Madlib - Shades Of Blue (2003)
Madlib 2003

Madlib - Shades Of Blue (2003)

Electronic Hip Hop Jazz Downtempo Jazzy Hip-Hop Instrumental

Madlib『Shades Of Blue』(2003)

Madlibの『Shades Of Blue』は、2003年にBlue Noteから出たリミックス/再解釈作品だ。ヒップホップのプロデューサーとして知られるMadlibが、Blue Noteのカタログにあるジャズ楽曲を素材にしながら、自分の手つきで組み替えたアルバムである。単なるサンプリング集ではなく、別人格名義のYesterdays New Quintet、Sound Directions、Joe McDuphrey Experienceといったプロジェクトを使い分け、演奏のやり直しまで含めて作り込んでいる点がこの作品の核になっている。

Blue Note公認の異色企画

Blue Noteはジャズ・レーベルとして長い歴史を持つが、その看板カタログを現代のビートメイカーに開いた企画として『Shades Of Blue』は重要な位置にある。発売は2003年6月24日。US盤としてCaroline Distribution経由で流通し、Blue Note Recordsの正式クレジットが入る。制作クレジットを見ると、Produced and arranged for Madlib Invazion、録音とミックスはロサンゼルスのBomb Shelter、マスタリングはBionic。ロケーションも含めて、ジャズの古典を現代の制作環境へ持ち込んだ作品としてまとまっている。

収録曲には、Wayne Shorterの「Footprints」、Horace Silverの「Song For My Father」、Donald Byrdの「Stepping Into Tomorrow」、Gene Harris(The Three Sounds)の「The Look Of Slim」を下敷きにした「Slim's Return」など、Blue Note史を象徴する曲が並ぶ。アルバム全体が、原曲のフレーズやコード感を残しつつ、Madlib流の間合いと質感で再構成されている。

聴きどころ: ビートの硬さより、再演の感触

この作品で目立つのは、ビートの主張よりも、演奏を組み直したときの手触りだ。Madlibはサンプリングを土台にしながら、自分で鍵盤や各種楽器を重ね、ジャズの断片を別の流れへ接続していく。結果として、ループが延々と続くタイプのビート盤よりも、曲ごとにバンドの編成が入れ替わるような感覚が強い。ジャズの引用が前面に出る場面でも、原曲の名残をそのまま見せるより、少し角度をずらした配置で聴かせる作りだ。

とくに「Slim's Return」のような曲は、元ネタの輪郭を知っていると、再解釈の方向が見えやすい。Madlibは素材を崩しすぎず、かといって原曲の再現にも寄せず、ビートと演奏の中間に置いている。アルバム全体もその姿勢で統一されていて、ヒップホップのプロデューサーがジャズに接近した作品でありながら、同時にジャズの側から聴いても成立する作りになっている。

Madlibの流れの中での位置

Madlibは1973年生まれのオークランド出身で、Lootpack、Quasimoto、『The Unseen』、そして『Yesterday's New Quintet』へと活動を広げてきた。この『Shades Of Blue』は、そうした動きの延長線上にある。特に『Yesterday's New Quintet』で見せた、自分ひとりで架空のジャズ・ユニットを組み立てる発想が、そのままBlue Note公認の企画に接続した形だ。

2003年という時期も重要で、同年にはJay DeeとのJaylib名義の活動などもあり、Madlibが制作面で最も多方面に動いていた時期と重なる。ヒップホップの文脈では、DJ PremierやJ Dillaと並べて語られることが多いが、『Shades Of Blue』ではその中でも、ジャズの歴史そのものに踏み込む姿勢がはっきり見える。

作品の印象と受け止められ方

アルバムは全編インストゥルメンタルで、ダウンテンポ寄りの曲調が中心だが、単調には寄らない。短いブリッジやインタールードの置き方も含めて、LPとしての流れが意識されている。裏ジャケットには曲のタイム表記が2種類あるという細かな違いもあり、盤ごとの情報を追う楽しみもある。

評価面では、AllMusicで高評価、Pitchforkでも好意的に扱われ、ジャズ・アルバム・チャートでも実績を残した。こうした反応は、ヒップホップのビート作品としてだけでなく、Blue Noteのジャズ作品群に対する現代的な応答として受け取られた結果でもある。ジャズの名曲を素材にしながら、そのまま懐古へ流れないところが、このアルバムの輪郭をはっきりさせている。

まとめ

『Shades Of Blue』は、Madlibが持つレコード収集家としての視点、ビートメイカーとしての編集感覚、そしてジャズへの強い敬意が、Blue Noteという歴史あるレーベルの上で交差した作品だ。2003年の時点でここまでジャズの原盤に近づきながら、ヒップホップの文法から離れきらない作りはかなり独特で、Madlibの作品群の中でも位置づけが見えやすい一枚になっている。Blue Noteの名曲群を、別の時代の手つきで再配置した記録として残るアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Introduction 0:32
  2. A2 Slim's Return 3:56
  3. A3 Distant Land 3:58
  4. A4 Mystic Bounce 3:56
  5. B1 Stormy 3:41
  6. B2 Blue Note Interlude 0:42
  7. B3 Please Set Me At Ease 5:02
  8. B4 Funky Blue Note 3:07
  9. B5 Alfred Lion Interlude 1:06
  10. C1 Stepping Into Tomorrow 7:36
  11. C2 Andrew Hill Break 1:06
  12. C3 Montara 5:51
  13. D1 Song For My Father 5:46
  14. D2 Footprints 4:58
  15. D3 Peace / Dolphin Dance 5:38
  16. D4 Outro 0:13

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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