Vinyl Record Reviews
Isaac Hayesは、アメリカ・テネシー州コヴington生まれのシンガー、キーボード奏者、プロデューサー、ソングライター、俳優だ。1942年8月20日生まれ、2008年8月10日にメンフィスで亡くなっている。1960年代から1970年代にかけてStaxレーベルで活動し、メンフィス・サウンドの形成に大きく関わった人物として知られている。
ヘイズはまずStaxで演奏家として活動を始め、その後はソングライター、プロデューサーとしても存在感を強めた。特にDavid Porterとの共作で多くの仕事を残している。Staxのソウルやファンクの流れの中で、演奏だけでなく制作面でも重要な役割を担った点が、この時期のヘイズの大きな特徴だ。
彼の仕事は、単に楽曲を作るだけではなく、リズムの置き方やアレンジの組み立て方にもはっきり出ている。メンフィス・サウンドの中核にあった厚みのあるグルーヴと、楽器の鳴り方を前に出す作りが、ヘイズの作品にも反映されている。
ソロアーティストとして最大の成功を収めたのは、1971年の映画『Shaft』のサウンドトラックだ。とくにテーマ曲は広く知られ、1972年のアカデミー賞でオリジナル楽曲賞を受賞した。演技部門以外で初めてオスカーを獲得した黒人アーティストになった点も、音楽史の中で大きな出来事として記録されている。
ただ、その受賞の過程はすんなり進んだわけではなかった。ヘイズは楽譜を書けないことを理由に、アカデミー内部で「本当の作曲家なのか」という疑問を向けられたという。そこにQuincy Jonesが介入し、ヘイズの作曲者としての正当性を主張したことで、ノミネートが認められた経緯がある。
『Shaft』の成功で、ヘイズは映画音楽の作り手としても強い印象を残した。ソウルやファンクをベースにしながら、映像の場面に合わせて曲を展開させる作りが、彼の仕事の大きな軸になっている。
Isaac Hayesの音楽は、FunkとSoulを中心にしたものだ。キーボードを軸にした演奏、重心の低いリズム、長めの展開を持つ曲構成が目立つ。Stax時代の作品でも、演奏の密度とアレンジの組み方に特徴がある。
派手な装飾よりも、リズムと音の配置で引っ張るタイプの音作りが中心だ。ファンクの推進力とソウルの歌心を両方持っているところが、ヘイズの作品を追うと見えてくる。
音楽活動に加えて、俳優としても知られている。とくにアニメ『South Park』でシェフ役の声を1997年から2006年まで務めたことで広く認知された。さらに、1981年の映画『Escape From New York』では、ジョン・カーペンター監督作でデューク役を演じている。
音楽家としての活動と並行して映像作品にも関わったことで、Isaac Hayesは単なるシンガーにとどまらない存在になった。声の仕事や映画出演を通じて、作品の中で印象を残す場面が多い。
後年のヘイズは、サイエントロジー信者としても知られていた。『South Park』の2005年放送回「Trapped In The Closet」をめぐって、2006年に番組を降板している。これは宗教的不寛容への抗議として伝えられたが、のちに息子のIsaac Hayes IIIは、当時すでに体調を崩していた父が周囲のサイエントロジー関係者によって実質的に降板を決めさせられたのだと証言している。
音楽面では、Staxでの仕事、David Porterとの共作、『Shaft』の成功が大きな柱になっている。演奏家、制作側、ソロアーティスト、俳優という複数の顔を持ちながら、それぞれの場面で名前を残した人物だ。