Tangerine Dream - Tangram (1980)
Tangerine Dream 1980

Tangerine Dream - Tangram (1980)

Electronic Ambient New Age

Tangerine Dream『Tangram』(1980)

1980年に登場した『Tangram』は、Tangerine Dreamが1970年代後半の大きな転換を経て、80年代の新しい輪郭を示した作品だ。バンド名を聞いてまず思い浮かぶ、長大なシーケンスと宇宙的な持続感はそのままに、ここでは曲のまとまり方や音の整理が一段と明確になっている。ベルリン・スクールの中心的存在として知られる彼らの歩みの中でも、この時期はエドガー・フローゼ、クリストファー・フランケ、そして新加入のヨハネス・シュモーリングという編成が軸になった時代で、以後の80年代サウンドへつながる位置づけにある。

本作の日本盤はVirginからのリリースで、型番はVIP-6957。1980年当時のVirginらしい時代感を持つ一枚で、日本盤として流通したことで、国内のエレクトロニック/プログレッシブ系リスナーにも届きやすい形になっていた。Tangerine Dreamは70年代の『Phaedra』『Rubycon』『Stratosfear』などでシンセサイザー主体のロックを広く知らしめたが、『Tangram』ではその流れを保ちながら、より端正に組み立てた印象が強い。

作品の位置づけ

『Tangram』は、1978年の『Cyclone』を経た後の編成で作られたアルバムとして見るとわかりやすい。『Cyclone』では歌や木管を取り入れた変化があったが、『Tangram』ではそうした要素をいったん整理し、シーケンサーとキーボードの推進力を中心に据えている。結果として、70年代中期の漂うような長尺構成と、80年代初頭らしい輪郭のはっきりした音像が同居する作品になっている。

同時代の電子音楽やクラウトロック周辺と比べても、Tangerine Dreamの特徴は、リズムを機械的に積み上げながら、旋律を前へ押し出す設計にある。クラフトワークのようなミニマルな規律とは少し違い、ここでは曲の内部で音が流れ、展開し、まとまっていく。その感触が『Tangram』ではよく出ている。

収録曲の流れと聴きどころ

アルバムは2部構成に近い組み立てで、前半の「Tangram Set 1」「Tangram Set 2」が大きな柱になる。どちらも単独のメロディを強く押し出すというより、反復するフレーズと和音の移り変わりで時間を進めていくタイプだ。シンセの音色は冷たすぎず、かといってロック的な熱量に寄りすぎもしない。淡々と回るシーケンスの上で、音の層が少しずつ増減していく構造がはっきりしている。

「Tangram Set 1」は、アルバムの入口として機能する曲だ。低めのパルスと上モノの旋律が噛み合い、一定の速度感を保ちながら前進していく。聴いていると、フレーズの反復が単調に落ち着くのではなく、微細な音色の変化で印象が更新される。Tangerine Dreamらしい“動いているのに同じ場所にいるような感覚”が、この曲では比較的明瞭に表れている。

「Tangram Set 2」は、前曲よりも少し開けた空間を感じさせる。音の重なり方が整理されていて、フレーズの切り替えも見通しがよい。ここでは、後の80年代作品に通じる、メロディの明快さがすでに見え始めている。派手な展開で押し切るのではなく、一定のテンポの中で音を置いていく構成が印象に残る。

後半の「Tangram Part I」「Tangram Part II」は、前半の組曲的な流れを受けつつ、より短いスパンで聴けるまとまりになっている。特に「Tangram Part I」では、電子音のレイヤーがやや密になり、アルバム全体の中でも推進力が強い。反対に「Tangram Part II」では、余白を残した進行が目立ち、終盤に向けて音が収束していく感じがある。全体として、アルバムは大きく膨らませるというより、形を整えながら進む構成だ。

実際に聴くと見えてくること

この作品を通して聴くと、音の配置がかなり丁寧だと感じやすい。シンセの主旋律、シーケンス、持続音、リズム要素が、それぞれ前に出すぎず、でも埋もれもしない。ヘッドホンで聴くと、左右の広がりや音色の切り替えがわかりやすく、同じフレーズの反復でも飽きにくい作りになっている。派手な見せ場を連発するタイプではないが、曲が進むにつれて輪郭が少しずつ変わる、その積み重ねが聴きどころになっている。

また、『Tangram』はTangerine Dreamの中では、70年代後半の試行錯誤と、80年代の安定した作法のあいだにある作品として捉えやすい。大作主義の余韻を残しつつ、より整理された電子音楽へ向かう途中の一枚。ベルリン・スクールの文脈で見ても、シーケンサー主体の構築美を保ちながら、聴感上のまとまりを重視している点が印象的だ。

まとめ

『Tangram』は、Tangerine Dreamが1980年という時点で持っていた電子音楽の手法を、無理なく整理して提示したアルバムだ。Virgin期の流れの中でも、過去の代表作と80年代以降の作品をつなぐ役割を担っているように見える。大きな転換を派手に示すというより、既に確立していた語法を、より明確な形で並べた一枚という印象が強い。

トラックリスト

  1. A Tangram Set 1
  2. B Tangram Set 2

動画

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