Vinyl Record Reviews
Yesは、イングランド出身のロック・バンドだ。プログレッシブ・ロック、アート・ロック、シンフォニックな要素を取り入れたサウンドで知られ、世界的な成功を収めた。長尺の楽曲、神秘性のある歌詞、凝ったアルバム・アート、そしてライブのステージ演出まで含めて、バンドの作風を形づくってきた。
バンドの始まりは1968年。ロンドンのソーホーにあったナイトクラブ「La Chasse」で、ジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアが出会い、ボーカル・ハーモニーへの共通の関心をきっかけに意気投合した。そこにピーター・バンクス、トニー・ケイ、ビル・ブルーフォードが加わり、Yesが結成された。
初期の編成には、その後の時代を代表するメンバーが次々と関わっていく。リック・ウェイクマン、パトリック・モラーツ、スティーヴ・ハウ、トレヴァー・ラビン、エディ・ジョブソン、ジョフ・ダウンズ、ビリー・シャーウッドなど、在籍歴のある演奏者は多い。現在の編成は、ジョン・デイヴィソン、ビリー・シャーウッド、スティーヴ・ハウ、ジョフ・ダウンズ、ジェイ・シェレンだ。
Yesの音楽は、ロックを土台にしながら、複雑な構成や演奏展開を取り入れている。曲が長くなる傾向があり、パートごとの切り替わりも多い。ギター、ベース、キーボード、ドラムがそれぞれ前に出る場面があり、アンサンブルの組み立てがはっきりしている。
また、ボーカル・ハーモニーも重要な要素だ。結成のきっかけがそこにあったこともあり、複数声部の重なりはバンドの初期から軸になっている。歌詞は神秘的な題材を扱うことが多く、音だけでなく言葉の面でも独自性を持っている。
1971年のアルバム『Fragile』以降、Yesはイラストレーターのロジャー・ディーンとのコラボレーションを始めた。幻想的な風景を描く彼のアートは、アルバム・ジャケットやステージデザインに使われ、Yesの見た目の印象を決定づけた。音楽だけでなく、作品全体のビジュアルも含めて受け止められてきたバンドだ。
1983年のアルバム『90125』では、それ以前のプログレッシブ色の強い作風から、ラジオ向けのポップな方向へ大きく寄った。そこからのシングル「Owner Of A Lonely Heart」は、Billboard Hot 100でバンド唯一の1位を記録している。Yesの中でも、最も広い層に届いた楽曲として知られている。
Yesは、プログレッシブ・ロックの先駆的な存在として扱われている。長い楽曲構成、演奏の複雑さ、アルバム単位での世界観づくり、そしてステージ演出まで含めた総合的な表現は、後のプログレ系バンドに影響を与えてきた。ロックの中で、演奏技術と作品の構成を強く意識する流れを広げたバンドのひとつとして見られている。
2017年4月にはロックの殿堂入りを果たした。ただし、長くバンドを支えたクリス・スクワイアは2015年に亡くなっており、その栄誉を見ることはできなかった。
Yesを初めて聴くなら、『Fragile』や『90125』から入ると、バンドの幅がつかみやすい。前者では初期のプログレ的な組み立てとロジャー・ディーンのビジュアルが結びつき、後者では80年代のポップ寄りの変化がはっきり出ている。どちらも、Yesというバンドが時期によって表情を変えながら活動してきたことがわかる作品だ。