R.E.M. - Out Of Time (1991)
R.E.M.『Out of Time』(1991) ― バンドの転機になった7作目
R.E.M.は、アメリカ南部ジョージア州アセンズ出身のロックバンドで、1980年結成。ギターのピーター・バック、ベース/キーボードのマイク・ミルズ、ボーカルのマイケル・スタイプ、ドラムのビル・ベリーという4人編成を軸に、80年代のオルタナティヴ・ロック/ジャングル・ポップを代表する存在として活動してきた。その彼らが1991年3月に発表した7作目のスタジオ・アルバムが『Out of Time』である。
この作品は、R.E.M.が「インディーズ寄りの重要バンド」から、より広い層に届く存在へと大きく移る節目として語られることが多い。前作『Green』までのギター主体のバンド感を引き継ぎながらも、本作ではマンドリン、キーボード、ストリングス的なアレンジ、ゲスト参加などが前面に出て、曲ごとの色分けがはっきりしている。録音は1990年9月から10月にかけて行われ、プロデュースはスコット・リットが担当した。
アルバムの輪郭と聴きどころ
『Out of Time』を通して聴くと、まず感じるのは曲の配置の巧さである。R.E.M.らしい曖昧さを残しつつ、メロディは以前よりも明快で、リズムや音色の設計も整理されている。ジャングリーなギターの輪郭は残る一方で、音数の多い編成が楽曲の中心に置かれ、アルバム全体としてはラジオ向きの入口を持ちながら、細部にはひっかかりが残る作りになっている。
とくに大きな存在感を持つのが「Losing My Religion」である。バンジョーのフレーズが曲の軸を作り、マイケル・スタイプの歌が抑制されたまま進むこの曲は、R.E.M.の代表曲として広く認識されている。全米でトップ5入りを果たし、バンドにとって初めて大規模な一般層へ届いたシングルとしても重要だ。サビで一気に押し切るタイプではなく、同じ短いモチーフを積み重ねて曲を成立させるところに、このバンドらしい構成感がある。
「Shiny Happy People」も本作を語るうえで外せない。B-52’sのケイト・ピアソンが参加し、明るい色調と反復の強いフックが前に出る。R.E.M.の中ではかなり直接的にポップへ寄った曲で、アルバム全体の幅を示す役割も担っている。「Radio Song」ではKRS-Oneが参加しており、当時のロックバンドとしてはかなりはっきりした外部接続が見える。こうした客演の使い方も、本作の性格をよく表している。
作品の位置づけ
『Out of Time』は、R.E.M.のディスコグラフィーの中でも転機の作品として扱われることが多い。前後の作品に比べて、バンドの内部だけで完結しない広がりがあり、結果として全米・全英で1位を記録した。商業的な成功だけでなく、90年代初頭のオルタナティヴ・ロックが大きな市場に入っていく流れの中で、象徴的な一枚になったと言える。
同時代の文脈で見れば、R.E.M.はニルヴァーナ以前のメジャー・オルタナティヴの代表格であり、R.E.M.の成功はその後のバンド像にも影響を与えたと考えられる。ギターロックを基盤にしながら、アコースティック楽器やポップなコーラスを自然に混ぜる手つきは、のちのインディー/オルタナ勢にも通じるものがある。派手に押し切るのでなく、曲の骨格を保ったまま音の配置を変えていくやり方が、この時期のR.E.M.の特徴である。
なお、本作はグラミー賞で最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムを受賞している。大衆性と批評性が同時に可視化された作品として、1991年のロック作品群の中でも存在感が強い。
ヨーロッパ盤について
今回の盤はヨーロッパ流通のWarner Bros. Records盤で、カタログ番号は7599-26496-1。盤面には「Made in Germany by Warner Music Manufacturing Europe」の表記があり、内袋にはクレジットと写真が入った印刷スリーブが付属している。ラベルの縁取りテキストは全面をぐるりと覆うタイプではなく、表示の出方に違いがある。ドイツ系の製造で、欧州流通盤らしい整理された仕様である。
オリジナル発売が1991年ということもあり、この時期のR.E.M.を代表する一枚として扱われることが多い。『Murmur』や『Reckoning』のころの緊張感、『Green』期の拡張、その先で一気に一般層へ届いたアルバムとして見ると、R.E.M.の歩みがこの1枚にかなりきれいに集約されている。
まとめ
『Out of Time』は、R.E.M.が持っていたバンドとしての輪郭を保ちながら、ポップ・アルバムとしての届き方を大きく広げた作品である。代表曲「Losing My Religion」を中心に、「Shiny Happy People」「Radio Song」など、曲ごとの性格がはっきりしていて、アルバム単位でもシングル単位でも印象が残る。90年代初頭のオルタナティヴ・ロックの流れを考えるうえでも、外せない一枚である。
トラックリスト
- Time Side
- A1 Radio Song 4:12
- A2 Losing My Religion 4:26
- A3 Low 4:55
- A4 Near Wild Heaven 3:17
- A5 Endgame 3:48
- Memory Side
- B1 Shiny Happy People 3:44
- B2 Belong 4:03
- B3 Half A World Away 3:26
- B4 Texarkana 3:36
- B5 Country Feedback 4:07
- B6 Me In Honey 4:06