence of a candle.wmv
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Paul Winter Consort - Sun Wheel
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Juniper Bear
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Chehalis and Other Voices
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Paul Winter Consort - Whole Earth Chant
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All Mornings Bring
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Minuit