Steve Hillage - Fish Rising (1975)
Steve Hillage 1975

Steve Hillage - Fish Rising (1975)

Electronic Rock Ambient Experimental Psychedelic Rock Prog Rock Space Rock Jazz-Rock

Steve Hillage『Fish Rising』――ギターの宇宙感をそのままアルバムにした1975年作

Steve Hillageの『Fish Rising』は、1975年に発表されたソロ・デビュー・アルバムである。もともとGongの中心人物として知られたHilllageが、バンドの文脈から離れて自身の音楽を前面に出した作品として位置づけられる。収録された音は、プログレッシブ・ロック、スペース・ロック、サイケデリック・ロックを軸にしながら、ジャズ・ロックやアンビエント的な処理も交えたもの。ギターを主役に据えつつ、シンセサイザーやリズム隊がその周囲を広げていく構成になっている。

この日本盤はVirginのYX-7051-VRで、1975年のオリジナル期に出た盤である。Virgin初期の作品らしく、レーベル面のデザインも時代性が強い。なお、Virginは1970年代前半にロンドンで立ち上がった独立系レーベルで、当時の英国プログレや実験音楽の重要な受け皿でもあった。『Fish Rising』も、その文脈の中で自然に理解できる一枚である。

Steve Hillageという人物の立ち位置

Hillageは1951年ロンドン生まれのギタリストで、若い頃から演奏技術で注目されていた人物である。Uriel、Egg、Arzachel、Kevin Ayers周辺を経てGongに参加し、そこでDaevid Allen由来のグリッサンド奏法や、音を伸ばして空間を作る発想を吸収した。その後にソロへ進み、のちにはSystem 7でも活動するが、1975年の時点では、ギターをどこまで遠くへ飛ばせるかを試すような段階にある。

『Fish Rising』は、その出発点としてかなり重要な作品といえる。Gongの延長線上にありながら、より個人名義の色が濃い。バンドの集団性よりも、Hillage本人のギターと音響感覚が前に出るため、以後のソロ作を聴くうえでも基準になりやすい。

アルバム全体の流れ

全体としては、長めの曲を中心に据えた構成で、展開を急がずに進んでいく。音数は多いが、ひとつひとつの音が詰め込まれているというより、反響や持続音を使って広がりを作るタイプである。聴き進めると、ロックの推進力と、アンビエント寄りの浮遊感が同居していることがわかる。1970年代半ばの英国プログレの中でも、かなりスペース・ロック寄りの感触が強い部類だろう。

実際に聴くと、ギターの音色が作品の中心にあることがはっきりしている。歪ませすぎず、しかし輪郭は保ったまま、ディレイや残響で奥行きを出していく。ベースとドラムが土台を作り、キーボードが空間を埋めるというより、空間そのものを拡張する役割を担っているように聴こえる。派手な即効性よりも、曲の中で少しずつ景色が変わっていく感覚が残る一枚である。

注目曲1: 「Aftaglid」

アルバムの冒頭を飾る「Aftaglid」は、作品の方向性を端的に示す曲である。導入部からギターの伸びとリズムの推進があり、Hillageのソロ作が単なる技巧披露ではなく、空間設計を伴ったロックであることが伝わる。曲は一気に盛り上げるというより、複数のパートをつないでいく形で進行し、聴き手をそのままアルバムの世界に引き込んでいく。

この曲で目立つのは、ギターが前に出ているのに、全体の音像が窮屈にならない点である。音が重なっても輪郭が比較的見えやすく、プログレ的な複雑さと、サイケデリックな伸びやかさが両立している。Gong時代を思わせる要素はあるが、演奏の主導権がHillage本人にあるぶん、より整理された印象も受ける。

注目曲2: 「Solar Musick Suite」

中盤の大曲「Solar Musick Suite」は、『Fish Rising』の中核とみなされやすい。組曲形式らしく、曲想が切り替わりながら進むが、断絶より連続を重視した流れでまとまっている。タイトルどおり、太陽や宇宙を思わせるイメージを音で描く方向で、ギターのフレーズが旋回するように展開していく。

ここでは、単に速弾きや派手なリフで押すのではなく、反復と変化のバランスが重要になっている。聴いていると、リズムの上にギターが浮かぶというより、ギターの運動そのものが曲の推進力になっているように感じられる。Hillageのソロ初期における代表的な作風を、そのまま凝縮したような一曲である。

注目曲3: 「Palm Trees (Love Guitar)」と「Unidentified」

「Palm Trees (Love Guitar)」は、アルバムの中でも比較的親しみやすい流れを持つ曲である。タイトルに反して単純なラブソングではなく、ギターの響きそのものを主題にしたような作りで、旋律の置き方にHillageらしさが出ている。演奏の運びは滑らかで、アルバム全体の中では少し開けた空気を持つ。

終盤の「Unidentified」は、作品の締めくくりとして、より実験性のある手触りを残す。明快なフックで押すというより、音響の残り香を聴かせるタイプで、アルバムがロック作品であると同時に、音の質感を追う作品でもあることを示している。ここまで聴くと、『Fish Rising』が曲単位の強さだけでなく、1枚通しての流れで成立していることがわかる。

1975年の文脈で見ると

1975年という年を考えると、『Fish Rising』は英国プログレの成熟期にありながら、同時にその外側へ踏み出そうとするアルバムでもある。King CrimsonやYesのような大編成の緻密さとは少し違い、Gong周辺の宇宙感や、Canterbury系の流動性に近い感覚がある。そこにHillageのギターが乗ることで、スペース・ロックとしての輪郭が強くなっている。

日本盤として聴く場合、オリジナル期のVirgin作品らしい時代感も含めて楽しめる。再発盤ではない1975年盤という点もあり、当時のレーベルの空気と作品の初期性がそのまま伝わる一枚である。『Fish Rising』は、Steve Hillageというギタリストが、ソロ作でも十分に独自の世界を作れることを示したアルバムとして、今もはっきり存在感を保っている。

トラックリスト

  1. Inglid / Involution
  2. Solar Musick Suite 16:55
  3. A2 Fish 1:23
  4. A3 Meditation Of The Snake 3:10
  5. Outglid / Evolution
  6. The Salmon Song 8:45
  7. Aftaglid 14:46

動画

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