Ornette Coleman - The Shape Of Jazz To Come (1959)
Ornette Coleman『The Shape Of Jazz To Come』について
オーネット・コールマンの『The Shape Of Jazz To Come』は、1959年にアトランティックから出た重要作で、コールマン自身の転機をはっきり示すアルバムである。録音は1959年5月22日、ロサンゼルスのRadio Recorders。ここでの編成は、ドン・チェリーのポケット・トランペット、チャーリー・ヘイデンのベース、ビリー・ヒギンズのドラムという、のちに「クラシック・カルテット」と呼ばれる顔ぶれの最初期の記録になる。ピアノを置かない構成、そしてコールマンが白いプラスチック製サックスを手にしていたことも、この時代のジャズとしてはかなり異例の光景だった。
この作品は、オーネット・コールマンの名を一気に広めただけでなく、後にフリー・ジャズと呼ばれる流れの出発点として扱われてきた。タイトル曲というより、アルバム全体が当時のジャズの前提を揺さぶる内容で、既存のコード進行や定型的なフォームに強く依存しない演奏が前面に出る。1959年の時点で、こうした方法はかなり先鋭的だった。
収録曲と聴きどころ
冒頭の「Lonely Woman」は、このアルバムを語るうえで外せない代表曲である。コールマンは、ミュージシャンになる前に見た絵画の女性像から着想を得たと語っており、曲名のとおり、孤独感をそのまま音にしたような印象が残る。実際に聴くと、テーマの輪郭ははっきりしているのに、伴奏の動きが予測しにくく、旋律がふっと別の方向へ流れていく。ここでの演奏は、メロディの強さと自由な展開が同時に立っている。
「Eventually」「Peace」「Focus on Sanity」なども、どれも短いモチーフを起点にしながら、ソロが決められた和声の枠に収まりきらない。チャーリー・ヘイデンのベースは、単なる土台ではなく、対話相手のように動く。ビリー・ヒギンズのドラムも、拍をただ刻むより、フレーズの流れに応じて反応する場面が目立つ。ドン・チェリーのポケット・トランペットは音域は小ぶりでも、コールマンのアルトとぶつかり合わず、むしろ隙間を作る役割を担っている。
当時のジャズの中での位置
1959年のジャズ界では、ハード・バップがすでに成熟し、モード・ジャズも視野に入りつつあった時期である。そのなかでオーネット・コールマンは、ビバップ以降の語法をさらに押し進めるのではなく、前提そのものを組み替えようとした。マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンが新しい方向を探っていた同時代にあっても、コールマンの方法はかなり独自で、比較対象として語られやすい存在だった。
発表直後の反応も強かった。1959年11月のニューヨーク、Five Spotでのカルテット公演は大きな話題を呼び、賛否がはっきり割れた。レナード・バーンスタインやヴィルジル・トムソンが才能を認めた一方で、拒否反応も少なくなかった。こうした論争込みで、このアルバムは単なる一枚のレコード以上の意味を持つようになった。
オリジナル盤の特徴
この1959年盤は、アトランティックのUS盤として出たオリジナルの初出で、センターラベルはグリーン、ブルー、ブラックの“bullseye”デザイン。裏ジャケットには「Atlantic Recording Corporation, 157 West 57 Street, New York 19, New York」と記されている。なお、カバーとセンターラベルでカタログ番号が異なる仕様になっているのも、この時代のリリースらしい点である。
アトランティックは当時、録音技術やステレオ展開でも先進的な姿勢を見せていたレーベルで、そうした環境がこの作品の出し方とも噛み合っている。もっとも、『The Shape Of Jazz To Come』の核心は音そのものにある。整った構成よりも、演奏者同士の反応、音の置き方、フレーズの飛び方が前に出る作りで、ここから先のオーネット・コールマンの仕事、さらに後のフリー・ジャズや前衛ジャズの広がりへとつながっていく。
まとめ
『The Shape Of Jazz To Come』は、オーネット・コールマンにとって決定的な一作であり、1959年という年のジャズの変化を象徴するアルバムでもある。代表曲「Lonely Woman」を含み、クラシック・カルテットの初期形が記録されている点でも重要性は高い。発売当時から議論を呼び、のちのジャズの聴かれ方にも影響を残した作品として、今もなお語られ続けている。
トラックリスト
- A1 Lonely Woman 4:59
- A2 Eventually 4:20
- A3 Peace 9:04
- B1 Focus On Sanity 6:50
- B2 Congeniality 6:41
- B3 Chronology 6:05