Santana - Abraxas (1970)
Santana 1970

Santana - Abraxas (1970)

Rock Latin Psychedelic Rock Fusion Hard Rock

Santana『Abraxas』レビュー

Santanaの『Abraxas』は、1970年にリリースされた2作目のスタジオ・アルバムだ。バンドの中心はギタリスト、Carlos Santana。前作『Santana』でウッドストック以後の大きな注目を集めたあと、その勢いをそのまま作品として結実させた一枚として位置づけられる。Latin rockを軸にしながら、Rock、Fusion、Hard Rock、Psychedelic Rockの要素が自然に混ざり合っていて、バンドの初期像をつかむには非常に重要な作品だ。

この盤はUSリリースのColumbia、カタログ番号はKC 30130。マットなゲートフォールド仕様で、オリジナルにはポスターが付属する。さらに一部のコピーには、Time Magazineの引用を載せたヒップステッカーがフロントに貼られ、ジャケットの女性像の一部を隠す形になっている。70年当時の空気感をそのまま残したようなパッケージも含めて、作品全体の存在感が強い。

バンドの初期を代表する位置づけ

Santanaは1966年にSantana Blues Bandとして始まり、のちにSantanaへ改名した。Bill Grahamの後押しを受けてFillmore Westで演奏し、1969年のWoodstock出演で広く知られるようになる。その流れの中で作られた『Abraxas』は、デビュー作よりも構成が整理され、曲ごとの役割がはっきりしている印象がある。ラテンのリズム、サイケデリックなギター、オルガンやパーカッションの絡みが、単なる勢いではなく、曲の骨格として機能している。

録音はSan FranciscoのWally Heider Recording Studioで行われ、A4のみSan MateoのPacific Recordingで録られている。クレジット面では、収録曲の多くがPetra Music - BMIで統一されており、「Black Magic Woman」「Gypsy Queen」「Oye Como Va」だけ出版権の表記が別になる。こうした細かなクレジットの並びも、当時のカバー曲を含むアルバムらしいところだ。

代表曲「Black Magic Woman / Gypsy Queen」

この盤で最もよく知られているのは、やはり「Black Magic Woman / Gypsy Queen」だろう。もともとはPeter Green在籍時のFleetwood Macの曲として知られていた「Black Magic Woman」に、Gábor Szabóの「Gypsy Queen」をつなげた構成で、Santana版では曲全体がひとつの流れとして組み直されている。Carlos Santanaのギターは、フレーズを細かく詰め込みすぎず、音の伸びと間で引っ張るタイプで、そこにパーカッションとオルガンが厚みを加える。

聴き進めると、原曲のブルース寄りの輪郭よりも、より立体的で、リズムのうねりが前に出る。特に中盤以降、ギターが前へ出る場面でも、バンド全体の拍感が崩れない。ラジオ向けのヒット曲というより、アルバムの流れの中で存在感を示す代表曲という印象が強い。

「Oye Como Va」の定着

もう一つの重要曲が「Oye Como Va」だ。Tito Puenteの曲をSantanaが取り上げたもので、このバージョンによって曲自体の知名度が大きく広がった。原曲の持つラテンのグルーヴを保ちながら、エレクトリック・バンドとしての推進力を足しているのが特徴だ。ここではCarlos Santanaのギターがメロディを歌うように進み、Gregg Rolieのオルガンがその隙間を埋める。

この曲は、Santanaが単なるロック・バンドではなく、ラテン音楽の語法をロックのフォーマットに持ち込んだ存在だと分かりやすく示している。後年のクロスオーバーやラテン・ロックの文脈でも参照されやすい一曲で、『Abraxas』の中でも特に役割が大きい。

アルバム全体の聴きどころ

『Abraxas』は、派手な技巧の見せ合いより、曲の流れの中で緊張感を保つ作りが印象に残る。パーカッションの重なり方、オルガンの持続音、ギターのレガートなフレーズが、ロックとラテンの境目を自然に曖昧にしている。Woodstock以後のSantanaが、ライブの熱気だけでなく、スタジオ作品としても強いことを示した盤といえる。

同時代のサイケデリック・ロックやハード・ロックと比べると、音の暴力性よりもリズムの層の厚さが前に出る。少し後のジャズ・ロックやフュージョンにも通じる要素がすでに見えていて、1970年という時点でここまで整理されたサウンドを作っていたことに、当時のバンドの成熟が感じられる。Santanaにとっては、デビュー作の成功を受けて、バンドの核を明確にした一枚として読むのが自然だろう。

オリジナル盤の『Abraxas』は、ジャケット、音源、曲順のまとまりまで含めて、1970年のSantanaをそのまま封じ込めたような内容だ。代表曲の強さだけでなく、アルバム全体でひとつの流れを作る構成力が、この作品を長く聴かれるものにしている。

トラックリスト

  1. A1 Singing Winds, Crying Beasts 4:48
  2. A2 Black Magic Woman / Gypsy Queen 5:17
  3. A3 Oye Como Va 4:17
  4. A4 Incident At Neshabur 4:58
  5. B1 Se A Cabo 2:49
  6. B2 Mother's Daughter 4:25
  7. B3 Samba Pa Ti 4:46
  8. B4 Hope You're Feeling Better 4:10
  9. B5 El Nicoya 1:29

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