The Smiths - The Queen Is Dead (1986)
The Smiths 1986

The Smiths - The Queen Is Dead (1986)

Rock Pop Indie Pop Indie Rock Jangle Pop

The Smiths『The Queen Is Dead』レビュー

The Smithsが1986年に発表した3作目のアルバム『The Queen Is Dead』は、バンドの代表作としてまず名前が挙がる作品だ。1982年にマンチェスターで結成されたこの4人組は、モリッシーの歌詞とジョニー・マーのギターを軸に、当時の英国インディー・シーンの中で独自の位置を築いた。本作はその流れの中で、音の作り、言葉の鋭さ、曲の配置まで含めて、バンドの輪郭をもっとも明確に示した一枚として聴こえる。UK盤はRough TradeのROUGH 96、1986年リリース。ゲートフォールド仕様のジャケットと印刷インナーを備えた、オリジナル期の空気をそのまま持つ盤である。

録音と発表の背景

録音は1985年の夏から冬にかけて、Jacobs Studios、RAK Studios、Drone Studiosなど複数のスタジオで断続的に進められ、1986年6月16日に発売された。制作面ではモリッシーとジョニー・マーが中心となり、前作『Meat Is Murder』よりも音の振れ幅が広い。ギターの刻みは細かく、リズムは軽快さを保ちながら、曲ごとに温度差をつけている。The Smithsの作品の中でも、演奏と編曲のバランスが特に見やすいアルバムだ。

当時の英国では、メジャー・ロックの大きな音量感とは別に、インディー・レーベルを軸としたバンド群が存在感を増していた。The Smithsはその中心にいたグループで、同時代のThe CureやEcho & the Bunnymen、さらには後のオルタナティヴ・ロックにまでつながる流れの中で語られることが多い。本作は、そうした文脈の中でも特に、歌詞主導の英国ロックとして強い輪郭を持つ。

収録曲の手触り

タイトル曲「The Queen Is Dead」は、冒頭から印象が強い。1962年の映画『The L-Shaped Room』に使われた「Take Me Back to Dear Old Blighty」の一節を引用した導入で始まり、そのまま皮肉の効いた歌詞へ入っていく。王室を題材にした内容は当時も話題になり、曲単位で見てもこのアルバムの中心にある。シングルとして切り出されていないが、The Smithsの代表曲として扱われることが多い。

「Frankly, Mr. Shankly」「Bigmouth Strikes Again」「There Is a Light That Never Goes Out」など、曲名だけで印象に残る楽曲が続くのも本作の特徴だ。特に「There Is a Light That Never Goes Out」は、The Smithsの中でも広く知られた一曲で、抑えたバンド・サウンドの上に、モリッシーの感情の振れ幅がそのまま置かれている。派手な展開で押すのではなく、言葉とコード進行の組み合わせで引っ張る作り。耳に残るのはメロディだけでなく、語り口そのものだ。

音の印象

実際に聴くと、まずジョニー・マーのギターがよく目立つ。アルペジオ、短いフレーズ、和音の重ね方が曲ごとに細かく変わり、ベースとドラムの動きもそれを支える形で整理されている。荒さを前に出す録音ではなく、各パートがくっきり分かる作り。そこにモリッシーの歌が乗ることで、ユーモアと不機嫌さと自己演出が同じ場所に並ぶ。The Smithsの作品を聴き続けると、この組み合わせが本作でかなり完成に近づいているのがわかる。

サウンド面では、当時の英国インディーに多かった軽い響きと、アメリカのギターロックに通じる推進力の両方が見える。ジャンル名でまとめるとIndie Pop、Indie Rock、Jangle Popになるが、実際の聴感はもっと曲ごとの個性がはっきりしている。柔らかな曲調の中に、歌詞の棘が残る構図。

アルバムとしての位置づけ

The Smithsの4枚のスタジオ・アルバムの中でも、『The Queen Is Dead』は頂点として挙げられることが多い。後年の評価も高く、英国インディーの代表作、さらに1980年代ロックの重要作として扱われてきた。1987年にジョニー・マーが脱退し、バンドはその後解散へ向かうため、本作は主要ラインナップによる活動の集大成に近い位置でもある。

一方で、作品の中身は終末感だけではなく、皮肉、軽口、街の空気、個人的な感情が同居している。The Smithsらしさが最も濃いアルバムでありながら、曲順を通して聴くと、単なる“暗いバンド”の記録には収まらない。音の設計と歌詞の切り口が、1986年当時の英国ロックの中でかなり独特な場所を作っている。

UKオリジナル盤について

このUK盤は1986年の初出仕様で、ゲートフォールド・スリーブ、印刷インナー付き。コピーによっては、見開き内側と同じ写真を使ったA2判の黒白ポスターが折りたたまれて付属する。Rough Tradeのアルバム番号ROUGH 96は、同レーベル初期カタログの中でも重要な一枚に位置づけられる。のちの再発盤でも聴ける内容ではあるが、1986年当時のUK盤は、作品が最初に流通した空気をそのまま持つ存在として見ておきたい。

The Smithsの中核がもっとも鮮明に見える作品。曲の強さ、歌詞の切れ味、ギターの配置、その全部がこの一枚にまとまっている。

トラックリスト

  1. A1 The Queen Is Dead / Take Me Back To Dear Old Blighty (Medley) 6:23
  2. A2 Frankly, Mr. Shankly 2:17
  3. A3 I Know It's Over 5:48
  4. A4 Never Had No One Ever 3:36
  5. A5 Cemetry Gates 2:39
  6. B1 Bigmouth Strikes Again 3:12
  7. B2 The Boy With The Thorn In His Side 3:15
  8. B3 Vicar In A Tutu 2:21
  9. B4 There Is A Light That Never Goes Out 4:02
  10. B5 Some Girls Are Bigger Than Others 3:14

動画プレイリスト

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