Judas Priest - Screaming For Vengeance (1982)
Judas Priest『Screaming For Vengeance』レビュー
Judas Priestの『Screaming For Vengeance』は、1982年に発表された8作目のスタジオ・アルバムだ。バンドが70年代から積み上げてきたヘヴィメタルの骨格を、そのまま80年代初頭の音像へ持ち込んだ作品で、キャリアの中でも代表作として語られることが多い。英国では11位、米Billboard 200では17位を記録し、アメリカ市場での存在感を大きく押し広げた一枚でもある。
録音はスペインのIbiza Sound Studiosで行われ、ミックスはフロリダ州オーランドのBeejay Recording Studiosと、ココナッツ・グローブのBayshore Recording Studiosで仕上げられている。プロデュース面でも、Judas Priestらしい硬質さと、ラジオ向けの分かりやすさが同居していて、当時のメタルが大きく商業的な広がりを見せ始めた流れの中で、重要な位置を占める作品といえる。
アルバムの位置づけ
この時期のJudas Priestは、Rob Halford、K.K. Downing、Glenn Tipton、Ian Hillという中核メンバーが固まり、バンドの輪郭が明確になっていた。『Screaming For Vengeance』は、その体制で作られたアルバムとして、演奏の精度と曲の押し出しの両方が前面に出ている。初期の荒々しさだけで押すのではなく、リフの切れ味、ツイン・ギターの分担、Halfordの歌唱のメリハリが整理されていて、80年代のヘヴィメタル像を分かりやすく示した作品でもある。
同時代の文脈で見ると、Iron MaidenやScorpions、Uriah Heepなどがハードロック/メタルの広がりを作っていた時期で、Judas Priestはその中でも音の輪郭をかなり明確にした側に入る。後のメタル・バンドが参照しやすい「速いリフ」「抜けるサビ」「ツイン・リード」の要素が、この時点ですでに強く出ている印象だ。
聴きどころと代表曲
このアルバムで最も知られているのは、やはり「You’ve Got Another Thing Comin’」だろう。後から加えられた楽曲としても知られていて、アルバムの流れの中でも特にフックがはっきりしている。ギターリフの反復、歌メロの持ち上がり、コーラスの明快さが揃っていて、発売後にラジオで広く流れたのも納得しやすい。
全体を通して聴くと、単にヒット曲だけが強いのではなく、アルバム単位での推進力がある。曲ごとの温度差はあるが、どの曲もリフが前に出て、ドラムとベースが土台を支える構造がはっきりしている。ヘヴィメタルらしい硬さは保ちながら、過度に複雑にはせず、曲の輪郭を先に立たせる作り。実際に聴くと、音数よりもフレーズの切り方で引っ張る場面が多く、そこがこの作品の分かりやすさにつながっている。
当時の反応と評価
発売後の評価も強かった。RIAAでは1982年10月29日にゴールド、1983年4月18日にプラチナ、2001年には2×プラチナに到達している。Judas Priestにとって初めて大きな商業的成功を安定して獲得したアルバムのひとつであり、後年のベスト盤や回顧記事でも必ず触れられる作品だ。Kerrang!や各種メタル系メディアで高く扱われてきたのも、その影響力の大きさを示している。
また、1982年のツアーではIron MaidenやKrokus、Uriah Heepらがサポートに付いた時期があり、当時のハードロック/メタルの勢いをそのまま映したような巡業だった。『Screaming For Vengeance』は、その現場感も含めて、80年代ヘヴィメタルの拡大を象徴する作品として見られやすい。
このUS盤について
今回の盤はColumbiaレーベルのUS盤で、カタログ番号はFC 38160。クレジット上はCarrolltonプレスの変種で、ランアウトの「G」刻印がその手がかりになっている。インナー・スリーブには歌詞とクレジットが収録されており、1982年当時のCBS盤らしい実用的な仕様だ。オリジナル期の盤なので、後年の再発CDのような音圧調整とは違い、当時のアナログ盤としての質感をそのまま感じやすいタイプの一枚だろう。
『Screaming For Vengeance』は、Judas Priestの中でも「代表作」という言葉が自然に似合うアルバムだ。バンドの持つ金属的なリフ、Halfordの高域ボーカル、そして80年代に入ってからの曲の強さが、かなり分かりやすい形でまとまっている。ヘヴィメタルが一部の熱心な聴き手だけのものではなく、より広いロック・リスナーに届いていく過程を示す一枚としても、今なお重要な作品だと思う。
トラックリスト
- A1 The Hellion 0:41
- A2 Electric Eye 3:39
- A3 Riding On The Wind 3:07
- A4 Bloodstone 3:51
- A5 (Take These) Chains 3:07
- A6 Pain And Pleasure 4:17
- B1 Screaming For Vengeance 4:43
- B2 You've Got Another Thing Coming 5:09
- B3 Fever 5:20
- B4 Devil's Child 4:48