Roxy Music - For Your Pleasure (1973)
Roxy Music 1973

Roxy Music - For Your Pleasure (1973)

Rock Art Rock Avantgarde Glam

Roxy Music『For Your Pleasure』(1973) について

Roxy Musicの2作目『For Your Pleasure』は、1973年のUKオリジナル盤として登場したアルバムである。前作で示したグラムロックの華やかさを引き継ぎながら、こちらではさらに構成が緻密になり、音の隙間や不穏さも前面に出てくる。Bryan Ferryの作曲とボーカルを軸に、Brian Enoのシンセサイザーやテープ処理、Andy Mackayのサックス、Phil Manzaneraのギター、Paul Thompsonのドラムが重なり、Roxy Musicらしい都会的な緊張感を形にした作品だ。

このアルバムは、初期Roxy Musicの中でも特に重要な位置を占める一枚として知られている。バンドのデビュー作が「新しいロック・バンドの登場」を強く印象づけたとすれば、『For Your Pleasure』はその感触をさらに押し進め、実験性とポップ感覚を同じ盤面に置いた作品といえる。のちの活動を考えるうえでも、オリジナル編成のRoxy Musicがどこまで行けたかを示す記録になっている。

制作とオリジナルUK盤の特徴

録音は1973年2月、ロンドンのAIR Studiosで行われた。UK初回盤は、全面ラミネートの見開きジャケット、いわゆる「pink rim/palm tree」レーベルでのリリースで、インナーやジャケット内側の表記にも当時のIsland Recordsらしい仕様が見られる。レーベル面や見開き内に「The Second Roxy Music Album」という副題が入っているのも、この時期の作品らしい情報である。

制作クレジットを見ると、片面ごとに表記が異なる点も興味深い。アルバム全体としてはChris ThomasとRoxy Musicの共同プロデュースだが、レーベル表記ではA面がChris ThomasとRoxy Music、B面がJohn AnthonyとRoxy Musicとなっている。こうした細部も、当時の制作現場の動きがそのまま残っている部分だろう。

サウンドと楽曲の印象

実際に聴くと、まず感じるのは音の密度よりも、音の配置の巧みさである。演奏が常に鳴り続けるのではなく、必要なところでだけ鋭く出てくるため、曲の輪郭がはっきりしている。『Do the Strand』のような曲では推進力が前に出る一方で、『In Every Dream Home a Heartache』のような曲では、テンションの上げ下げがかなり計算されているように聞こえる。Ferryの歌い方も、感情を直接ぶつけるというより、距離を保ったまま状況を描くような形で進む。

Brian Enoの存在も大きい。シンセサイザーの使い方が単なる伴奏にとどまらず、曲の輪郭をずらしたり、空気の圧を変えたりする役割を担っている。Roxy Musicの初期作品が後年まで語られる理由のひとつは、こうした電子音の使い方が、ロックの演奏に別の時間感覚を持ち込んでいる点にあると思う。ギター、サックス、鍵盤、ヴォーカルが同じ方向を向きすぎず、少しずつずれたまま進む感じが、このアルバムの個性になっている。

代表曲とアルバム内での役割

代表曲としては、やはり『Do the Strand』が挙げやすい。勢いのある曲だが、単純なロックンロールに収まらず、言葉の選び方やアレンジの切れ味でRoxy Musicらしさを強く出している。『Editions of You』も、攻撃的なリズムと華やかな装飾が同居していて、この時期のバンドが持っていた推進力をよく示す。

一方で、アルバム全体を支えているのは、ヒット曲だけではなく、曲順に沿って変化していく緊張感である。派手さの裏にある冷たさ、見せかけの洗練と不穏さ、その両方が並んでいるため、1曲ごとの印象だけでなく、通して聴いたときの流れが残りやすい。Roxy Musicが単なるグラムロックの枠に収まらない理由も、この構成にある。

同時代の文脈と位置づけ

1973年の英国ロックを見渡すと、グラムロックが大きく広がり、同時に表現の先鋭化も進んでいた時期である。その中でRoxy Musicは、T. Rexのような直接的な華やかさとも、よりハードなロックとも少し違う場所にいた。視覚的な強さと、音響面での実験が同時に進んでいた点で、同時代の中でもかなり独特だ。後のニューウェイヴやアートロック、さらにはアンビエント寄りの感覚にもつながる要素が、この時点ですでに含まれている。

また、この作品はBrian Enoがバンドを離れる前の最後のアルバムでもある。その意味では、初期Roxy Musicの到達点として見られることが多い。華やかな装いの中に、ロックの形式をずらす発想がしっかり入っている一枚で、1973年のUKロックを語るうえでも外しにくい存在だと思う。

まとめ

『For Your Pleasure』は、Roxy Musicの2作目でありながら、すでにバンドの個性がかなり明確に固まっているアルバムである。Bryan Ferryのスタイル、Brian Enoの実験性、ManzaneraやMackay、Thompsonの演奏が、それぞれ別の方向を向きつつ、最終的にはひとつの緊張した音像にまとまっている。UKオリジナル盤の仕様も含めて、1973年という時代の空気がそのまま封じ込められた作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Do The Strand 4:00
  2. A2 Beauty Queen 4:35
  3. A3 Strictly Confidential 3:42
  4. A4 Editions Of You 3:40
  5. A5 In Every Dream Home A Heartache 4:25
  6. B1 The Bogus Man 9:22
  7. B2 Grey Lagoons 4:11
  8. B3 For Your Pleasure 6:58

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Avantgarde"

toast