Extrabreit - Ihre Grössten Erfolge (1980)
Extrabreit『Ihre Grössten Erfolge』――皮肉なタイトルから始まるNDWの初期像
Extrabreitは、1978年にドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州ハーゲンで結成されたバンドで、1980年代のNeue Deutsche Welleを代表する存在のひとつ。『Ihre Grössten Erfolge』は1980年に登場したデビュー・アルバムで、タイトルは直訳すると「彼らの最大のヒット曲集」だが、実際にはその出発点にあたる作品だ。録音は1980年6月から7月にかけて行われ、ハーゲン出身のバンドが当時の空気をそのまま持ち込んだような、初期衝動の強い内容になっている。
この作品の重要な点は、後年のヒットでアルバムの意味が変わっていくところにある。発売当初は大きなセールスにつながらなかったが、1年以上後に収録曲「Hurra, Hurra, Die Schule Brennt」がシングルとしてトップ10入りし、そこからアルバムも再び注目を集めた。最初は皮肉に見えたタイトルが、結果的には本当に“代表曲集”のような意味を帯びていく流れで、Extrabreitの初期キャリアを象徴するエピソードになっている。
収録曲とバンドの輪郭
この時期のExtrabreitは、NDWの中でもポップ・パンク寄りの切れ味を持ちながら、ドイツ語の歌詞で日常や社会の空気をストレートに切り取るタイプのバンドとして知られる。過剰に飾らない演奏、短いフレーズの反復、合唱感のあるコーラス、そして少し刺のあるユーモア。そうした要素がアルバム全体に通っている。
代表曲「Hurra, Hurra, Die Schule Brennt」は、タイトルだけでも強い印象を残すが、曲そのものもバンドの勢いをそのまま封じ込めたような一曲。学校をめぐるフレーズを使いながら、単純な反抗歌に寄せきらないところにExtrabreitらしさがある。ヒット後にアルバムへ戻ると、この曲が単独で飛び抜けた存在というより、作品全体のテンションを押し上げる核として機能していることが見えてくる。
レコーディング当時のラインナップにはカルロ・カルゲスが参加していた点も重要だ。カルゲスは1980年にPiet Worthmannの後任として加入し、翌1981年には離れるが、その後ベルリンのBleibtreu Revueを経てNena結成メンバーとなる。さらに、1982年のローリング・ストーンズ公演で見たヘリウム風船の光景が、のちの「99 Luftballons」につながるという話でも知られている。Extrabreitの周辺には、後のドイツ・ポップ史に接続する人物がいたことになる。
音像と制作、当時の空気
この盤は1980年のドイツ・ロックとNDWの接点をよく示している。録音とミックスはハールゼンのTonstudio Hilpoltsteinで行われ、クレジットからも、商業的な大作というより、現場の勢いを優先した制作だったことがうかがえる。サウンドはタイトで、ギターとリズム隊の押し出しが前に出る。歌はメロディをしっかり持ちながら、言葉の切り方に鋭さがある。
同時代のNDWには、より実験寄りのアクトもいれば、ポップに寄せるバンドもいたが、Extrabreitはその中でロックバンドとしての骨格を保っている。後に広く知られるようになるドイツ語ロックの流れを先取りした面もあり、シーンの中では比較的わかりやすい入口を持ったグループだった。西ドイツの都市部で育ったバンドらしい、世相への距離感とユーモアの混ぜ方も特徴的だ。
今回の盤について
この盤はGermanyリリースで、レーベルはReflektor Z(表記上はReflektor)。盤面やジャケットにはMetronome Musik GmbHのクレジットが入り、ジャケット裏面には「PRS Hannover」の非インクスタンプがある個体も確認されている。初期コピーには黒白のステッカー「EXTRABREIT in die 80er Jahre」が付いていたという記録もあり、発売当時の店頭展開の様子が想像しやすい。
また、ラベルのクレジットには楽曲ごとの出版情報が記され、A1-A7、B1、B3-B5はWiehagen & Masuch、A8はMagazine Music/Wiehagen & Masuch、B2はCity Musikverlagとなっている。こうした細かな情報からも、当時の制作・流通の実務がそのまま盤に刻まれていることがわかる。
Extrabreitの中での位置づけ
『Ihre Grössten Erfolge』は、Extrabreitの出発点として重要な一枚だ。のちにヒットを得て広く知られるバンドになる前の、まだ輪郭が固まりきる直前の姿が残っている。デビュー作でありながら、すでにタイトルの付け方、歌詞の視点、演奏の推進力にバンドの個性が見えている。NDWの初期を追ううえでも、Extrabreitというバンドの入口としても、基本の一枚として扱われる作品だ。
後年の成功を知ったうえで聴くと、ここには「これから何かが起こる」気配がはっきりある。ヒット曲の後追いではなく、バンドが最初から持っていた語り口と勢いを確認できる内容。1980年のドイツ語ロックがどこでポップとぶつかり、どこでパンクの速度を残していたか、その交差点を示すアルバムとして記憶されている。
トラックリスト
- A1 Hurra, Hurra, Die Schule Brennt 3:35
- A2 Extrabreit 1:46
- A3 Sturzflug 2:39
- A4 Annemarie 1:44
- A5 Bus Baby 1:21
- A6 Ich Will Hier Raus 1:57
- A7 Alptraumstadt 2:42
- A8 Hart Wie Marmelade 3:01
- B1 Lotto-König 1:56
- B2 Flieger, Grüss Mir Die Sonne 2:53
- B3 Es Tickt 2:51
- B4 110 4:59
- B5 Junge, Wir Können So Heiss Sein 4:39