The Rolling Stones - Sticky Fingers (1971)
The Rolling Stones 1971

The Rolling Stones - Sticky Fingers (1971)

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The Rolling Stones『Sticky Fingers』— バンドの転機を刻む1971年作

The Rolling Stonesの『Sticky Fingers』は、1971年にUKでリリースされたスタジオ・アルバムである。いわゆる“ストーンズらしさ”を強く持ちながら、バンドが自前のレーベルで新しい段階へ入ったことを示す作品でもある。1960年代のデッカ/ロンドン時代を経て、70年代最初の一枚として登場したこのアルバムは、ブルース・ロックとクラシック・ロックの要素を軸に、バンドの演奏と楽曲の輪郭がよりはっきり見える内容になっている。

録音は1969年から1970年にかけて進められ、発売は1971年4月23日。オリジナルUK盤はRolling Stones Recordsからの初期リリースで、バンド自身のレーベルで世に出た最初のLPとしても重要な位置にある。しかも本作は、ブライアン・ジョーンズ脱退後、そして彼の死後に作られた最初のスタジオ・アルバムでもある。ミック・テイラーが本格的に参加し、ギターの役割が整理されたことで、サウンドの重心が少し変わっているのが分かる。

作品全体の印象

『Sticky Fingers』は、曲ごとの温度差がはっきりしているアルバムである。ルーズな空気を持つ曲もあれば、リズムが前に出る曲、歌の言葉運びが主役になる曲もある。演奏は決して整然としすぎず、しかし崩れきらない。そのバランスがこの時期のストーンズらしい。ミック・ジャガーの歌は、声の押し出しだけでなく、語尾の処理やフレーズの置き方で曲の印象を作っている。キース・リチャーズのギターは、リフで引っ張る場面と、伴奏の隙間を埋める場面の切り替えが明確だ。

同時代の英国ロックと比べると、Led Zeppelinのような大仰な展開よりも、もっと地に足のついたグルーヴが中心にある。The Whoのような切迫感とも少し違い、演奏の“間”で聴かせる場面が多い。ブルースを下敷きにしながら、ソウルやカントリーの気配も自然に入り込むあたりは、この時期のRolling Stonesならではの手つきだと思う。

「Brown Sugar」— 冒頭からアルバムの骨格を示す代表曲

オープニングの「Brown Sugar」は、このアルバムを代表する曲としてまず触れておきたい。ギターのリフが始まった瞬間に曲の方向が決まり、そこへドラムとベースが素直に乗っていく。派手な装飾は少ないが、最初の数小節で引き込む力が強い。ミック・ジャガーの歌い回しも、言葉を畳みかける部分と、間を置いて受ける部分の切り替えがはっきりしている。

この曲は、アルバム全体のテンポ感や演奏の設計を早い段階で見せる役割を持っている。ロックの勢いを前面に出しつつ、リズムの粘りで聴かせる作りで、70年代のストーンズを語るうえで外しにくい一曲だろう。ライブでも重要な位置を占めてきた楽曲として知られているのも納得できる。

「Wild Horses」— アルバムの中で輪郭が変わる一曲

「Wild Horses」は、アルバムの中でも空気が少し変わる楽曲である。アコースティックな響きが前に出て、演奏の密度は上がりすぎない。メロディを追うだけでも曲の流れが見えやすく、ミック・ジャガーのボーカルも、力で押すというより、言葉の置き方で感情を伝える方向に寄っている。

『Sticky Fingers』の中でこの曲が置かれている位置は大きい。強いリフで押す曲が続くなかで、ここでは余白のある進行が耳に残る。ストーンズが単に荒いロック・バンドではなく、バラードを含めた曲作りの幅を持っていたことが見えやすいトラックだと思う。

「Can’t You Hear Me Knocking」— 演奏の伸びで聴かせる後半

「Can’t You Hear Me Knocking」は、前半のロック・ナンバーとしての勢いに加えて、後半で展開が変わる構成が印象に残る。リフ主体で進む前半だけでも十分に強いが、曲が進むにつれて演奏の余地が広がり、バンドの呼吸が見えてくる。ミック・テイラーのギターが存在感を示す場面としても挙げやすい。

この曲では、ストーンズの演奏が“きっちり歌を支える”だけに収まらず、曲の後半で流れを作る方向へ動く。アルバム全体の中でも、ロックのフォーマットを保ちながら、演奏の展開で聴かせるタイプの代表例だろう。

「Sister Morphine」— 作品の陰影を作る存在

「Sister Morphine」は、アルバムの中で特に重い空気を持つ曲である。歌詞の内容も含め、他の楽曲とは違う温度がある。演奏は派手ではないが、音数の少なさがかえって言葉の重みを残す。『Sticky Fingers』が単にヒット曲を並べた作品ではなく、暗い側面も含めて構成されていることが分かる一曲だ。

この曲があることで、アルバムは「Brown Sugar」や「Bitch」のような推進力だけで終わらない。ブルース由来の感覚を土台にしながら、人物描写や場面描写の方向へも踏み込んでいる印象がある。

ジャケットと初期UK盤の仕様

『Sticky Fingers』は、Andy Warholによるジャケットでもよく知られている。ジーンズを模したデザインに、実際に開閉できるメタル製ジッパーが付いている仕様で、内側には綿のブリーフを思わせるイメージが現れる。レコードの外装そのものが作品の一部になっている例として、70年代ロックのパッケージ表現を語るうえで外しにくい。

今回のUK盤は1971年リリースのオリジナル期に属するもので、ラベル表記の違いが知られている。付属インサートも含め、初期プレスならではの要素がある。なお、レーベルはRolling Stones Recordsで、本作がその第一歩にあたる。バンド自身の管理下で作品を出す流れがここから本格化した、という位置づけが見えてくる。

まとめ

『Sticky Fingers』は、Rolling Stonesのディスコグラフィーの中でも、70年代の出発点として押さえやすいアルバムである。ブライアン・ジョーンズ時代の終わりを経て、ミック・テイラー加入後のバンドが、より整理された演奏と鋭い楽曲で前へ進んだ時期の記録でもある。ヒット曲の強さ、バラードの存在感、演奏の粘り、その全部が同じ一枚の中に収まっている。

派手な一発で終わらず、曲順を通して聴くとバンドの輪郭が少しずつ見えてくるタイプの作品だと思う。1971年のロックがどこへ向かっていたか、その中でRolling Stonesが何を持っていたかを確認しやすい一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Brown Sugar 3:50
  2. A2 Sway 3:45
  3. A3 Wild Horses 5:41
  4. A4 Can't You Hear Me Knocking 7:17
  5. A5 You Gotta Move 2:32
  6. B1 Bitch 3:42
  7. B2 I Got The Blues 4:00
  8. B3 Sister Morphine 5:34
  9. B4 Dead Flowers 4:05
  10. B5 Moonlight Mile 5:56

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