Nirvana - In Utero (1993)
Nirvana『In Utero』(1993) レコード解説
Nirvanaの『In Utero』は、1993年にUSのDGCからリリースされた3作目のスタジオ・アルバムで、バンドの主要な到達点のひとつとして扱われる作品だ。アメリカ西海岸のオルタナティブ/グランジの流れを、メジャー市場のど真ん中まで押し広げた前作『Nevermind』のあとに出たこともあり、このアルバムは当時のNirvanaがどこへ向かうのかをはっきり示す内容になっている。売れ方よりも、演奏の生々しさや音の硬さを前に出した作品として語られることが多い。
作品の位置づけ
Nirvanaは1987年にワシントン州アバディーンで始まり、シアトル周辺のグランジ・シーンを代表する存在になった。『Nevermind』で一気に世界的な知名度を得たあとに制作された『In Utero』は、バンドにとって“次のヒット作”というより、バンド自身の輪郭を保つための作品という印象が強い。Kurt Cobain、Krist Novoselic、Dave Grohlという最終編成の3人を軸に、Pat Smearも加わった時期の空気がそのまま入っている。
制作はSteve Albiniが関わり、ミネソタ州キャノンフォールズのPachyderm Studiosで短期間に録音された。基本トラックはライヴに近い手触りで収められており、音の輪郭がはっきりしている。後にレーベル側の意向で一部曲が再ミックスされたが、全体としては前作よりも硬質で、演奏の圧が前に出るアルバムという印象になる。
レコード盤としての特徴
今回のUS盤はDGC-24607。1993年オリジナル期のリリースで、盤そのものも同年の初出にあたる。ジャケットには「Special Limited Edition Disc」と印字され、クリアでグリーンがかったヴァイナルが25,000枚限定で用意された。インナースリーブには歌詞と写真が入っており、コレクター向けの仕様としても目立つ。コピーによっては、バーコード上に「FOR PROMOTION ONLY Ownership Reserved Sale Is Unlawful」の金色スタンプが入るものもある。
この盤では、インナースリーブに「Suggested Bass And Treble Positions: B:+2, T:+5」といった表記も見られる。Runoutはエッチングで、TML部分のみスタンプとのことなので、当時のカッティングや製造の痕跡も含めて楽しめる一枚だ。US盤らしい、当時の流通仕様をそのまま残したリリースになっている。
収録曲と代表曲
『In Utero』を語るうえで外せないのが「Heart-Shaped Box」だ。アルバムの代表曲として広く知られ、シングルとしても強く印象を残した。曲の構造は比較的わかりやすいが、音の当たり方は鋭く、歌詞の内容も含めて『Nevermind』期のNirvanaとは違う方向を向いている。
そのほかにも、身体への嫌悪感や生と死、妊娠・出産、メディアへの視線といった要素が全体を通して現れる。タイトルの『In Utero』も、そのテーマを端的に示すものとして機能している。曲単位で見ると、メロディの強さとノイズ感のバランスがはっきりしていて、パンク寄りの粗さとポップなフックが同居しているのがわかる。
当時の反応とその後
発売当時は、前作の大成功を受けていたぶん、反応は一枚岩ではなかった。聴きやすさを期待した層には戸惑いがあった一方、荒々しさや直接性を評価する受け止め方もあった。実際、Nirvanaがここでやっているのは、メジャー成功に合わせて音を整えることではなく、むしろ整いすぎたものを壊しにいくような姿勢に近い。
チャート面では、1993年9月に英米で1位を記録している。英国では初登場1位、米国でもBillboard 200で初登場1位となり、Nirvanaにとって全米アルバム・チャート首位作になった。商業的には大きな成功を収めながら、内容はかなり切り詰められている。この落差も『In Utero』らしさのひとつだろう。
グランジの文脈の中で
同時代のグランジやオルタナティブ・ロックの中でも、『In Utero』は特に音の生々しさが記憶に残る作品だ。Pearl Jamのように大きな会場へ向かうバンドもいれば、Sonic Youthのように実験性を保ちながら進むバンドもいたが、Nirvanaはそのどちらとも少し違う場所にいた。『In Utero』では、その立ち位置がかなりはっきりしている。
結果としてこのアルバムは、Nirvanaの代表作のひとつとして定着した。Kurt Cobainの死によってバンドは終わるが、その少し前に出たこの作品は、商業的成功の後に残ったバンドの意思をそのまま記録したアルバムとして読める。音の荒さ、歌詞の直接性、そして短い録音期間の緊張感。1993年という年の空気が、かなりそのまま入った一枚だ。
トラックリスト
- A1 Serve The Servants 3:34
- A2 Scentless Apprentice 3:47
- A3 Heart-Shaped Box 4:39
- A4 Rape Me 2:49
- A5 Frances Farmer Will Have Her Revenge On Seattle 4:07
- A6 Dumb 2:29
- B1 Very Ape 1:55
- B2 Milk It 3:52
- B3 Pennyroyal Tea 3:36
- B4 Radio Friendly Unit Shifter 4:49
- B5 Tourette's 1:33
- B6 All Apologies 3:50