Vinyl Record Reviews
オズリック・テンタクルズ(Ozric Tentacles)は、1983年にイングランド南西部サマセットで結成されたインストゥルメンタル・スペース・ロック/サイケデリック・ロック・バンドである。40年以上に及ぶ活動の中で30作以上のアルバムを発表し、メジャー・レーベルに一切依存しない完全なインディペンデント体制を貫きながら世界累計100万枚以上のセールスを記録した。
ゴングやホークウィンド直系のサイケデリック/スペース・ロックに、スティーヴ・ヒレッジ流のスペーシーなギター、複雑なプログレッシブ・ロックの構成、浮遊感あふれるアンビエント・ダブ、中東や東洋のエスニック音階、そしてレイヴ/テクノの高速シーケンサー・ビートを高次元で融合させた唯一無二のサウンドスケープを確立した。
バンドの原点は、1983年6月のストーンヘンジ・フリー・フェスティバルで行われた即興ジャム・セッションにある。ギタリスト兼コンポーザーのエド・ウィン(Ed Wynne)と弟のローリー・ウィン(ベース)を中心に、フェスティバルに集うトラベラーやヒッピー・コミュニティの中で結成された。奇妙なバンド名は、架空の朝食用シリアル銘柄を考案する会話の中から生まれた。
1980年代半ば、彼らは音楽業界の商業システムから距離を置き、グラストンベリー・フェスティバルをはじめとする野外フリー・フェスティバルでの熱狂的なライブ活動を展開した。手作りのカセット・テープをライブ会場や通信販売で直接ファンへ届けるDIYの手法を採り、『Erpsongs』(1985年)から『The Bits Between the Bits』(1989年)に至る初期6作のカセット・アルバムを通じて熱狂的なアンダーグラウンドの支持層を築き上げた。
1989年、創作と流通の完全な主権を確保するため、独自のレーベル「Dovetail Records」を設立した。同年に発表した初の正式スタジオ・アルバム『Pungent Effulgent』でアナログ盤およびCD市場へ本格進出を果たし、英インディ・チャートを賑わせた。
1990年には2枚組の大作『Erpland』を発表した。エド・ウィンの流麗でスリリングなギター・ワークとシンセサイザー、ジョン・イーガンによる神秘的なフルート、そしてマーヴ・ペプラー(ドラムス)とジョーイ・ヒントン(キーボード)が織りなす強靭なリズム・セクションが結実し、ネオ・サイケデリックの金字塔として絶賛された。なお、ペプラーとヒントンは後にエレクトロニック・ユニット「イート・スタティック(Eat Static)」を結成してテクノ・シーンでも大きな成功を収めている。
1991年のアルバム『Strangeitude』では、アシッド・ハウスや初期トランスのグルーヴを大胆に取り入れたクラブ・アンセム「Sploosh!」が英ダンス・チャートやインディ・チャートを席巻し、ロック・リスナーとレイヴ世代を橋渡しする現象を巻き起こした。
1993年、バンドは第4作『Jurassic Shift』を発表した。全編インストゥルメンタルの自主制作スペース・ロック作品でありながら、熱心なファン層の爆発的な支持により全英公式アルバム・チャート(UK National Albums Chart)で初登場11位を記録する快挙を達成した。
大資本のレコード会社やラジオでのヘビーローテーションに頼ることなく、純粋なライブの熱量と口コミだけで全英トップクラスのチャートインを果たしたこの出来事は、1990年代英国インディペンデント音楽史に残る輝かしい事件となった。
1990年代後半以降もSnapper Music傘下のKscopeなどを拠点に精力的なリリースを継続した。度重なるメンバー交代を経ながらも、エド・ウィンが唯一無二の首領として創造性の舵を取り続け、後年には息子のサイラス・ウィン(キーボード)やサスキア・マックスウェル(フルート)らを迎えて世代を超えたアンサンブルを再構築した。
2023年には通算16作目のスタジオ・アルバム『Lotus Unfolding』を発表し、初期衝動のスペーシーなトリップ感と現代のエレクトロニクスが高度に調和した健在ぶりを示した。40年以上にわたり自らのサイケデリック美学を一切曲げることなく旅を続けるオズリック・テンタクルズは、スペース・ロックとサイケデリック・トランスの双方から永遠のパイオニアとして崇敬を集め続けている。