Nujabes - Modal Soul (2005)
Nujabes 2005

Nujabes - Modal Soul (2005)

Electronic Hip Hop Jazz Downtempo Jazzy Hip-Hop Cool Jazz

Nujabes『Modal Soul』レビュー

Nujabesの『Modal Soul』は、2005年にオリジナル・リリースされたアルバムで、彼の代表作としてよく挙げられる1枚だ。日本のヒップホップ、ジャズ、エレクトロニックの交点にある作品で、いわゆるビート・アルバムの枠を超えて、曲ごとの流れや空気感まで含めて聴かれることが多い。Nujabesは東京・渋谷を拠点に活動し、自身のレーベルHyde Out Productionsを通して作品を発表してきたが、この作品でもその美学がはっきり出ている。

2020年盤として出たこのレコードは、オリジナル盤から年を経た再発で、当時の作品をアナログで改めて触れられる形になっている。音源の核は2005年のアルバムそのものだが、レコードという媒体で聴くと、ビートの粒立ちやサンプルの質感がより前に出る印象がある。Nujabesの作品は、CDや配信で聴いても成立するが、針を落としてA面から順に聴くと、曲間のつながりやアルバム全体の設計が見えやすい。

アルバム全体の位置づけ

『Modal Soul』は、Nujabesのディスコグラフィの中でも、作家性がかなり明確に出た作品として知られている。デビュー以降に積み上げてきたジャズ・サンプリングの手法、ローファイ寄りのビート感、そしてメロディの置き方が、ここではまとまりを持って展開されている。単発のインスト曲集というより、ひとつの長い流れを持ったアルバムとして聴かれることが多い内容だ。

同時代の日本のヒップホップの中でも、Nujabesはラップ中心の文脈だけでは捉えにくい存在だった。Pete RockやJ Dilla以降のビート感、あるいはジャズ・ラップの系譜と並べて語られることがあるが、『Modal Soul』ではその影響をそのままなぞるというより、東京の都市感覚と結びついた独自の整え方が前に出る。派手な展開で押すより、短いフレーズを重ねて曲を組み立てる作り方が印象に残る。

聴きどころ: 「Feather」

代表曲としてまず触れたいのが「Feather」だ。Five DeezのCise StarrとAkinによるラップをフィーチャーしたこの曲は、アルバムの中でも特に知られている1曲で、Nujabesの名前を広く印象づけた楽曲のひとつといえる。リズムは前に出すぎず、上物のサンプルとベースラインが自然に呼吸するように置かれていて、声がその上を滑る構図になっている。

この曲の面白さは、ラップとトラックの役割分担がはっきりしている点にある。ビートが主張しすぎないぶん、言葉の流れがよく通る一方で、細かい音の動きが耳に残る。Nujabesの曲はメロディが強いとされることがあるが、「Feather」では、そのメロディ性がラップのリズムとぶつからず、むしろ一体化している感じがある。アルバムの入口としても機能しやすい曲だ。

聴きどころ: 「Luv(sic) pt 3」

もうひとつ外せないのが「Luv(sic) pt 3」だ。Shing02との共作として知られる「Luv(sic)」シリーズの一部で、このアルバムの中でも感情の輪郭がはっきりした曲になっている。シリーズ全体は分割された形で展開されているが、この曲では、穏やかなビートの上に言葉が積み重なり、テーマの持続が強く感じられる。

シリーズ曲として聴くと、単独の1曲というより、Nujabesが長い時間をかけて築いた表現の途中経過のようにも聴こえる。音数は多くないのに、細部の配置で空気が変わるところがあり、フックの強さだけで記憶されるタイプの曲ではない。それでも耳に残るのは、トラックの温度感とShing02の語り口が、きっちり噛み合っているからだろう。『Modal Soul』の中でも、作品の芯に近い位置にある曲のひとつとして扱われやすい。

アルバムの聴感と流れ

実際に通して聴くと、このアルバムは1曲ごとの存在感と、全体の連なりの両方が意識されていることがわかる。速いテンポで畳みかける場面は少なく、ドラムは比較的抑制され、サンプルの切り方やコード感で進行していく曲が多い。そのため、聴き手の注意は派手な展開ではなく、音の余白やループの反復に向きやすい。

ジャズの引用が前面に出るといっても、単に古い音源を貼り合わせた印象とは少し違う。サンプルが持つ質感を軸にしながら、曲全体の流れを整える作業が丁寧で、結果として落ち着いた統一感が生まれている。DowntempoやCool Jazzの要素が並ぶ作品ではあるが、耳に入るのはジャンル名よりも、音が置かれる間合いのほうだ。

2020年盤としての意味

2020年盤は、オリジナルの2005年作をあらためてレコードで持てる点に意味がある。Nujabesは2010年に亡くなっており、その後も彼の作品は継続して聴かれ続けているが、『Modal Soul』はその中でも特に再評価というより定着に近い位置にある。初出から時間がたっても、曲の構造が古びにくく、ラップの有無にかかわらず聴けるアルバムとして残っている。

Hyde Out Productionsというレーベルの文脈で見ると、この作品はNujabes個人の作家性を示すだけでなく、当時の東京発インディペンデント・ヒップホップの一つの到達点としても見えてくる。派手な話題性より、音の積み方で印象を残すタイプのアルバム。『Modal Soul』は、その性格が最後までぶれない1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Feather 2:55
  2. A2 Ordinary Joe 5:07
  3. A3 Reflection Eternal 4:17
  4. A4 Luv (sic.) Pt3 5:36
  5. B1 Music Is Mine 4:20
  6. B2 Eclipse 3:34
  7. B3 The Sign 4:49
  8. B4 Thank You 4:09
  9. C1 World's End Rhapsody 5:41
  10. C2 Modal Soul 4:41
  11. C3 Flowers 3:59
  12. D1 Sea Of Cloud 3:01
  13. D2 Light On The Land 3:55
  14. D3 Horizon 7:20

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