Pink Floyd - Original Motion Picture Soundtrack From The Film "More" (1969)
Pink Floyd 1969

Pink Floyd - Original Motion Picture Soundtrack From The Film "More" (1969)

Rock Stage & Screen Psychedelic Rock Folk Rock Soundtrack

Pink Floyd『Original Motion Picture Soundtrack From The Film "More"』について

Pink Floydの『Original Motion Picture Soundtrack From The Film "More"』は、バルベット・シュレーダー監督の映画『More』のために制作されたサウンドトラック盤である。オリジナルは1969年、バンドがまだ初期のサイケデリック・ロックの手触りを強く残していた時期の作品で、同年の『Ummagumma』や翌年の『Atom Heart Mother』へ向かう前段階に位置づけられる1枚だ。ここでのPink Floydは、のちの大作志向とは少し違い、曲の長さや編成を保ちながらも、映画の場面に寄り添う機能性を前面に出している。

今回の盤は1973年のUS再発で、HarvestのSW-11198。オリジナルの米国盤Tower ST-5169をHarvestが引き継いだ形で、Winchester工場プレスとされる。オリジナル盤との大きな違いはレーベル表記で、収録内容そのものは映画音楽としての構成を保った再登場という見方になる。ハーヴェスト期のPink Floyd再評価の流れの中で流通した盤でもあり、70年代前半の米国市場でこの作品を手にした人には、初期Floydの別の顔として映ったはずだ。

作品の位置づけ

『More』は、Pink Floydにとって初めての本格的な映画サウンドトラック作品であり、初期キャリアの中でも少し特別な場所にある。サイケデリックな即興性、フォーク寄りの響き、短い断片的な曲、そして数曲のしっかりしたバンド演奏が同居していて、いわゆる「アルバム作品」とも少し違うまとまり方をしている。映画音楽として必要な場面転換の役割を持ちながら、Pink Floydらしい反復、残響、間の取り方がはっきり出ている点が面白いところだ。

1969年という時期を考えると、同じ英国ロックでもKing Crimsonのような緊張感の強いプログレ展開とはまだ距離があるし、Jeff Beck GroupやFairport Conventionのような同時代のロック/フォークの要素とも接点が見える。Pink Floydはその中で、映画という枠に合わせながら、自分たちの音の輪郭を少しずつ広げていたように聴こえる。

収録曲の聴きどころ

冒頭の「Cirrus Minor」は、この盤の空気を決める重要な曲だ。アコースティックな感触と、Richard Wrightの鍵盤が作る静かな広がりが前面に出ていて、派手な展開はないが、音の置き方が丁寧で、映画の導入部らしい役割を果たしている。Roger Watersの歌も必要以上に前へ出ず、曲そのものの温度を保つような歌い方だ。初期Pink Floydにある、音響の余白を使う感覚がよく出ている。

「The Nile Song」は、このアルバムの中でもかなり異質な存在だ。歪んだギターと強いリズムで押し切るハードな曲で、初期Floydの中でもロック色がはっきりしている。サウンドトラック盤の中にこうした直球のナンバーが入ることで、作品全体の振れ幅が広がっている。のちのPink Floydのイメージだけで聴くと意外に感じるかもしれないが、1969年時点のバンドの粗さや勢いがそのまま記録されている曲でもある。

「Green Is the Colour」は、アルバムの中で最も親しみやすいメロディを持つ1曲だろう。フォーク寄りの響きがあり、旋律の運びが素直で、映画音楽としての挿入感も強い。Pink Floydの作品群の中では比較的短く、静かな部類に入るが、ここでのアンサンブルは非常に整っている。続く「Cymbaline」へとつながる流れの中で、作品全体の感情の軸を作っている印象がある。

「Cymbaline」は、この盤の代表曲のひとつとして挙げやすい。メロディの運びと不穏な空気の混ざり方が特徴で、映画の場面に合わせた曲でありながら、単独でもPink Floydらしさが感じられる。歌詞の世界と音の揺れが結びついていて、初期のバンドが得意としていた「曲の中に景色を置く」感覚がよく出ている。サウンドトラックでありながら、アルバム中で独立して記憶に残りやすい曲だ。

後半の「Ibiza Bar」は、同じくバンドの粗いエッジが前に出る曲で、B面では重要なアクセントになる。今回の盤ではラベル表記に綴り違いがあるが、曲そのものは、当時のPink Floydのライヴ感をそのまま閉じ込めたような力のある演奏。スタジオ録音でありながら、ライブでの推進力を感じさせるところが面白い。

終盤の「Quicksilver」と「Main Theme」は、映画音楽らしい断片性と、テーマの反復によるまとまりが見える部分だ。特に「Main Theme」は、アルバム全体を締める役割が強く、派手さよりも余韻を残す構成になっている。作品全体を通してみると、曲単体の強さだけでなく、場面ごとの色分けがはっきりしているアルバムだとわかる。

この再発盤について

1973年のUS Harvest盤は、米国初出時のTower盤からの再編成のような位置づけで、レーベルの違いがまず目を引く。HarvestはPink Floydと深く結びついたレーベルで、同時期の作品群と並べて持つと、バンドのカタログがまとまって見えるのもこの盤の特徴だ。さらに、この盤ではB2「Ibiza Bar」の綴り違いや、ランアウトの刻印差異があるため、コレクター的にも再発盤らしい個性がある。

『More』は、Pink Floydのサウンドが大きく拡張していく直前の記録であり、映画音楽としての実用性と、バンドの実験性が同居した作品だ。初期作品の中でも、サイケデリック・ロック、フォーク、サウンドトラックという複数の要素が、無理なく同じ棚に収まっている一枚と言える。

トラックリスト

  1. A1 Cirrus Minor 5:16
  2. A2 The Nile Song 3:24
  3. A3 Crying Song 3:25
  4. A4 Up The Khyber 2:07
  5. A5 Green Is The Colour 2:53
  6. A6 Cymbaline 4:45
  7. A7 Party Sequence 1:10
  8. B1 Main Theme 5:27
  9. B2 Ibiza Bar 3:17
  10. B3 More Blues 2:13
  11. B4 Quicksilver 7:03
  12. B5 A Spanish Piece 1:00
  13. B6 Dramatic Theme 2:11

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