Massive Attack - Mezzanine (1998)
Massive Attack『Mezzanine』について
Massive Attackの3作目にあたる『Mezzanine』は、1998年に発表された作品で、グループの存在感を大きく押し広げた1枚としてよく語られる。Bristol出身のコラボレーション・ユニットという出自を持ちながら、この時期のMassive Attackは、単なる「ブリストル・サウンド」の代表格という枠に収まらず、電子音楽の中でもかなり独自の位置を占めるようになっていく。低音の圧、間の取り方、音の重なり方がはっきりしていて、アルバム全体に張りつめた空気が通っている。
本作のオリジナルは1998年リリース。レーベルはCircaで、ヨーロッパ盤として出ている。Massive Attackにとっては、前作までの流れを引き継ぎつつ、より暗く、より密度の高い方向へ進んだ時期の記録という印象が強い。メンバーにはRobert Del Naja、Grant Marshall、Andrew Vowles、Adrian Thawsがクレジットされている。いわゆるトリップホップの文脈で語られることが多いが、この作品はその枠内にとどまらず、LeftfieldやDowntempoの要素を含みながら、かなり緻密に組み立てられたアルバムになっている。
作品全体の印象
『Mezzanine』を通して聴くと、最初に耳に残るのは音の「厚み」よりも、むしろ音の置き方の慎重さかもしれない。リズムは前に出すぎず、ギターや打ち込み、ベース、サンプルが少しずつ輪郭を見せる作りで、曲ごとの温度差はあるのに、アルバム全体では一つの閉じた空間にまとまっている。聴感としては、クラブの高揚感よりも、夜の室内で音が壁に反射していくような感覚が強い。
Massive Attackの作品の中でも、『Mezzanine』は特に「完成されたアルバム」という印象を受けやすい。曲単体でも成立するが、並びで聴くと緊張感の持続がはっきりしていて、途中で空気が切り替わる場面も含めて構成が見える。前後の時代のエレクトロニック・ミュージック、たとえばPortisheadやTrickyの作品と比較しても、サウンドの重心が低く、ロック的な質感も取り込んでいる点が特徴的だ。
注目曲「Angel」
代表曲としてまず挙がるのが「Angel」。ゆっくりと押し寄せるようなベースラインと、徐々に緊張を高める展開が印象に残る。曲が始まってからすぐに盛り上がるのではなく、少しずつ圧が増していく構造で、Massive Attackらしい“待たせ方”がよく出ている。派手なフックで引っ張るというより、音の層が増えることで曲の輪郭が見えてくるタイプの一曲。
この曲はアルバムの中でも特に知名度が高く、後年のMassive Attack像を語る際にも外しにくい存在だろう。リズムの粘りと、音が沈み込んでいくような感触が強く、聴き終えたあとにも低音の残響が残る。単独で聴いても存在感があるが、アルバムの流れの中では、作品全体の重たい空気を決定づける役割を担っている。
注目曲「Teardrop」
もう一つの代表曲が「Teardrop」。こちらは『Mezzanine』の中でも特にメロディの輪郭がはっきりしていて、アルバムの中核を担う曲として知られている。打ち込みの細かな動きと、ボーカルの線の細さが重なり、冷たさと親密さが同居するような感触がある。ビートが前面に出るというより、音の隙間に感情が置かれていくような作り。
この曲は、Massive Attackの中でも比較的広く知られた一曲で、アルバムの入口としても機能しやすい。とはいえ、ただ聴きやすいだけではなく、全体のサウンドの中ではかなり繊細な位置にある。『Mezzanine』が持つ重さの中で、メロディがここまで前に出る場面は貴重で、作品の印象を単調にしない役割も果たしている。
同時代の文脈の中で
1990年代後半のイギリスの電子音楽を見渡すと、Massive AttackはPortisheadやTrickyと並んで語られることが多い。だが『Mezzanine』は、その中でも特にロックの質感を強く取り込んでいる点が目立つ。ギターの扱い方や音の攻撃性には、当時のオルタナティヴ・ロックにも通じる部分があり、電子音楽とバンド・サウンドの境界をまたぐ作りになっている。
その一方で、曲の進行はあくまでMassive Attack流で、短いフレーズの反復や、空間の使い方が重要になっている。派手な展開を連続させるのではなく、同じ場所をぐるりと回りながら少しずつ景色を変えるような進み方。ここがこの作品の強さで、90年代のトリップホップが持っていた“夜の音楽”というイメージを、より硬質な形で結晶化させた1枚とも受け取れる。
まとめ
『Mezzanine』は、Massive Attackのディスコグラフィの中でも特に輪郭がはっきりしたアルバムだ。1998年という時点で、トリップホップという言葉がすでに広く使われていた中、その言葉だけでは収まりきらない音作りを提示している。代表曲「Angel」「Teardrop」を含め、低音、間、緊張感の置き方が一貫していて、アルバム単位での完成度が高い。
Massive Attackを初めて追うときの基準点としても、1990年代後半の電子音楽を振り返る作品としても、かなり重要な位置づけにある。派手さよりも構築感、即効性よりも持続する圧。そうした要素が、今なおこの作品を印象深くしている。
トラックリスト
- A1 Angel 6:18
- A2 Risingson 4:58
- A3 Teardrop 5:29
- B1 Inertia Creeps 5:56
- B2 Exchange 4:11
- B3 Dissolved Girl 6:07
- C1 Man Next Door 5:55
- C2 Black Milk 6:20
- C3 Mezzanine 5:54
- D1 Group Four 8:13
- D2 (Exchange) 4:08
動画
- Massive Attack - Angel
- Massive Attack - Teardrop (Official Video)
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