My Brother The Wind - Once There Was A Time When Time And Space Were One (2014)
My Brother The Wind『Once There Was A Time When Time And Space Were One』
スウェーデンのサイケデリック/スペースロック・バンド、My Brother The Windが2014年に発表した作品。Åmålで2009年に結成されたこのユニットは、メンバーそれぞれの演奏力を土台に、長尺の展開と即興性を前面に出したインストゥルメンタル作品で知られる。『Once There Was A Time When Time And Space Were One』も、その路線がはっきり出た一枚で、タイトルからしてすでに宇宙的な感覚を強く示している。
レーベルはFree Electric Sound。インストゥルメンタル系の作品を多く扱う米国のレーベルで、The Laser's Edgeグループの一角として2001年に始まった。My Brother The Windの音楽は、いわゆる歌もののロックというより、演奏そのものの流れを追うタイプの作品で、このレーベルの方向性とも自然につながっている。
作品の輪郭
本作は、2014年時点のMy Brother The Windの音楽性をまとめたアルバムとして位置づけやすい。サイケデリック・ロックとスペース・ロックを軸にしつつ、曲の構成はきっちり区切られるというより、演奏のうねりをそのまま聴かせる場面が多い。メンバーにはSamuel Hellberg、Daniel Fridlund Brandt、Nicklas Barker、Mathias Danielsson、Ronny Eriksson、Tomas Erikssonが名を連ねる。複数人の演奏が重なりながら、リフ、反復、リード、リズムの変化が少しずつ入れ替わっていく作りが基本線になっている。
このバンドの面白さは、派手な歌メロや分かりやすいフックよりも、演奏の速度感と空間の広がりにある。聴いていると、いわゆる60〜70年代サイケの残響を感じる一方で、ただの懐古ではなく、もう少し硬質で現代的な音像も見える。比較対象として名前を挙げるなら、同じ北欧圏のサイケデリック/プログレ系バンドや、長尺のジャム感を持つスペースロック勢が思い浮かぶが、本作はその中でもかなり演奏主導の印象が強い。
聴きどころ1:タイトル曲「Once There Was A Time When Time And Space Were One」
アルバムの核としてまず耳に入るのがタイトル曲。長い題名にふさわしく、ひとつのモチーフを固定せず、音の層を少しずつ重ねながら進んでいくタイプの展開が目立つ。ギターの歪みが前に出る場面と、空間を広く使う場面の切り替えがはっきりしていて、バンドの持つサイケデリックな側面とスペースロック的な側面が同じ曲の中で行き来する感じがある。
ここでは、メロディを追うよりも、フレーズの反復とズレ方に注目したくなる。一定のリズムに乗りながら、少しずつ密度を上げていく流れは、ライブでの即興から生まれたような手触りもある。曲の中心がどこかに固定されきらないまま進むので、聴き手は音の移動そのものを追うことになる。
聴きどころ2:アルバム全体を支える長尺のインストゥルメンタル群
本作では、タイトル曲だけでなく、アルバム全体を通して「展開の積み上げ」が重要になっている。短い曲で要点をまとめるというより、ひとつのアイデアを伸ばしながら別のパートへ接続していく作りで、各曲の区別はありつつも、アルバム単位で聴くと連続した旅のように感じやすい。
特に、ギターの音色が切り替わる瞬間や、リズム隊が踏み込みを変える場面は、このバンドの持ち味がよく出るところ。派手な展開を連発するのではなく、同じテンションを保ちながら微細に変化していくため、じっくり聴くほど構成の組み立てが見えてくる。サイケデリック・ロックの中でも、浮遊感だけでなく演奏の輪郭がはっきりしているのが本作の特徴といえそうだ。
アーティストの流れの中で
My Brother The Windは、スウェーデン発のインストゥルメンタル・サイケ/スペースロックという文脈の中で語られやすい。2010年代前半には、北欧を中心に、70年代のジャム感や宇宙的な響きを再解釈するバンドがいくつも活動していたが、この作品もその流れの一角にある。とはいえ、単にジャンルの型に収まるのではなく、演奏の密度を押し出している点に個性がある。
2014年のオリジナル盤として出た本作は、My Brother The Windの作品群の中でも、バンドの持つ「曲を演奏で押し広げる」姿勢が分かりやすい一枚。サイケデリック・ロックやスペース・ロックの入口としても、あるいは北欧インスト勢の流れをたどる一枚としても、作品の輪郭はつかみやすい。音の重なり、反復、加速、余白。そのあたりを丁寧に味わうタイプのアルバムである。
トラックリスト
- A1 Prologue 1:04
- A2 Song Of Innocence Pt. 1 7:35
- A3 Song Of Innocence Pt. 2 4:04
- A4 Into The Cosmic Halo 6:40
- A5 Misty Mountainside 3:19
- B1 Garden Of Delights 11:59
- B2 Thomas Mera Gartz 2:14
- B3 Once There Was A Time When Time And Space Were One 3:18
- B4 Epilogue 4:19
動画
- Prologue
- Song of Innocence part 1
- Song of Innocence part 2
- Into The Cosmic Halo
- Misty Mountainside
- Garden Of Delights
- Thomas Mera Gartz
- Once There Was a Time When Time and Space Were One
- Epilogue
- MY BROTHER THE WIND "Song Of Innocence" Official Video (Free Electric Sound / The Laser's Edge)