INXS - Kick (1987)
INXS 1987

INXS - Kick (1987)

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INXS『Kick』:80年代後半の国際的ブレイクを決定づけた一枚

INXSの『Kick』は、1987年に発表された6作目のスタジオ・アルバムで、バンドのキャリアの中でも最も大きな成功を収めた作品として知られている。オーストラリア出身のロック・バンドとして活動してきたINXSが、単なる国内人気の枠を越えて世界規模の存在感を示したのがこのアルバムだった。サウンドの軸にはロックがある一方で、ファンク、ポップ、ニュー・ウェイヴ、ダンスの感覚がはっきりと組み込まれていて、80年代後半らしい広がりのある作りになっている。

制作とサウンドの特徴

制作はクリス・トーマスが担当し、ミックスはスティーヴ・リリーホワイトが手がけている。前作『Listen Like Thieves』で見せた方向性をさらに押し進めた形で、ギター中心のロックに加えて、リズムの切れ味やベースのうねり、サックスの使い方がより明確になっている。マイケル・ハッチェンスのボーカルは前面に出ており、アンドリュー・ファリスのソングライティング、キルク・ペンギリーのサックスとコーラスが、曲ごとの輪郭を作っている。

録音はシドニーのRhinoceros RecordingsとパリのStudio De La Grande Arméeで行われ、ミックスはロンドンのAir Studios。オーストラリア、ヨーロッパ、イギリスという複数の都市をまたいだ制作環境も、このアルバムの国際的な広がりにつながっている印象がある。実際に聴くと、音像は厚いが整理されていて、各パートの配置がかなり明瞭だ。ドラムとベースの推進力が強く、その上にギターとサックスが交差する構成が、アルバム全体の動きを支えている。

代表曲とヒットの連続

この作品を語るうえで外せないのが、シングルの強さだ。特に「Need You Tonight」は全米シングル・チャートで1位を記録し、アルバムの象徴的な楽曲になった。「New Sensation」「Devil Inside」「Never Tear Us Apart」も広く知られていて、いずれもアルバムの異なる側面を示している。「Need You Tonight」はミニマルなリフとダンス感覚が前に出た曲で、「Devil Inside」は硬質なビートとギターの押しが強い。「Never Tear Us Apart」は、INXSの中でもメロディの伸びと歌の表情がよく出たバラードとして印象が残る。

また、「Need You Tonight / Mediate」の組み合わせは、ダンス・ロック的な解釈でも注目された。クラブ・シーンでの支持もあり、当時のロック・バンドとしてはかなり広い聴かれ方をしていたことがうかがえる。『Kick』は、ラジオ向けのわかりやすさと、演奏の緊張感を両立させたアルバムとして位置づけられている。

当時の評価と作品の位置づけ

『Kick』は、オーストラリアでは1位、アメリカのBillboard 200では3位、イギリスでは9位を記録している。RIAAでは6倍プラチナ、カナダではダイアモンド認定を受けており、発売直後から国際的に大きな反響を得た。INXSにとっては、バンドを世界的なポップ/ロック・アクトへ押し上げた決定打であり、一般には代表作として最もよく知られているアルバムだろう。

同時代の文脈で見ると、『Kick』はU2やTalking Heads、さらにはファンクやダンスの感覚を取り込んだロック・バンド群と並べて語られることが多い。とはいえ、INXSはサックスの使い方やハッチェンスの色気のある歌い回しによって、より独自の輪郭を持っていた。80年代のメジャー・ロックがポップ化していく流れの中で、非常にわかりやすい成功例のひとつと言える。

このヨーロッパ盤について

今回の盤は1987年のヨーロッパ盤で、Mercuryレーベルからのリリース。カタログ番号は832 721-1で、ジャケットはゲートフォールド仕様、内袋には印刷が入っている。表記上は“Made in Holland”で、オランダ製造のヨーロッパ流通盤という位置づけになる。クレジットでは、℗ 1987 PolyGram International Music B.V. と記されており、当時のPolyGram系の流通体制の中で出ていたことがわかる。

また、同じ1987年でも、後年の再発や別市場向けの盤とは市場表記や流通元の違いがある。この盤は発売当時のヨーロッパ向けオリジナル仕様として見てよく、当時のレーベル表記や印刷物の情報が残っている点も資料的に興味深い。B1のタイトル表記に “Wild Life” と “Wildlife” の揺れがあるのも、こうした初期プレスならではの細部として覚えておきたいところだ。

まとめ

『Kick』は、INXSの持つロック・バンドとしての骨格に、ポップ、ファンク、ダンスの要素をきれいに重ねたアルバムだ。ヒット曲の並びだけでなく、アルバム全体の流れにも無駄が少なく、1987年という時代の空気を強く反映している。80年代後半のメジャー・ロックを語るとき、外せない一枚として長く残る作品だろう。

トラックリスト

  1. A1 Guns In The Sky 2:20
  2. A2 New Sensation 3:39
  3. A3 Devil Inside 5:11
  4. A4 Need You Tonight 3:04
  5. A5 Mediate 2:32
  6. A6 The Loved One 3:25
  7. B1 Wild Life 3:07
  8. B2 Never Tear Us Apart 3:02
  9. B3 Mystify 3:15
  10. B4 Kick 3:13
  11. B5 Calling All Nations 3:00
  12. B6 Tiny Daggers 3:29

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