The Wild Swans - The Coldest Winter For A Hundred Years (2011)
The Wild Swans『The Coldest Winter For A Hundred Years』
The Wild Swansは、Liverpool出身のPaul Simpsonを中心にしたポストパンク・バンドで、80年代初頭の活動で知られたのち、長い時間を経て再び動き出したグループだ。この『The Coldest Winter For A Hundred Years』は2011年に発表された復活作で、2013年盤として流通したものでもある。New Waveの感触を残しながら、メロディと語り口をきっちり前に出した作品で、旧来のファンにとってはもちろん、バンドの再始動を示す一枚として位置づけられている。
この作品の核にあるのは、単なる再結成ではなく、Paul Simpsonが長く温めてきた「未完了の仕事」を形にしたという点だ。批評では、若い頃の勢いだけで押すのではなく、曲の輪郭や言葉の置き方が整理され、現代社会への視線と個人的な喪失感が結びついたアルバムとして受け止められている。The Wild Swansの初期作を知る耳で聴くと、当時の緊張感を残しつつ、時間を経た分だけ視点が広がっているのがわかる。
制作背景とメンバーの重なり
制作面では、LiverpoolのParr Street Studiosで録音されており、C6のみBleak HouseとThe Gossamer Dome, Angleseyでの録音となっている。低予算ながら、録音のまとまりは高く、バンドとしての輪郭がはっきり出た仕上がりだ。旧メンバーのGed Quinnが制作やアートワークに関わり、Ricky Maymi、Michael Mooney、Les Pattinsonらを含む編成も話題になった。The Icicle Works、The Lightning Seeds、Echo & the Bunnymen周辺を思わせるLiverpool系の人脈が自然に交差していて、土地の文脈がそのまま音に反映されている感じがある。
Paul Simpson自身は、このアルバムに精神的・社会的な喪失、そして身内や友人の死が反映されていると語っている。母親がミックス終盤に亡くなったというエピソードもあり、作品全体にその時期の空気がにじむ。感情を大きく煽るというより、淡々とした言葉の積み重ねで重さを出しているのが印象的だ。
代表曲「English Electric Lightning」
このアルバムでまず触れられることが多いのが「English Electric Lightning」だ。カムバック後の代表曲として扱われ、The Wild Swansらしいメロディの運びと、言葉の切り出し方がよく見える一曲になっている。レビューでは、初期代表曲「The Revolutionary Spirit」以来の出来とする声もあり、復活作の中心曲として評価されている。派手なヒット曲というより、バンドの核をそのまま示すタイプの曲だ。
また、表題曲「The Coldest Winter For A Hundred Years」は本編収録ではなく、別の形で扱われている。もともと早い時期に安価な条件で録音された語り中心の曲で、再録してアルバム本編に組み込む意図はなかったとされる。こうした扱いも含めて、作品全体が「過去の素材をただ並べた復刻」ではなく、今の時点で必要な曲を選び直した構成になっている。
作品の位置づけ
The Wild Swansにとって本作は、単なる再始動作ではなく、長い空白ののちにバンドの言葉と音を再定義したアルバムと見える。80年代のLiverpool勢、たとえばEcho & the BunnymenやThe Teardrop Explodesの周辺にあった、知的で陰影のあるポップ/ロックの系譜を思わせつつ、2011年時点の感覚でそれを更新している点が重要だろう。チャート面で大きな実績は確認されていないが、批評反応はかなり好意的で、復活作としての説得力は十分にあったと言えそうだ。
2013年盤として手に取る場合でも、聴こえてくるのは2011年にまとめ上げられた作品の芯の強さだ。派手な装飾に寄らず、曲、言葉、演奏の配置で引っ張るタイプのアルバムで、The Wild Swansという名前が持つ時間の重みも含めて、静かに存在感を残す一枚になっている。
トラックリスト
- A1 Falling To Bits 2:11
- A2 Liquid Mercury 2:58
- A3 Chloroform 3:28
- A4 In Secret 3:56
- A5 English Electric Lightning 5:53
- A6 When Time Stood Still 2:26
- B1 Underwater 3:54
- B2 Intravenous 2:34
- B3 Glow In The Dark 3:42
- B4 My Town 3:28
- B5 Lost At Sea 3:36
- B6 The Bluebell Wood 4:26
- B7 Outro 0:44
- C1 English Electric Lightning (10" Version) 5:53
- C2 Liquid Mercury (7" Version) 2:37
- C3 Dark Times 2:47
- C4 Disintegrating 2:58
- C5 Poison 2:28
- C6 Maybe It's You 4:06
- D1 The Coldest Winter For A Hundred Years 7:37
- D2 The Wickedest Man In The World 3:53
- D3 Half Life 4:06