King Gizzard And The Lizard Wizard - Murder Of The Universe (2017)
King Gizzard And The Lizard Wizard 2017

King Gizzard And The Lizard Wizard - Murder Of The Universe (2017)

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King Gizzard And The Lizard Wizard『Murder Of The Universe』について

King Gizzard And The Lizard Wizardは、2010年にメルボルンで結成されたオーストラリアのロック・バンドだ。サイケデリック・ロックを軸にしながら、録音ごとに音の組み立てや物語の作り方を変えていくことで知られている。2017年作の『Murder Of The Universe』は、その中でもかなりコンセプト色の強い一枚で、バンドの作品群の中でも特に「曲を聴く」というより「章立ての物語を追う」感覚がはっきりしている。

この作品は2017年にオーストラリア/ニュージーランド盤としてリリースされた。発売元はメルボルンのインディペンデント・レーベル、Flightless Records。バンドの活動圏とレーベルの距離が近いこともあって、作品の企画性や装丁の作り込みがそのまま盤の個性になっている。初回盤の「Altered Beast Edition」は、三色のカラーヴァイナル仕様で限定2000枚、Flightlessの通販のみで販売されたとされる。30ページのイラスト付きストーリーブック、ゾートロープ仕様のレーベル面、ダウンロードカードが付属するなど、音だけでなく物理メディアとしての完成度も高い。

作品の輪郭と位置づけ

『Murder Of The Universe』は、King Gizzard And The Lizard Wizardが持つ多作ぶりの中でも、特に組曲的な構成を前面に出した作品だ。ロック・バンドとしての演奏を土台にしつつ、語りの要素や反復の多い展開が入り、アルバム全体がひとつの長い物語として進んでいく。サイケデリック・ロックやガレージ・ロックの文脈に置きつつも、単純に音の荒さや勢いだけで押し切るタイプではなく、構成の組み立て方に意識が向いている。

同時代のサイケデリック・ロックの中でも、King Gizzardは演奏の熱量とコンセプトの強さを両立させるバンドとして見られることが多い。たとえば、よりジャム感を前に出すタイプのグループや、録音の質感で世界観を作るタイプと比べると、この作品はストーリーの進行がはっきりしている。ガレージ・ロックの粗さを感じさせる場面はあるが、それは単なるラフさではなく、場面転換のための手触りとして使われている印象だ。

アルバム全体の聴こえ方

実際に聴くと、冒頭から最後まで音の密度が高く、切り替わりも多い。曲の区切りがあっても、全体としては一続きの劇を見ているような感覚が残る。語りのパートが入ることで、メロディやリフだけではなく、言葉の進行が作品の推進力になっている。演奏はタイトというより、場面ごとに圧を変えながら進む形で、勢いのある部分と不穏さのある部分が交互に現れる。

また、この作品は単独の楽曲を切り取って聴いても機能するが、アルバム単位で追うと各パートのつながりが見えやすい。ゾートロープ・ラベルやブックレットの存在も含めて、音源とパッケージが同じ方向を向いている作りだ。2017年のオリジナル盤としては、ライブ感のあるロック作品でありながら、同時にアートブック的な感触も持っている。

注目曲:『Altered Beast』

このアルバムを語るうえで、まず触れたいのが『Altered Beast』だ。作品の中核にある連作のひとつで、タイトルからしてすでに物語の方向性を示している。リフの押し出しが強く、展開の切り替えもはっきりしていて、バンドの演奏が曲の中で次々に姿を変えていく。パートの連結が細かく、聴き進めるほどに「一曲の中で複数の場面がある」ことが見えてくる。

この曲は、King Gizzardの持つサイケデリックな感覚を、単なる浮遊感ではなく、物語の推進力に変えている点が印象的だ。ガレージ・ロック的な直進性もあるが、同時に語りや展開の切り替えが入ることで、ただ勢いで押すだけでは終わらない。アルバムの限定盤が「Altered Beast Edition」と名付けられていることからも、この曲が作品の顔のひとつとして扱われていることがうかがえる。

注目曲:『The Lord Of Lightning』

『The Lord Of Lightning』は、アルバムの中でも比較的覚えやすいフックを持つパートとして耳に残りやすい。重めの進行と、語りを含む劇的な構成が組み合わさっていて、アルバム全体の物語性を端的に示す場面になっている。音の厚みと展開の速さが同居しており、短い時間の中で場面が大きく動く。

この曲では、King Gizzardが得意とする反復の使い方がよく出ている。ひとつのモチーフを繰り返しながら、少しずつ音圧や言葉の意味合いを変えていく作りで、聴き手は自然に次の展開へ引き込まれる。アルバムの中でも、物語を前に進める役割が強いパートとして機能している。

注目曲:『Han-Tyumi and the Murder of the Universe』

タイトル曲にあたる『Han-Tyumi and the Murder of the Universe』は、この作品の主題を最もはっきり示す部分だ。アルバム名そのものを背負っているだけあって、物語の終着点としての存在感がある。ここでは、音の展開だけでなく、語りの意味が作品全体を締めくくる役割を持っている。

実際に聴くと、ここまで積み重ねてきた要素がひとつの方向へ収束していく感触がある。King Gizzardの作品の中でも、こうした終末感を前面に出した構成はかなり特徴的で、単なるアルバムの最後の曲というより、ひとつの長編の結末として置かれている印象だ。バンドのコンセプト志向が、演奏と編集の両面でまとまった場面といえる。

まとめ

『Murder Of The Universe』は、2017年のKing Gizzard And The Lizard Wizardを知るうえで重要な作品だ。サイケデリック・ロック、ガレージ・ロックという枠の中に収まりながら、物語性、構成、装丁まで含めてひとつのパッケージとして作られている。Flightlessから出た初回盤の仕様も含め、作品全体が「聴くもの」であると同時に「手元に置くもの」として成立している。

バンドの多彩なディスコグラフィーの中では、特にコンセプトの輪郭が明確な一枚だ。演奏の熱量だけでなく、章立てされた物語の進行、ブックレットやラベル面の演出、そして各パートのつながりが、このアルバムの性格を形作っている。

トラックリスト

  1. The Tale Of The Altered Beast
  2. A1 A New World 0:57
  3. A2 Altered Beast I 2:23
  4. A3 Alter Me I 0:45
  5. A4 Altered Beast II 4:28
  6. A5 Alter Me II 1:25
  7. A6 Altered Beast III 2:14
  8. A7 Alter Me III 1:26
  9. A8 Altered Beast IV 5:10
  10. A9 Life/Death 0:59
  11. The Lord Of Lightning Vs Balrog
  12. A10 Some Context 0:17
  13. A11 The Reticent Raconteur 1:04
  14. A12 The Lord Of Lightning (A) 5:07
  15. B1 The Lord Of Lightning (B)
  16. B2 The Balrog 4:29
  17. B3 The Floating Fire 1:54
  18. B4 The Acid Corpse 1:00
  19. Han-Tyumi And The Murder Of The Universe
  20. B5 Welcome To An Altered Future 0:55
  21. B6 Digital Black 2:46
  22. B7 Han-Tyumi, The Confused Cyborg 2:21
  23. B8 Soy-Protein Munt Machine 0:30
  24. B9 Vomit Coffin 2:19
  25. B10 Murder Of The Universe 4:09

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