Rev. Gary Davis - The Reverend Gary Davis At Newport (1968)
Rev. Gary Davis 1968

Rev. Gary Davis - The Reverend Gary Davis At Newport (1968)

Blues Country Blues Gospel

Rev. Gary Davis『The Reverend Gary Davis At Newport』について

Rev. Gary Davisの『The Reverend Gary Davis At Newport』は、1968年にVanguardから出たアルバムで、タイトルどおりニューポート・フォーク・フェスティバルでの演奏を軸にした一枚だ。Rev. Gary Davisは、ゴスペルとブルースの両方にまたがる存在として知られ、指弾きのギターと独自の多声的な伴奏で強い個性を持つ人物である。この作品でも、その演奏の核にあるのは派手さよりも、一本のギターで複数の声部を組み立てていく運びと、祈りのような歌の運びにある。

1960年代後半のアメリカでは、戦前ブルースやフォークの再評価が進み、都市のクラブや大学のサーキットだけでなく、フェスティバルの舞台に年長の伝承者たちが立つ機会が増えていた。Rev. Gary Davisもその流れの中で改めて注目された演奏家のひとりで、このアルバムはそうした時代の文脈をよく示す記録といえる。もともと世俗ブルースの録音歴を持ちながら、のちに按手を受けて以降は説教者としての顔を前面に出した人物でもあり、その二面性がこの人の演奏をより特別なものにしている。

作品の位置づけ

Rev. Gary Davisにとって、この時期の作品は過去のブルースマンという枠に収まらない、現役の表現者としての姿を伝える意味合いが強い。若い世代のフォーク・リスナーにとっては、彼のギター・スタイルそのものがひとつの教科書のように受け取られたはずで、Bob Dylan、Jorma Kaukonen、Ry Cooderらへの影響が語られるのも納得できる内容だ。録音の中心がライブであることで、技巧の見せ場だけでなく、歌とギターの呼吸、間の取り方、フレーズの置き方までが伝わりやすい。

Vanguard盤らしく、音の記録としての性格もはっきりしている。Vanguardはフォークやブルースの重要な記録を多く残したレーベルで、この作品もその系譜にある一枚だ。スタジオで整えた完成品というより、会場の空気と演奏者の身体感覚がそのまま入ったタイプのアルバムとして聴こえる。

聴きどころ1:ギター一本で進む多声的な運び

まず目を引くのは、右手の指さばきで低音と高音を切り分けながら、ひとつの伴奏の中に複数の線を作っていく点だ。Rev. Gary Davisのギターは、単なるリズム・ギターではなく、ベースライン、内声、メロディを行き来する構造になっている。曲が進むほどに、その運びが明確になり、歌の節回しを補強する役割も見えてくる。

このタイプの演奏は、ミシシッピ・デルタのスライド主体のブルースとは少し違い、カントリー・ブルースの中でも特に複雑な構成感を持つ。Blind Willie Johnsonのような宗教曲の強さとも、Blind Boy Fullerのような軽快なストラミングともまた違う。Rev. Gary Davisの場合、音数の多さよりも、音の置き方で緊張感を作る点が印象に残る。

聴きどころ2:ゴスペルとブルースの接点

本作で重要なのは、Rev. Gary Davisの中でゴスペルとブルースがきれいに分かれていないことだ。彼は信仰者としての立場を明確にしながらも、古いブルースの語法を完全には手放していない。そのため、歌の内容が宗教的な方向を向いていても、節回しやギターの推進力には、戦前ブルースの感触が残る。

この混ざり方が、この人の録音を単なる「宗教歌集」にしない理由でもある。説教臭さに寄りすぎず、かといって世俗ブルースの快楽に寄り切るわけでもない。その中間にある張りつめた感じが、ライブ盤ではいっそう分かりやすい。ニューポートという場に立つことで、伝承音楽の担い手としての存在感が前に出ている。

同時代との比較で見えるもの

1968年という年は、ブルースの復刻や再発見が進んだ時期でもあり、古い演奏家が新しい聴衆に向けて再評価される場面が多かった。Rev. Gary Davisは、その中でも特に「ギターの人」として聴かれた存在だと思う。派手なバンド編成や電化サウンドではなく、声と一本のギターで勝負する点が、同時代の多くのブルース再評価盤の中でも際立っている。

同じくフォーク・ブルースの文脈で語られることの多いSkip JamesやMississippi John Hurtと比べても、Rev. Gary Davisは和声感や運指の密度がかなり濃い。聴感上は素朴に見えても、実際には細かな構成が積み重なっているタイプで、そこがこの作品でもよく分かる。

まとめ

『The Reverend Gary Davis At Newport』は、Rev. Gary Davisという人物の輪郭を、ライブという形でそのまま残した記録だ。世俗ブルースの履歴、説教者としての立場、そして独自のギター・スタイルが一枚の中で自然につながっている。Vanguardの1968年盤として、当時のフォーク/ブルース再評価の空気も含んだ作品であり、同時代の聴き手がこの人をどのように受け止めたかを想像しやすい内容でもある。

収録曲ごとの細部は、演奏の流れの中でこそ見えてくるタイプだが、全体を通して聴くと、歌とギターが互いを支え合う設計がはっきりしている。Rev. Gary Davisの録音の中でも、ライブ感と人物像が前に出る一枚として位置づけられるだろう。

トラックリスト

  1. A1 Samson And Delilah (If I Had My Way) 3:22
  2. A2 I Won't Be Back No More 3:31
  3. A3 Buck Dance 1:17
  4. A4 Twelve Sticks 3:05
  5. A5 Death Don't Have No Mercy 3:56
  6. A6 You Got To Move 5:33
  7. B1 Lovin' Spoonful 4:23
  8. B2 She Wouldn't Say Quit 5:34
  9. B3 I've Done All My Singing For The Lord 3:27
  10. B4 Twelve Gates To The City 4:16
  11. B5 I Will Do My Last Singing In This Land Somewhere 5:10

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