Soul II Soul - Club Classics Vol. One (1989)
Soul II Soul 1989

Soul II Soul - Club Classics Vol. One (1989)

Electronic Pop Hip Hop Jazz Funk / Soul Reggae Downtempo Soul Deep House Acid Jazz

Soul II Soul『Club Classics Vol. One』——UKソウル/ダンス・ミュージックの転換点

Soul II Soulのデビュー・アルバム『Club Classics Vol. One』は、1989年にUKの10 Recordsから登場した作品。DJ Jazzie Bを中心に、Nellee HooperやDaddae Harveyらが関わるこの集団は、80年代後半のクラブ・シーンとR&Bの感覚をつなぎ直した存在として語られることが多い。フィリー・ソウル、ディスコ、レゲエ、80年代ヒップホップの要素を取り込みながら、当時のUKダンス・ミュージックの中でもかなり独自の位置にいたアルバムだ。

この作品は、のちに北米市場では『Keep On Movin'』というタイトルで知られるが、UK盤では『Club Classics Vol. One』。収録曲の並びや短いつなぎ方、アカペラやダブの挿入など、単なるヒット曲集ではなく、クラブでの鳴り方を意識した構成になっている。実際、通して聴くと曲ごとの輪郭ははっきりしているのに、全体としては1本の流れを保っている印象が強い。

アルバム全体の手触り

このアルバムでまず目立つのは、打ち込みの硬さだけに寄らないリズムの作り方。ベースのうねり、拍の置き方、コーラスの重ね方が前に出ていて、いわゆるアシッド・ジャズやディープ・ハウスとも接点を持ちながら、R&Bの歌心が中心に残っている。クラブ向けの機能性がありつつ、ソウル・アルバムとしてのまとまりもあるあたりが面白いところ。

録音はBritannia Row、Addis Ababa、Lillie Yard、Westside Studiosなどで行われており、曲ごとに質感の違いがある。印刷上の表記ゆれや、アカペラとビートを重ねた構成など、作品としての作り込みも細かい。特にB面の流れは、単曲の強さよりも、並びで聴いたときの効き方が印象に残る。

「Keep On Movin'」——このアルバムを象徴する代表曲

本作を語るなら、やはり「Keep On Movin'」は外しにくい。Caron Wheelerの歌声を前面に出したこの曲は、Soul II Soulの方向性を一気に広く知らしめた1曲で、1989年3月にはUKチャートでトップ10入りしている。力で押すのではなく、リズムの反復と声の配置で引っ張る作りで、クラブでも家庭でも鳴るタイプのヒット曲という感じがある。

聴いていて残るのは、歌の熱量よりも、落ち着いた推進力。派手な展開は少ないのに、ビートとベース、コーラスの組み合わせで自然に前へ進む。Soul II Soulが当時のUKで新しいR&Bの形を示した、と言われるとき、その核にあるのがこの曲だと思える。

「Back to Life」——アルバムの外へ広がった決定打

夏に発表された「Back to Life」も、Caron Wheelerをフィーチャーした重要曲。こちらは全英1位を記録し、Soul II Soulを一段上の存在へ押し上げた。アルバムの中でもこの曲は特に知られていて、クラブ由来のグルーヴを保ちながら、ポップ・ソングとしての輪郭がかなり明確だ。

注目したいのは、歌が前に出ていながら、伴奏が決して薄くならない点。ベースライン、打ち込み、コーラスの層がしっかり残っていて、ヒット曲でありながらアルバム全体の美学から外れていない。B面には「Back to life, Accapella」としてアカペラも収録されており、声そのものの存在感を別角度で確認できる構成になっている。

「Fairplay」「Feel Free」「Holdin' On Bambelela」などの流れ

初期シングルの「Fairplay」「Feel Free」は、このグループがクラブやプレスの注目を集め始めた入口にあたる曲。アルバムではその延長線上にある楽曲が並び、ソウルとダンスの中間にある感触がはっきり出ている。特に「Feelin' Free (Live Rap)」のような曲は、ラップを前景化しつつも、当時のUKらしい軽さと重さのバランスを保っている。

「Holdin' On Bambelela」は、タイトル表記の揺れも含めて印象に残る1曲。反復するフレーズの強さがあり、アルバム中でもグルーヴの芯を担う。Soul II Soulの楽曲は、メロディを大きく張るというより、声やリフを積み重ねて中毒性を作る場面が多く、この曲もその性格がよく出ている。

同時代の文脈と、この作品の位置づけ

1989年のUKでは、クラブ文化とブラック・ミュージックの接点が急速に広がっていた時期で、Soul II Soulはその中心にいた存在のひとつ。アシッド・ジャズ周辺の動きや、ハウス、ヒップホップ、レゲエの交差点にある音楽として、このアルバムはよく参照される。単に「踊れるソウル」ではなく、UKの都市的な感覚を伴ったR&B作品として読めるのが大きい。

その後の展開を見ると、本作はSoul II Soulの出発点としてだけでなく、彼らの美学を最も明確に提示した記録でもある。続く『Vol. 2: 1990 — A New Decade』が全英1位になる流れを考えても、このデビュー作で示されたサウンドと構成の完成度は重要だ。ヒット曲の強さと、アルバムとしての流れの両方が残る1枚として、今なお参照されやすい作品だと言える。

盤としてのポイント

UK盤のこのオリジナルは、10 Recordsのカタログ番号DIX 82で、プリント入りのピクチャー/クレジット内袋付き。裏ジャケットに「Made in England」ステッカーが貼られた個体もあるようだ。表記面では、曲名や尺の記載にいくつか揺れがあり、B4とB5がアカペラからそのままつながる構成も面白い。アルバムを作品として聴かせるだけでなく、クラブでの使用感まで含めて設計された盤面になっている。

Soul II Soulの『Club Classics Vol. One』は、1989年という年のUKブラック・ミュージックの空気を、そのままパッケージしたようなアルバムではない。むしろ、クラブ、ソウル、ヒップホップ、レゲエの要素を整理しながら、ひとつの洗練された流れにまとめた作品。代表曲の強さだけでなく、アルバム全体の組み方にこそ、このグループの個性がよく出ている。

トラックリスト

  1. A1 Keep On Movin' 6:00
  2. A2 Fairplay 3:49
  3. A3 Holdin' On (Bambelela) 3:50
  4. A4 Feeling Free (Live Rap) 4:13
  5. A5 African Dance 6:00
  6. B1 Dance 3:40
  7. B2 Feel Free 5:00
  8. B3 Happiness (Dub) 5:30
  9. B4 Back To Life (Accapella) 3:12
  10. B5 Jazzie's Groove 3:12

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