Ginger Baker's Air Force - Ginger Baker's Air Force (1970)
Ginger Baker's Air Force 1970

Ginger Baker's Air Force - Ginger Baker's Air Force (1970)

Rock Jazz Funk / Soul Prog Rock Art Rock Fusion Jazz-Rock Hard Rock Afrobeat

Ginger Baker's Air Force『Ginger Baker's Air Force』

1970年に登場したGinger Baker's Air Forceの1stアルバムは、ジンジャー・ベイカーを軸にした大編成のライブ作である。クリーム解散後のベイカーが、Steve Winwood、Rick Grech、Graham Bond、Chris Wood、Denny Laineらを集め、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで録音した2枚組LPとして発表された。ジャズ、ロック、ファンク、ソウルの要素をまとめつつ、演奏の中心にあるのはあくまで大人数のアンサンブルと長尺の展開で、単なる“ドラム名義の作品”では終わっていないところが面白い。

このアルバムは、Ginger Bakerにとってソロ作品というより、クリーム以後の新しい活動の出発点に近い位置づけにある。ベイカーはここで、ドラマーとしての強さだけでなく、バンドを大きく鳴らす構成力を前面に出している。ホーン・セクション、複数のパーカッショニスト、オルガン、サックス、ヴァイオリンが重なり合い、当時のブリティッシュ・ロックの枠を広げた記録としても見ておきたい1枚である。

アルバム全体の印象

レコードはUK Polydorのオリジナル盤で、ゲートフォールド仕様。録音はライヴだが、勢いだけで押し切るタイプではなく、曲ごとに編成の出し入れがはっきりしている。ベイカーのドラムは前へ出る場面も多いが、むしろ周囲の音をまとめて推進力に変える役割が目立つ。ジャズ・ロックの文脈ではSoft MachineやColosseum、さらに英国側の即興色の強い作品と比べて語られることが多いが、この盤はアフリカ的なリズム感やR&B寄りのうねりが強く、そこが独特である。

聴感上は、曲が始まった瞬間から人数の多さがそのまま音量になって出てくる。ホーンが前に出る箇所ではバンド全体が硬質に締まり、パーカッション主体の場面ではリズムが層になって進む。スタジオで整えた作品とは違い、演奏の呼吸や反応がそのまま残るため、ライヴ盤ならではの粗さと反復の粘りが両方ある。

「Toad」——クリーム時代を引き継ぐドラムの見せ場

注目曲としてまず外せないのが「Toad」である。もともとクリーム時代の代表的なドラム・ソロ曲として知られるが、このアルバムではその系譜を引き継ぎつつ、Air Forceの大編成の中で再配置されている。単独のソロを見せるだけでなく、バンド全体の流れの中でドラムがどう機能するかが見えやすい。ベイカーの手数の多さだけでなく、フレーズの置き方や間の取り方がはっきりしていて、ロック寄りの聴き方をしてもジャズ寄りの聴き方をしても反応しやすい。

この曲は、ベイカーが“あのソロの人”として終わらないことを示す場面にもなっている。クリームの「Toad」を知っていると比較しやすいが、ここではより集団的な演奏の中で、ドラムが導火線のように曲を動かしていく。ライヴ録音なので、スネアやタムの響きも生々しく、会場の空気ごと叩いている感じが伝わる。

「Aiko Biaye」——アフロ・リズムが前面に出る一曲

「Aiko Biaye」は、このアルバムの方向性をよく示す曲である。アフリカ的な打楽器の感触が強く、ロックの4拍子に収まりきらないリズムの揺れがある。ここではベイカーの関心が、単に豪快なロック・ドラミングにあるのではなく、複数の打楽器が絡むグルーヴの設計にあることがわかる。ホーンやベースが加わることで、演奏は一段と厚みを増す。

この曲の聴きどころは、音数の多さよりも、各パートが同じ方向へ少しずつ傾いていく感じにある。リフで押すロックとは違い、反復の中で細部が変わる。後年のワールドミュージックやミクスチャー・ロックを先取りしたと評価されるのも、この手触りが大きいだろう。

「Man of Constant Sorrow」——トラディショナルの再解釈

「Man of Constant Sorrow」は、トラディショナル・フォークを大胆に拡張した演奏として置かれている。原曲の素朴さをそのままなぞるのではなく、ロック・バンドの編成とホーン、オルガンを使って別の重心に移し替えているのが特徴である。曲の輪郭は残しつつ、演奏はかなり現代化されているため、フォーク・ソングのカバーというより、素材を使ったバンド演奏として聴こえる。

この手のアプローチは当時の英国ロックにも見られるが、本作ではジャズ・ロックの即興性が加わることで、さらに自由度が増している。メロディを追うだけでなく、各楽器がどこで前に出るかを見ると、アンサンブルの作り方がよくわかる。

作品の位置づけ

1970年という時代を考えると、このアルバムはブリティッシュ・ロックの拡張期に置ける重要な記録のひとつである。クリームの延長線上にあるようでいて、実際にはより大きな編成、より多層的なリズム、より開いた音楽性へ進んでいる。Ginger Bakerの名義作としては、彼のドラマーとしての存在感と、バンドリーダーとしての志向が同時に見える点が重要である。

オリジナル盤のUKリリースは、作品の性格をそのまま持った初出盤として捉えやすい。ライヴの熱量、ゲートフォールドの作り、2枚組ならではの曲の配分まで含めて、この時期のAir Forceの姿をそのまま封じ込めたレコードといえる。ブリティッシュ・ジャズ・ロック、アフロ寄りのリズム、ハード・ロック的な押し出しが同居する1枚として、今なお固有の存在感を持っている。

トラックリスト

  1. A1 Da Da Man
  2. A2 Early In The Morning
  3. B1 Don't Care
  4. B2 Toad
  5. C1 Aiko Biaye
  6. C2 Man Of Constant Sorrow
  7. D1 Do What You Like
  8. D2 Doin' It

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Art Rock"

toast