The Smiths - The Smiths (1984)
The Smiths 1984

The Smiths - The Smiths (1984)

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The Smiths『The Smiths』(1984)レビュー

1984年にUKのRough Tradeから登場したThe Smithsの1stアルバム『The Smiths』は、バンドの出発点をそのまま封じ込めたような作品である。Morrisseyの語り口の強い歌と、Johnny Marrの細かなギターの絡みが中心にあり、当時の英国インディー・シーンの空気をはっきりと映している。The Smithsは1982年にマンチェスターで結成された4人組で、このデビュー作は、彼らがその後の短い活動期間の中で築く個性の骨格を最初に示したアルバムとして位置づけられる。

作品の輪郭

この盤は、Rough Tradeのカタログ番号ROUGH 61でリリースされたUK盤。ジャケットにはAndy Warholの『Flesh』から取られたカバー・スターが使われており、モノクロ寄りの印象の中に、どこか冷ややかで演劇的な感触がある。スリーヴ、レーベル、インナー・スリーヴには歌詞とクレジットが印刷され、マルーン色の文字がグレイブルーの背景に載る仕様。さらに、この版ではRough Tradeロゴがステンシル風に表示されている点も特徴的である。

録音はPluto(Manchester)、Eden(London)、Matrix(London)、Strawberry(Manchester)で行われ、クレジットにはWinter, 1983とある。アルバム全体を通して、音の芯はかなり明瞭で、ギターのアルペジオやベースラインが混み合わずに前へ出る。派手なエフェクトよりも、各パートの輪郭で曲を支える作り。聴き進めると、Morrisseyの歌がメロディーだけでなく、言葉の切り方や間の取り方まで含めて曲の中心にあることがわかる。

代表曲とアルバムの流れ

収録曲の中では、「Hand in Glove」や「What Difference Does It Make?」がこのアルバムを語るうえで重要な代表曲になる。前者は初期The Smithsの姿勢をそのまま示すような曲で、後者はより鋭く、リフと歌の掛け合いが印象に残る。どちらも、ギター・ロックの枠に収まりながら、当時の英国ポップスにはあまり見られなかった感情の出し方を持っている。

アルバム後半で特に目を引くのが「Suffer Little Children」である。これは1960年代にマンチェスター近郊で起きたムーアズ殺人事件を題材にした楽曲で、歌詞ではJohn Kilbride、Lesley Ann Downey、Edward Evansといった実在の被害者の名が挙げられている。発表当時は物議を醸したが、のちにMorrisseyが事件の悲劇性に向き合って書いた曲として理解が進んだ。被害者Lesley Ann Downeyの母親Ann WestとMorrisseyが後年に交流を持ったというエピソードも残る。バンドの文学的な引用癖と、現実の事件を扱う際の距離感が、この曲にははっきり表れている。

同時代との関係

The Smithsは1980年代英国のインディー・シーンを代表する存在で、Rough Tradeという独立レーベルの文脈と強く結びついている。派手なシンセやダンス志向のサウンドが広がる時代にあって、The Smithsはギター・バンドとしての形を保ちながら、歌詞の内面性と日常感を前に出した。後のオルタナティヴ・ロックやインディー・ロックに与えた影響は大きく、The CureやJoy Divisionと比較されることもあるが、The Smithsの強みは、より直接的なポップ感と、Morrisseyの固有の言葉遣いにある。

このデビュー作は、のちの『Meat Is Murder』や『The Queen Is Dead』ほど完成度が整い切った印象ではないが、初期衝動の濃さがそのまま残っている。Johnny Marrのギターはすでに独特で、単音の並べ方や和音の置き方に、後のギターバンドが参照した要素が多い。Andy RourkeのベースとMike Joyceのドラムも、曲を重くしすぎずに前へ進める役割を担っている。メンバー表を見ると変動の多い時期でもあるが、アルバムではその後の固定化されたThe Smiths像が、かなり早い段階で形になっている。

まとめ

1984年の『The Smiths』は、英国のインディー・ロックが持っていた空気を、かなり具体的な形で記録したアルバムである。歌詞の個性、ギターの配置、ジャケットの意匠、そしてRough Tradeというレーベルの存在感まで含めて、作品全体が当時の文脈とつながっている。ヒット曲としては「What Difference Does It Make?」や「Hand in Glove」がまず挙がるが、アルバム単位では「Suffer Little Children」まで含めてThe Smithsらしさが見えてくる。初期作らしい粗さと、すでに完成している部分が同居した一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Reel Around The Fountain 5:55
  2. A2 You've Got Everything Now 3:58
  3. A3 Miserable Lie 4:27
  4. A4 Pretty Girls Make Graves 3:41
  5. A5 The Hand That Rocks The Cradle 3:45
  6. B1 Still Ill 3:19
  7. B2 Hand In Glove 3:23
  8. B3 What Difference Does It Make? 3:49
  9. B4 I Don't Owe You Anything 4:04
  10. B5 Suffer Little Children 5:29

動画プレイリスト

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