Japanese Breakfast - Jubilee (2021)
Japanese Breakfast『Jubilee』――日常の感情を大きく広げた2021年作
Japanese Breakfastは、フィラデルフィアのミシェル・ザウナーによるソロ名義だ。もともとはLittle Big Leagueで活動していた時期の制作習慣から始まり、ローファイ寄りの私的な歌から出発したプロジェクトだったが、作品を重ねるにつれて音のスケールを広げてきた。2021年の『Jubilee』は、その流れの中でも特に明確に輪郭が見えるアルバムで、インディー・ロックとインディー・ポップの間を行き来しながら、曲ごとに表情を変える内容になっている。リリースはUSのDead Oceansからで、VMP限定のクリア・オレンジ・スワール盤としても出ている。こちらはゲートフォールド仕様、箔押し、手書きナンバリング入り、500枚限定というアナログ盤。
前作『Soft Sounds from Another Planet』では、内省と実験性の両方が強く出ていたが、『Jubilee』ではそこからさらに前へ出る姿勢がはっきりしている。タイトルの通り祝祭感がある一方で、単純に明るいだけの作品ではない。感情の振れ幅をそのまま曲に落とし込みつつ、アレンジはかなり整理されている印象だ。シンセ、ギター、リズムの置き方が明快で、歌のメロディーが前に出る場面が多い。インディー・ロックの文脈では、MitskiやPhoebe Bridgers、Kevin MorbyなどDead Oceans周辺のアーティスト群と並べて語られることも多いが、『Jubilee』はその中でもポップな推進力が強い一枚と言えそうだ。
アルバム全体の流れ
『Jubilee』は、冒頭から終盤まで曲ごとのキャラクターがかなり分かりやすい。バンドサウンドで押す曲もあれば、打ち込みや鍵盤の比重が高い曲もある。ミシェル・ザウナーの歌は、語りかけるような近さと、サビで一気に開く感じの両方を持っていて、その切り替えがアルバム全体の軸になっている。録音の手触りも、ざらつき一辺倒ではなく、音の輪郭が見えやすい。以前の作品で感じられたホームメイド感を残しながら、2021年時点ではより広い会場で鳴ることを意識したような作りに近い。
また、歌詞面でも、喜びや高揚だけでなく、疲れや不安、過去の記憶が同居しているのがこの作品らしいところだ。タイトルの「Jubilee」は祝祭を思わせる言葉だが、実際の内容はその言葉をそのまま受け取るより、複雑な感情を抱えたまま前を向く感覚に近い。聴いていると、曲の明るさと、言葉の温度差が残る場面がある。そこが単なるポップな快作で終わらない理由でもある。
注目曲「Be Sweet」
アルバムの中でも特に分かりやすく広がりのある曲が「Be Sweet」だ。軽快なリズムと、シンセの動き、そしてサビでの抜けのよさが印象に残る。日本のインディー文脈でいうと、宅録的な親密さよりも、ポップソングとしての完成度を前に出した一曲で、Japanese Breakfastの代表曲として挙げられることが多いのも納得しやすい。歌のメロディーは耳に残りやすいが、ただ甘いだけではなく、相手との距離感や関係の温度をうまく掴んでいるように聞こえる。
この曲は『Jubilee』全体の方向性をかなり端的に示している。インディー・ロックの枠に収まりつつ、ポップの即効性もある。バンドの演奏が前に出る場面でも、ミシェル・ザウナーのボーカルが埋もれない。アルバムの入口としても機能しやすいが、同時にこの作品が「洗練されたポップ寄りのJapanese Breakfast」というだけではないことも伝えてくる。
注目曲「Paprika」
もう一つ外せないのが「Paprika」だ。アルバムの中ではより華やかな側面を担う曲で、アレンジの密度が高く、展開もはっきりしている。打楽器的な推進力と、積み重なる音のレイヤーが特徴で、聴き進めるほどに曲の輪郭が見えてくるタイプだ。タイトルの響きどおり、色や香りを連想させるような明るさがある一方で、感情の切り替わりも細かい。
この曲では、Japanese Breakfastがローファイな出自からどこまで来たのかが分かりやすい。初期作の親密さを失わずに、アレンジの規模だけを広げたわけではなく、歌の置き方そのものが変わっている。サビに向かう流れ、音が重なる瞬間、そして抜けたあとに残る余韻まで含めて、アルバムの中核を担う一曲だと思える。
作品の位置づけ
『Jubilee』は、Japanese Breakfastにとって大きな転換点として語られやすい作品だ。初期の内省的なローファイ路線から、より大きなポップ・アルバムへ移ったことがはっきり分かる。とはいえ、単純に「売れ線に寄った」と言い切れるものではなく、感情の細部を残したまま、曲の形を広げている。インディー・ロックとインディー・ポップの境目にある作品として、2021年の空気感をよく映した一枚と言えそうだ。
アナログ盤として見ると、今回のVMP盤は限定仕様のコレクターズアイテムでもある。クリアにオレンジのスワールが入った盤面、箔押しのゲートフォールド、手書きナンバリングといった仕様は、作品の祝祭感とも相性がいい。音そのものだけでなく、物として手元に置いたときの存在感も強いリリースだろう。
トラックリスト
- A1 Paprika
- A2 Be Sweet
- A3 Kokomo, IN
- A4 Slide Tackle
- A5 Posing In Bondage
- B1 Sit
- B2 Savage Good Boy
- B3 In Hell
- B4 Tactics
- B5 Posing For Cars
動画
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Japanese Breakfast - Savage Good Boy (Official Video)
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Japanese Breakfast - Be Sweet (Official Video)
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Japanese Breakfast - Posing In Bondage (Official Video)
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Paprika
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Sit
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Tactics
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In Hell
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Kokomo, IN