Rubber Tea - Infusion (2020)
Rubber Tea『Infusion』について
Rubber Teaは、ドイツ・ブレーメンで2017年に結成された若いメンバーによるプログレッシブ・ロック・バンドだ。2020年に発表された『Infusion』は、そのデビュー作にあたる作品で、アートロック寄りの感触とプログレッシブ・ロックの構成感を前面に出したアルバムとして受け止められている。Sireena Recordsからのリリースで、シングルジャケットに2ページのカラーインサート、ブラックのLPスリーブという装丁。まず見た目からして、派手さよりも作品全体をしっかり届けるための作りになっている。
バンドはアルバム制作以前からクラブやフェスで演奏経験を積んでいたと紹介されており、その積み重ねが初作のまとまりに結びついている印象がある。実際、当時の評判はかなり好意的で、独語圏の媒体では「有望な新星」「驚くほど成熟したデビュー作」といった受け止め方が見られた。デビュー盤でありながら、単に若さを押し出すのではなく、曲の展開や音色の選び方に落ち着きがあるところが、この作品の大きな特徴だろう。
音の中心にあるもの
『Infusion』でまず目立つのは、女性ボーカルのVanessa Grossの歌声だ。レビューでも繰り返し触れられている通り、歌が楽曲の中心にしっかり置かれていて、複雑なアンサンブルの中でも輪郭が見えやすい。プログレ作品は演奏が前に出ると硬くなりがちだが、このアルバムは歌ものとしての聴きやすさを保ちながら、曲の中で細かく景色を変えていく作りになっている。
編成面でも情報量が多い。メロトロン、ビブラフォン、サックスなどが加わり、ギター、ベース、ドラムだけでは作れない色が曲ごとに差し込まれる。レビューではジャジーな響きとプログレ的な複雑さが両立している点が評価されており、単に技巧を見せるための音ではなく、曲の流れの中で自然に機能していることが伝わってくる。Canterbury系の気配や、Crimsonを思わせる陰影、Renaissance的な女性声の印象に触れる評もあり、70年代プログレの文脈を踏まえつつ、現代の録音感で整理した作品という見方ができそうだ。
注目曲として聴こえる部分
楽曲名の個別情報はここでは多くは追えないが、アルバム全体の印象からすると、目立つのは「曲の中で場面が切り替わる瞬間」だ。静かな導入から一気にリズムが立ち上がる箇所、鍵盤と管楽器が前に出て室内楽的な密度を作る箇所、そこから再び歌に戻る流れなど、組曲的な発想がアルバムの随所に見える。聴いている側は、演奏の細部を追うだけでなく、曲がどこへ向かうかを自然に追いかけることになる。
とくにVanessa Grossの歌が乗る場面では、音数の多い編成でも焦点がぶれにくい。演奏の情報量は多いのに、歌が埋もれず、旋律の線がはっきり残る。そのため、複雑な構成を持ちながらも、アルバム全体は「難解さ」より「流れの良さ」で印象に残るタイプに感じられる。レビューで「色彩豊かな音のキャンバス」と表現されているのも、この聴感に近い。
制作背景と作品の位置づけ
制作はKlangstubeスタジオで行われ、FEURICHのピアノが使われたことが伝えられている。ピアノの存在感が前に出る場面では、バンドサウンドの中に木質の響きや室内的な空気が加わり、ロックの推進力だけではない質感が生まれている。さらに、コロナ禍で活動が制限される中でも、2020年前半にはカバー曲を“Quarantina-Band”として公開するなど、バンドが歩みを止めていなかった点も興味深い。『Infusion』は、そうした状況の中で世に出た初作として読むと、なおさら意味が見えてくる。
リリース元のSireena Recordsは、失われていた音源や品切れになっていた作品を丁寧に届ける姿勢で知られる独立レーベルで、原音源が使える場合はオリジナルテープを用いる方針も掲げている。Rubber Teaのような新しいバンドの作品がそこから出たことは、単に新譜としてだけでなく、長く聴かれることを意識した作りとしても受け取れる。派手なヒット作というより、内容で評価を広げていくタイプのデビュー盤という位置づけだろう。
総括
『Infusion』は、ブレーメンの若い5人組によるデビュー作でありながら、演奏の整理、音色の選択、歌の置き方に落ち着きがある作品だ。ジャジーな要素、プログレッシブ・ロックの展開力、女性ボーカルを軸にした聴きやすさが、無理なく一枚の中でつながっている。70年代プログレの影を参照しつつ、現代のバンドとしての輪郭もはっきりしているあたりに、このアルバムの面白さがある。評価面でも好意的に受け止められた一枚として、Rubber Teaの出発点を示す作品になっている。
トラックリスト
- A1 On Misty Mountains 6:02
- A2 Downstream 1:16
- A3 In Weeping Waters 4:31
- A4 The Traitor 5:05
- B1 Plastic Scream 4:41
- B2 Storm Glass 4:27
- B3 The Drought 5:24
- B4 American Dream 6:12