Yes

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Yes

Yesとは

Yes(イエス)は、1968年にロンドンで結成されたイギリスのプログレッシブ・ロック・バンドだ。ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、ジェネシス、EL&Pと並び「プログレッシブ・ロック5大バンド」の一角に数えられ、卓越した超絶技巧のアンサンブル、変拍子を駆使した長大で劇的な組曲構成、ジョン・アンダーソンの高潔なハイトーン・ヴォーカルと神秘主義的な詩情、そしてロジャー・ディーンの幻想的なアートワークによってロック史に燦然と輝く金字塔を打ち立てた。1970年代の『危機(Close to the Edge)』をはじめとするシンフォニック・ロックの極致から、1980年代の「Owner of a Lonely Heart(ロンリー・ハート)」による世界的な全米No.1ヒットへの劇的な変貌に至るまで、半世紀以上にわたり進化を続け、2017年にはロックの殿堂入りを果たした。

結成と初期の模索

バンドの創設は、ロンドンのソーホーにあったナイトクラブ「ラ・シャス」で、ヴォーカリストのジョン・アンダーソン(Jon Anderson)とベーシストのクリス・スクワイア(Chris Squire)が出会ったことに始まる。ビートルズやサイモン&ガーファンクルに触発された緻密なヴォーカル・ハーモニーと、ロックの力強さを融合させる構想で意気投合した2人は、ギタリストのピーター・バンクス、キーボードのトニー・ケイ、ジャズ出身のドラマーであるビル・ブルーフォードを招集。前向きで力強い響きを持つ「Yes」と名付けられた。

1969年にデビュー作『Yes』、1970年にはオーケストラを大胆に導入した第2作『Time and a Word(時間と言葉)』を発表した。しかしオーケストラとの共演やアレンジの方向性をめぐって対立が生じ、ピーター・バンクスがバンドを去ることとなった。

黄金期の幕開けと『危機』の頂点

1970年、後任ギタリストとしてスティーヴ・ハウ(Steve Howe)が加入したことで、バンドの表現力は飛躍的に拡張された。1971年初頭の第3作『The Yes Album』では、ハウのクラシック、カントリー、フラメンコを融合したギター・プレイと「Starship Trooper」「Yours Is No Disgrace」などの長尺曲が結実し、全英4位を記録する大ブレイクを果たした。

同年、メロトロンやシンセサイザーの導入に消極的だったトニー・ケイに代わり、ストローヴス出身のクラシック鍵盤の奇才リック・ウェイクマン(Rick Wakeman)が加入。アンダーソン、ハウ、スクワイア、ウェイクマン、ブルーフォードという「クラシック・ラインナップ(黄金期編成)」が確立された。1971年末の第4作『Fragile(こわれもの)』は全英7位・全米4位を記録し、代表曲「Roundabout」が大ヒット。イラストレーターのロジャー・ディーンによる幻想的な浮遊島のアートワークと象徴的なロゴも本作から登場した。

1972年、ヘルマン・ヘッセの小説『シッダールタ』に着想を得た最高傑作『Close to the Edge(危機)』を発表。LPのA面全体を占める18分超の表題曲を筆頭に、ポリリズム、目まぐるしい変拍子、パイプオルガンやメロトロンが織りなす荘厳な音響美、そして東洋哲学を取り入れた詩情が極限の完成度に到達し、全英4位・全米3位を記録。プログレッシブ・ロックの頂点として永遠に語り継がれる歴史的名盤となった。

しかし完成直後、音楽的探求をやり尽くしたと感じたビル・ブルーフォードがキング・クリムゾンへ電撃移籍。ジョン・レノンのプラスティック・オノ・バンドなどで活躍していた名手アラン・ホワイト(Alan White)が急遽加入し、わずか3日間のリハーサルでツアーを敢行した。

大作主義の極限とメンバー変遷

1973年、ヒンドゥー教の聖典の注釈書に着想を得た2枚組大作『Tales from Topographic Oceans(海洋地形学の物語)』を発表。LPの全4面それぞれに約20分の大曲を1曲ずつ配置するという極限の大作主義を押し進め、全英チャート初登場1位を記録した。しかし作品の方向性に違和感を抱いたリック・ウェイクマンが脱退する。

スイス出身のフュージョン鍵盤奏者パトリック・モラーツを迎えた1974年の『Relayer(リレイヤー)』では、トルストイの『戦争と平和』を題材にした22分の大曲「The Gates of Delirium(錯乱の扉)」を収録。フリー・ジャズ直系のスリリングで攻撃的なインプロヴィゼーションを炸裂させた。1977年にはスイス・モントルーの教会オルガンを鳴り響かせた『Going for the One(究極)』でウェイクマンが復帰。「Awaken(目覚め)」などの名曲を擁し、パンク・ロック旋風の最中にあって再び全英1位を奪取した。

