Rheingold - R. (1982)
Rheingold『R.』(1982年)
ドイツのニュー・ウェイヴ・グループ、Rheingoldが1982年に発表した2作目がこの『R.』。レーベルはWelt-Rekord、リリース国はドイツ。前作で注目を集めたバンドが、映画『Der Fan』と深く結びついた形で作り上げた作品で、アルバム全体にサウンドトラック的な性格が強く出ている。NDW(Neue Deutsche Welle)の流れの中でも、ポップな押し出しだけでなく、物語性と冷たい質感が同居する一枚として整理しておきたい。
映画『Der Fan』との結びつき
このアルバムを語るうえで外せないのが、映画『Der Fan』との関係。バックカバーにも「Musik zum Film “Der Fan”」とあり、作品の性格がはっきり示されている。ボーカルのBodo Staigerは映画で主演も務めており、音楽と映像が同じ世界観の中で動いている。アルバムは単なる劇伴集ではなく、映画用に作られた素材を再構成した内容で、曲ごとの輪郭が明確だ。
Rheingoldのプロフィールをたどると、中心人物はBodo Staiger、作詞のLothar Manteuffel、キーボードのBrigitte Kunze。デュッセルドルフ周辺のシーンに接続しながら活動を始めたバンドで、クラフトワーク以後のドイツ電子音楽の文脈と、NDWの歌もの感覚のあいだに位置している。そうした背景が、この『R.』ではかなり見えやすい。
収録曲と代表曲
この作品で特に知られているのが「FanFanFanatisch」。アルバム収録曲の中でも存在感が強く、映画『Der Fan』の中でも重要な位置を占める。タイトルからして強い執着を示すこの曲は、ファン心理の熱量と不安定さをそのまま音にしたような作りで、Rheingoldの代表曲として扱われることが多い。
また、アルバム全体ではシンセ主体のリズムと、硬質なギターやボーカルがぶつかる場面が目立つ。ドイツ語詞の切れ味もあって、英語圏のニュー・ウェイヴとは少し違う距離感がある。曲の運びはコンパクトで、メロディは耳に残りやすい一方、空気は軽く流れない。そこがこの時代のNDWらしいところでもある。
1982年という時期の意味
1982年は、NDWが商業的にも広く認知されていた時期。Rheingoldの『R.』は、その波の中で比較的きちんと成果を出した作品で、ドイツ国内ではチャートでも好成績を記録している。映画の話題性も追い風になったが、それだけで押し切られたアルバムではなく、作品単体でもまとまりがある。
同時代の比較でいうと、冷たい電子音とドイツ語ポップの接点ではDAFや初期のNena周辺と並べて語られることがある。ただ、Rheingoldはよりシンセポップ寄りで、映像作品と結びついた物語性が強い。クラフトワークの影響を受けたミニマルな電子感と、ニュー・ウェイヴらしい歌の推進力、その両方が前に出ている。
盤としての特徴
この1982年盤は、インナー・スリーブ付き。バックカバーにはエンボス加工のEMIロゴが入り、ドイツ盤らしい作り込みがある。レーベルはWelt-Rekordで、EMIとの関係も見える時期のリリース。ジャケットの情報だけでも、映画音楽としての性格と、当時のメジャー流通の文脈が読み取りやすい。
なお、後年の再発盤と違って、このオリジナル盤は1982年当時の空気をそのまま持つ。音の質感、レーベル表記、封入物まで含めて、作品の時代性がそのまま残る仕様だ。
まとめ
Rheingold『R.』は、NDWの勢いの中で生まれたアルバムでありながら、映画『Der Fan』と密接につながることで独自の輪郭を持った作品。代表曲「FanFanFanatisch」を軸に、シンセポップの明快さとニュー・ウェイヴの緊張感が同居している。バンドのキャリアでは2作目にあたり、Rheingoldの名前を広く知らしめた重要作として整理できる。
ドイツの1982年という時代、映画との接続、そしてNDWという短くも濃い潮流。その交点に置くと、このアルバムの位置づけが見えやすい。
トラックリスト
- A1 FanFanFanatisch 3:52
- A2 Das Steht Dir Gut 4:34
- A3 Augenblick 4:27
- A4 F.A.N. 5:16
- B1 Abfahrt 4:35
- B2 Überblendung 2:21
- B3 Stahlherz 11:26