Earthforce - Earthforce (2021)
Earthforce / Earthforce
Earthforceのセルフタイトル作は、英国のフォーク〜サイケデリック周辺の空気を、1970年代後半のアコースティック志向でまとめた作品として捉えやすい一枚だ。中心人物のSteve Bayfieldが、エレクトリック・ロックから距離を取り、シタールや12弦ギターを軸にした静かな音楽へ向かった流れの中で生まれている。バンドというより、複数の演奏者や関係者が集まって作った音楽集団の記録に近く、1977年のセッションとライブ活動を経てかたちになった素材が、のちに作品としてまとまったものだ。2021年にLion Productionsから出たこの盤では、2020年に多くのオリジナル音源がリマスターされている。
ジャンル表記はRock、Folk、World、& Country、スタイルはFolk Rock、Acid Rock、Psychedelic Rock。実際の内容も、その並びに大きく外れていない。シタール、ハーモニウム、タブラ、12弦ギターといった楽器が前に出るため、英国のフォーク・ロックを土台にしながら、サイケデリックな長い残響や、インド音楽由来の響きが自然に重なる。演奏の派手さで押すタイプではなく、音の重なりや間合いで聴かせる構成だ。1970年代半ばのロックに対する違和感から出発したという背景も、そのまま音に反映されている印象がある。
作品の成り立ちと位置づけ
アーティストのプロフィールにある通り、Bayfieldは1976年に電気的なロックから離れ、シタールと12弦ギターを手にしている。1977年3月にはAlan ShipgoodやJames Gleaveとのジャム、4月にはAlan、Tony Pettitt、Mick Marshとのセッションを行い、JenieとRaymond Critchellもこの音楽集団の構想に関わった。最終的な基本編成は、Bayfieldのシタールと12弦ギター、Alanのベースとタブラ、Tonyのハーモニウム。ロンドンのBattersea Arts Centreでのフェス出演も記録されており、スタジオだけで完結した作品ではないことがわかる。
録音は1977年7月から8月にかけて、HampshireのFarnboroughとGuildford近郊のMerrowで行われた。年内にカセット60本が作られ、アメリカ、フランス、南アフリカ、パプアニューギニア、オーストラリアへも広がったという。つまり、この作品は当時から小規模ながら国際的に流通していた記録でもある。2021年盤は、その素材を改めて聴けるようにした再発で、オリジナルの空気を現代の再生環境に移したものと見てよさそうだ。
聴きどころ
まず耳に入るのは、バンド全体の音が密に詰まる感じではなく、ひとつひとつの音が空間に置かれていく感触だ。シタールの倍音、ハーモニウムの持続音、タブラの細かなリズム、ベースの低音が、互いを邪魔しない距離で並ぶ。ロックの推進力よりも、反復と揺れで進む場面が多く、曲によっては即興の気配も強い。フォーク・ロックの枠に収まりつつ、サイケデリックな拡張がその内側にある、という聴こえ方である。
とくに注目したいのは、演奏が派手に展開するより先に、音色の選択そのものが作品の輪郭を決めている点だ。12弦ギターのきらめきとシタールの鋭さが対になり、そこへハーモニウムの持続が差し込まれることで、曲の重心が一定に保たれる。音数は多くないのに、場面によってはかなり厚みが出る。英国フォークの室内楽的な感触と、サイケデリック・ロックの浮遊感が、同じフレームの中に置かれているように聴こえる。
収録曲について
収録曲ごとの明確なヒット曲や広く知られた代表曲が前面に出るタイプではなく、アルバム全体を通して流れで聴く性格が強い。だからこそ、個々の曲は単独で強烈に主張するというより、前後の曲とのつながりの中で輪郭が見えてくる。セッション由来の記録らしく、場面ごとの温度差や演奏者の入れ替わりが、曲単位の表情を作っている。
また、1978年11月のBellerby Theatreでの「An Evening with Earthforce」では、John Lathey、Simon Rowan、Savourna Stevenson、Bayfield、John Blandらが参加し、Oa Bandとのつながりを含めた編成で演奏が行われた。こうした経緯を踏まえると、この作品は単なるスタジオ録音集ではなく、当時の集団的な音楽活動の断面を残したものとして見えてくる。曲そのものだけでなく、その周辺にある演奏の場や人の移動まで含めて記録されている点が、この作品の大きな特徴だ。
再発盤としての見どころ
2021年盤では、2020年に多くのオリジナル音源がリマスターされている。古いカセット由来の作品にありがちな輪郭のぼやけを、できる範囲で整えた再発と考えられる。もともと少数制作だった時代の記録が、レーベルの手で改めて流通することで、当時のローカルな音楽活動が現在のリスニング環境へ接続されている。Lion Productionsはサイケデリック・ロック周辺の再発を扱うレーベルで、この作品のような埋もれた記録を拾い上げる役割を担っている。
Earthforceは、1970年代後半の英国的なフォーク志向と、サイケデリックな実験性が、かなり素直な形で同居した記録だ。大きな市場で勝負する作りではなく、演奏者たちの関心や移動、録音の積み重ねがそのまま作品の骨格になっている。聴き進めるほど、バンドの歴史と音の関係が見えてくる一枚である。
トラックリスト
- A1 Dawn 7:20
- A2 Song Of The Morning 7:25
- A3 Carnmenyn 4:23
- A4 Jenie's Song 3:26
- B1 Keep Moving 5:21
- B2 Wild Mountain Thyme 3:46
- B3 Wandering 6:36
- B4 Moonrise 6:49