バグルス合流『Drama』から「ロンリー・ハート」での劇的再生

1979年末、次作の制作難航と方向性対立によりジョン・アンダーソンとウェイクマンが脱退。クリス・スクワイアらは「ラジオ・スターの悲劇」で知られるニュー・ウェイヴ・ユニット「バグルス」のトレヴァー・ホーン(Vo)とジェフ・ダウンズ(Key)を電撃的に迎え、1980年に『Drama』を発表。メタリックで先鋭的なハード・プログレとして高い評価を得たものの、ツアー後にバンドは一度解散した。

1982年、スクワイアとホワイトは南アフリカ出身のギタリスト/ソングライターであるトレヴァー・ラビン(Trevor Rabin)、復帰したトニー・ケイとともに新プロジェクト「シネマ(Cinema)」を結成。トレヴァー・ホーンをプロデューサーに迎えて制作を進めるなか、ボーカルとしてジョン・アンダーソンが呼び戻され、「Yes」として奇跡の復活を遂げた。

1983年に発表された『90125(ロンリー・ハート)』は、トレヴァー・ホーンによる最新鋭のフェアライトCMIサンプリングと研ぎ澄まされた80sデジタル・サウンドを大々的に導入。リード・シングル「Owner of a Lonely Heart」は全米Billboard Hot 100でバンド史上唯一の第1位を獲得し、世界中で爆発的なヒットを記録した。グラミー賞で最優秀ロック・インストゥルメンタル演奏賞(「Cinema」)を受賞するなど、70年代のプログレ巨人が最新鋭のポップ・ロック・アイコンへと生まれ変わる音楽史に残る大復活劇となった。

ABWHと『結晶』8人編成、そして円熟期

1980年代末、ラビン主導の商業路線から距離を置いたジョン・アンダーソンは、スティーヴ・ハウ、リック・ウェイクマン、ビル・ブルーフォードと合流し「アンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)」を結成。Yesの名称使用を巡ってスクワイア側と対立したが、やがて両派が劇的に和解した。

1991年、8人の歴代主要メンバーが一堂に会した合体アルバム『Union(結晶)』をリリース。巨大な回転式円形ステージを配したワールド・ツアーは大熱狂を巻き起こした。その後もメンバーの入れ替えを経ながら、フル・オーケストラと共演した『Magnification』(2001年)など意欲作を発表し続けた。2008年にジョン・アンダーソンが急性呼吸不全のためツアーから退いた後は、ベノワ・ディヴィッドを経て、2012年からジョン・デイヴィソン(Jon Davison)がフロントマンを務めている。

スクワイアとホワイトの逝去、現在

結成以来、唯一すべてのアルバムとツアーに参加しバンドの象徴であったクリス・スクワイアが、急性赤白血病のため2015年6月27日に67歳で逝去。スクワイア本人の指名により、愛弟子のビリー・シャーウッドがベースを継承した。2017年4月のロックの殿堂入り式典では、ラッシュのゲディ・リーがプレゼンターを務め、スクワイアの代わりにベースを弾いて「Roundabout」を演奏した。

2022年5月26日には、50年にわたりドラムを叩き続けたアラン・ホワイトが72歳で逝去。ツアー・サポートを務めていたジェイ・シェレンが正式ドラマーとなった。現在はスティーヴ・ハウのリーダーシップのもと、ジェフ・ダウンズ、ビリー・シャーウッド、ジョン・デイヴィソン、ジェイ・シェレンのラインナップで『The Quest』(2021年)や『Mirror to the Sky』(2023年)をリリース。プログレッシブ・ロックの生ける伝説として世界中のステージでその至高のアンサンブルを響かせ続けている。

音楽的特徴と革新性、後世への影響

Yesの音楽的本質は、各パートが主役級の技巧と主張を持ちながら、奇跡的な調和を保つアンサンブルにある。クリス・スクワイアがリッケンバッカー4001から叩き出す歪んだ金属的アタックと高音域のベースラインは、ベースを単なるリズム楽器からリード楽器へと昇華させた。スティーヴ・ハウのギブソンES-175やペダル・スティール、クラシック・ギターを自在に操る多面的なアプローチ、リック・ウェイクマンのメロトロンやモーグ・シンセサイザーによる壮麗な鍵盤要塞、ブルーフォードの鋭角的な変拍子とホワイトの推進力あるビートが、唯一無二の音響世界を形作っている。

そこに重なるジョン・アンダーソンの清らかなアルト・テナーと神秘主義的な詩情、そしてロジャー・ディーンの浮遊島アートワークは、プログレッシブ・ロックというジャンルの視覚的・音楽的イメージを決定づけた。その影響力はクイーン、ラッシュ、ドリーム・シアター、アイアン・メイデン、さらにはポスト・ロックや現代のプログレッシブ・メタルに至るまで、後世のロック界に深く刻み込まれている。

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