Nirvana - Bleach (1989)
Nirvana 1989

Nirvana - Bleach (1989)

Rock Grunge

Nirvana『Bleach』(1989) レビュー

Nirvanaのデビュー・アルバム『Bleach』は、1989年にUSのSub Popから登場した作品で、のちに世界的な存在になるバンドの出発点としてよく知られている。アメリカ北西部、ワシントン州アバディーン出身の3人組が、シアトル周辺で育っていたグランジの空気をそのまま刻み込んだ一枚で、メジャー進出前のNirvanaの輪郭をはっきり示している。荒く鳴るギター、低く粘るベース、テンポを引きずるようなドラム、その上でKurt Cobainの声が前に出る構図がすでに完成している。

このアルバムは、後年の大きな成功を知ったうえで聴くと、かなり直接的な記録として受け止めやすい。まだポップな輪郭が強く整えられる前で、曲の多くが硬質なリフと反復で押してくる。とはいえ単に荒いだけではなく、旋律の置き方や音の抜き差しには、のちのNirvanaにつながる感覚がすでに見える。シアトル・グランジの初期を代表する作品として語られるのも自然な流れだろう。

バンドの位置づけと時代背景

Nirvanaは1987年に結成され、名称を変えながら1988年に現在の名義へ落ち着いた。『Bleach』はSub Popからの初の長編作品で、彼らにとって最初のアルバムというだけでなく、当時のインディー・ロックの文脈の中で存在感を作った重要作でもある。Sub Popはシアトルのローカルなレーベルから出発し、当時の地下シーンを外へ広げていった中心的な存在で、Nirvanaはその流れの中で育ったバンドだった。

同時代の比較対象としては、同じくSub Pop周辺のGreen RiverやMudhoney、あるいはより広い意味でのパンク/オルタナティヴ・ロックの流れがある。『Bleach』はその中でも、ヘヴィなギターと鈍い推進力を持ちながら、曲の芯にメロディを残している点が印象に残る。後の『Nevermind』ほど洗練されてはいないが、そのぶん当時の空気が濃い。

録音と編成について

この作品には、Chad ChanningとDale Croverの両方がドラムで参加している。Nirvanaのアルバムとしては珍しい構成で、時期の違うセッションが一枚にまとまっている形だ。さらに、ジャケット写真にはJason Evermanが写っているが、演奏には参加していない。このあたりも『Bleach』をめぐる事実関係としてよく知られている。

音像はSub Pop初期らしい粗さがあり、ギターの歪みは厚いが、各パートの役割は意外と明確だ。Kurt Cobainの歌は叫びとメロディの中間にあり、言葉を押し出すというより、フレーズの輪郭で引っ張るタイプ。実際に通して聴くと、音の勢いだけでなく、曲ごとにリズムの重心が少しずつ違うことが分かる。単調に流れないのがこの盤の強みだろう。

注目曲「About a Girl」

『Bleach』の中でも特に知られるのが「About a Girl」だ。アルバム全体の中では比較的メロディが前に出ていて、Nirvanaの別の側面を示している。のちにMTV Unpluggedでも取り上げられたことからも、この曲がバンドの代表曲のひとつとして扱われているのは自然だ。鋭いギター・ワークの中に、かなり素直な歌の流れがある。

この曲を聴くと、『Bleach』が単なるノイズ寄りの初期作ではないことが分かる。Cobainはここで、荒いサウンドの中にポップな感触を差し込んでいる。アルバムの他の曲と並べると、メロディをどこまで前に出せるかを探っているようにも聞こえる。後年のブレイクにつながる要素が、すでにこの時点で見えている。

注目曲「Blew」

タイトル曲ではないが、アルバムの冒頭を飾る「Blew」は、この作品の性格を端的に伝える一曲だ。低くうねるベースと引きずるようなリフが中心にあり、派手な展開よりも、同じ圧を保ちながら進む構成が印象に残る。Nirvanaの初期らしい重量感がはっきり出ている。

実際に聴くと、音の密度が高いわけではないのに、曲全体が重く感じられる。これはCobainのギターの置き方と、リズム隊の間合いの取り方によるところが大きい。シアトルの初期グランジに共通する乾いた質感を持ちながら、Nirvanaらしい引っかかりもある。アルバムの入口として、かなり分かりやすい役割を担っている。

注目曲「Negative Creep」

「Negative Creep」は、攻撃性の強い楽曲としてよく挙げられる。テンポの押し引きがはっきりしていて、Cobainのボーカルもかなり前のめりだ。ここではメロディの整いより、語感とリズムの衝突が前面に出る。Nirvanaの初期衝動をそのまま封じたような曲だ。

この曲を含むあたりで、『Bleach』が単なるデビュー作以上の意味を持つことが見えてくる。のちに巨大化するバンドの原型としてではなく、当時のローカル・シーンの中でどれだけ強い音を出せるか、その試行の記録として面白い。演奏の荒さも含めて、作品の輪郭を作っている。

アルバムとしての聴きどころ

『Bleach』は、後年のNirvanaを知る耳で聴くと、曲の素朴さと音の圧が同居していることに気づきやすい。ポップに寄り切らないぶん、ギター・バンドとしての体温がそのまま残っている。シングル曲としては「About a Girl」が特に目立つが、アルバム全体では、同じような速度感の中でも曲ごとに表情が少しずつ違う。

1989年の時点でここまでの完成度に達していたことは、後の展開を思うとかなり重要だ。『Bleach』は、Nirvanaが世界的なバンドになる前の姿を記録した作品であり、同時にシアトル・グランジの初期像を知るうえでも外せない一枚だと言える。

トラックリスト

  1. A1 Blew
  2. A2 Floyd The Barber
  3. A3 About A Girl
  4. A4 School
  5. A5 Love Buzz
  6. A6 Paper Cuts
  7. B1 Negative Creep
  8. B2 Scoff
  9. B3 Swap Meet
  10. B4 Mr. Moustache
  11. B5 Sifting

動画

Share
記事一覧に戻る
toast